コラム

 公開日: 2012-11-15  最終更新日: 2014-06-04

寺院はいかにあるべきか?(その9) ─み仏の智慧を主とし、自分の知恵を従者とする(その1)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈愛敬寺の本尊不動明王〉

 寺院と仏教徒はいかにあるべきか?
 それを問う第九回目です。

◎戒めの面

3 み仏の智慧を主とし、自分の知恵を従者とする

 私たちは煩悩(ボンノウ)を離れた智慧がはたらきにくく、どうしてもぶつかり傷つけ合うからこそ、至心にみ仏へおすがりするのではなかったでしょうか。

 お釈迦様は説かれました。

「我が身を慎み、自分の心を信じてはならない。
 心は結局信じられるものではない。
 我が身を慎み、心を情欲の対象となるものと接してはならない。
 対象によって動かされた情欲が災いを生ずるからだ。
 アラカンの悟りを得て初めて、自分の心は信じられるものとなる」

 お大師様も説かれました。

「煩悩を抱えた私たちは愚かであり、自分で覚る智慧を持ってはいない。
 だから、如来はご加護のお力を下さり、私たちのおもむくべき先を示してくださる。
 おもむくべき所の根本は優れた教えによらねば示されない」

 私たちはなかなか自分への執着から離れにくく、自己中心になり、互いが自分第一だから必ずぶつかります。

 日本の政治状況は酷くなる一方ですが、新聞記者Aさんは述懐されました。
「私はずっと政治家と接してきましたが、感服したのは故伊東正義と故大平正芳でした。
 二人とも私心、我(ガ)がなかったからです。
 心からお国のためと思い、自分の出世や手柄などを望んではいませんでした。
 今はもう、政界にああいう人はいません」
 また、同じく記者Bさんも言われます。
「とにかく目立ちたがる。
 先輩を平気で年寄り扱いする。
 目立たない〈ぞうきんがけ〉はしません。
 一見優秀そうな若手政治家に共通の問題です」
 そう言えば、私たちはいつ頃から「自分が一番」などと公言してはばからない人物を怪しまなくなってきたのでしょうか?

 脇道へそれてしまいました。
 仏教徒がみ仏の智慧におすがりするとは、経典に書かれている文章を鵜呑みにすることではありません。
 普段は、ものの見方・考え方の道筋を学び、道理に反する身勝手な理屈に陥らないよう気をつけましょう。
 切羽詰まった時は、いったん思考の堂々巡りを止め、経典の文章に目を通したり、あるいは読み慣れた経典を読誦したりしてみましょう。

 出家してまもなく、師から指示されました。

「困ったら世間へ逃げてはならない。
 経典へ飛び込め」

 まじめにやっていてもなお、追いつめられる場合があります。
 その時、何とか〈うまくやろう〉と、いわゆる方便を探したりします。
 師はこの方法を禁じました。
 それは〈我〉のレベルでしかないからです。
 切羽詰まった時は危機である一方、一段レベルアップするチャンスでもあります。
 古人は「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」と言いました。
 溺れかけた時、無我夢中でもがくよりも、いのちを捨てたつもりで流れに身を任せればいつか浅瀬に流されもします。
 捨て身になれば窮地を脱することができるかも知れません。
 ただし、むやみといのちを粗末にするだけでは無謀でしかありません。
 もしも火事になったなら、普通は風下へ逃げますが、状況によっては火をくぐり抜けて風上へ向かった方が助かる場合もあります。
 ここで、火の怖さに追い立てられるだけでなく、冷静沈着な判断と実行する勇気をもたらすものが「経典へ飛び込む」ことであり、「身を捨てる」ことでもあります。

 タクシードライバーAさんは敬虔なお不動様の信者です。
 ある時、タクシー強盗に遭い、刃物を首筋へ突きつけられました。
 Aさんは殺されると思いましたが、いつの間にか真言を唱えていました。
 そして、頭の上に青空が広がったような気持になり、落ちついて強盗を諭しました。
 強盗は神妙になり、そのまま交番へ同行したそうです。

 どんなに勉強したつもりでも、どんなに努力をしたつもりでも、決して「自分が一番」などと思い上がらず、常にみ仏のおみ足を頭上へ戴くような気持で謙虚に学び、謙虚に生きたいものです。
 そうすればこそ、ピンチはチャンスになり真のレベルアップがもたらされます。
 



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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