コラム

 公開日: 2012-11-10  最終更新日: 2014-06-04

あの世から申し込まれた塔婆供養

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 ご主人を亡くされているAさんから電話がありました。
 ご供養の申し込みです。
 Aさんのご一族はいろいろな形で当山とご縁を結ばれているので、ご主人ではなく、共同墓で眠っているお父さんの塔婆を書くように頼まれても不思議とは思いませんでした。
 しかし、ご主人の塔婆は申し込まないのが少々、腑に落ちませんでした。
 いつもなら、念のため確認するところですが、その時はなぜか、聴いたとおりにメモしただけで受付を終えました。

 さて、当日、塔婆を立てて修法を始める段になり、皆さん小声で何かやりとりを始めました。
 どうしたのか訊ねたところ、やはり、喪主の義父ではなく夫の塔婆を欲しかったと言われます。
 義父の供養ではなく、多少早くはあるが、夫の年忌供養をして欲しいのです。
 とは言え、次の予定が待っており、もう、書いている余裕はありません。
「申しわけありませんが、これから書く時間がないので、今日のところは、ご主人の塔婆なしでご主人とお祖父さんのご供養を行い、後日、あらためて修法した塔婆をお送りしましょう」
 異議なしで二人分の供養法を行い、それぞれのご説明をしました。

 最前列の喪主とそのご長男がまた、何か相談しておられます。
 そして喪主から意外なお話を聞かされました。
「ご住職。
 今、長男から言われましたが、もう、お塔婆は要りません。
 私はあくまでも主人の年忌供養を申し込んだつもりでした。
 それなのに、義父の名前がご住職の耳へ届いたのは、主人の意志がはたらいたのだと思います。
 主人は、『自分は皆に手を合わせてもらうだけで充分だから、ほとんど供養してもらえない父へ塔婆だけでも供えてやって欲しい』と思ったのでしょう。
 こみ入った事情のある人生を送った義父でしたが、とても親思いの主人は、自分が車椅子を使うようになってからも父親を見舞い、最後まで見届けました。
 今となれば、義父のところを訪れるのは、私たち以外、ほとんどないと思います。
 今回のご供養は、ちょうど何回忌に当たるといったものではありませんでしたが、夫と一緒に供養してもらい、親子でとても喜んでいるはずです。
 そもそも夫は、自分のことよりも誰か他の人のことを優先する人でした。
 長男も、私も、それはよく知っています。
 だから、夫の意志をくんで、義父へのお塔婆一枚で終わりにしたいと思います。
 どうでしょうか?」

 わかりました、としか言えませんでした。
 塔婆一枚をめぐってこうしたまごころの世界が顕れるとは……。
 死してなお、親孝行であり続ける御霊の思い。
 亡きご主人の親孝行ぶりと思いやりに溢れたお人柄がご家族の心へはっきりと刻み込まれており、何年経とうと、その意志を感得できる。
 そして、それがこうして通じ合えるとは……。

 ご供養のおりには、こうした〈まごころ体験〉がしばしば起こります。
 私たちは、人間の歴史が始まって以来、死へのかかわりを通じて深いレベルのまことを確認し、心を磨いてきたはずです。
 喪と供養はゆめゆめ、軽んじられません。
 死者を軽んじるのは、生者が心を荒(スサ)ませて賤しき者となり果てる道です。
 日々、こうした現実に向き合っていると、日本の社会がどんどん荒む一方で、救いがまだ、残っていることを確信させられます。
 襟を正してなすべきことをなしたいものです。
 子々孫々、そして日本のために。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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