コラム

 公開日: 2012-11-21  最終更新日: 2014-06-04

派遣教師の問題 ─広がる“派遣教師” 教育現場で何が─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈風雪に耐えしもの〉

 11月20日、NHKテレビは「クローズアップ現代」において「広がる“派遣教師” 教育現場で何が」を放映した。
 観た私はとても想像しきれない事実を突きつけられて放心した。
 そして、たった今、成長しつつある子供たちを哀れと思い、人生を〈貼り合わせ〉でしか生きられない若い人々を哀れと思った。
 それから、来たるべき未来が、伸び伸びと心を錬磨できぬままに大人になった人々で埋め尽くされる恐ろしさに身震いした。
「このまま行けば、不満と不信を心の根として生きた人々は、それを破壊してくれそうなものに熱狂するのではないか?
 中国がそうなりつつあるように。
 もしかすると、それは、革命や戦争までも行き着きかねないのではないか。
 国民が、自分たちの心を荒廃させた相手が政治権力であることに照準を定めれば革命になる。
 権力者が、国民の間に広がった破壊欲を外へ向けさせれば戦争になる」
 最後に、こうまで人間を道具扱いする非情な社会になった理由を考え、小泉構造改革の総括をあいまいにしたままここまで来た私たちの怠慢を思い、眠れぬ一夜を過ごした。

 派遣教師というありようが持つ最大の問題は、「生徒も先生も共に成長する」という成長と教育の真髄を破壊することである。
 思い起こしてみよう。
 いかなる人物が記憶に残る先生か?
 自分はその先生から何を学んだのか?

 心から生徒一人一人へ目をかけてくださる先生がより記憶に残り、同期会で招きたいのはそうした方である。
 先生から最も学んだのは先生たる先生の人間性であり、その温かさと輝きはいつになっても自分より前方に、そして上方にある。

 生徒がこうして育つところに学校の意義があるのではないか?

 また、先生にとって学校は何であろうか?
 幾人もの先生方が充分に育てていただいた生徒たる私へ異口同音に語ってくださった共通の思いがある。

「私は生徒たちに育てられました。
 できのよい生徒もできの悪い生徒も私を育ててくれました」

 明らかに、あまりに明らかに、先生も又、学校で成長されるのである。
 それが可能なのは、暑い日も寒い日も、勉強でも部活でも、あるいは公的にも私的にも、〈共に過ごし人間として接する時間が確保されている〉ことが絶対条件である。
 つまり、学校は、家庭と並んで、異なった世代の人間が信頼を基礎にして共に過ごしつつ共に人間性を磨き、深め、高め合うかけがえのない場なのである。
 さらに言えば、終身雇用という日本的会社組織のありようもまた、これに準じたものだった。
 そこで共鳴し合い、ぶつかり合いながら人は成長した。

 日本では家族がどんどんバラバラになり、子供たちの人間的成長の根が危うくなっている。
 社会はもはや、人間を使う一部のエリートと、必要な役割を上手に果たす道具として用いられる人々に二分され、人々が人格を陶冶(トウヤ…練り、磨き、成長させること)しつつ安定して生きられる基盤がどんどん失われつつある。
 それに加えて、学校からも人格形成の機会が奪われてしまったなら、いったい、人間はどうなるのか、社会はどうなるのか。

 決して忘れないであろう画面と音声がある。

 画面とはある高校の時間割である。
 そのコマ割は、専任教師、非常勤教師、そして派遣教師によってさまざまに色分けされている。
〝このモザイクは、教師それぞれの人生も生徒の心もモザイクになっていることを表しているのではないか……〟
 慄然とし、いつでもクビにされる立場でモザイクの人生をつないで生きねばならない方々の心を想い、私を育ててくださった先生方のお顔を思い出し、心臓の鼓動は変調を来した。

 音声とは先生の証言である。
 この学校では約6割が派遣教師で埋められている。
 それだけでも驚嘆させられたが、さらに驚くべきは、「特進」という進学をめざす優秀な生徒を集めたコースにはほとんど派遣教師がいないことである。
 つまり、学校の経営者は、受験生を集めるための必須要件である進学率を高めるために優秀な生徒を集めた特進コースには信頼できる先生方を集中的に投入し、一般コースに対してはコスト第一でのぞみ、非常勤教師や派遣教師で必要科目を埋めているのだ。
 顔を出さずに声だけで番組に登場した先生は言う。
「どうせ俺は特進じゃないからと投げやりに言う生徒もいます」

 教育は、学校が一方的に教え育てるだけではない。
 生徒も先生も、教えられ、育てられもする人間がより人間たり得るためのかけがえのない場である。
 先生からも生徒からも年月をかけて共に成長する機会を奪うことに、教育を目的とする学校におけるいかなる必要性があるのか?
 これほど重大な犠牲をはらいつつ、一体、誰のために、何のために役立とうとしてこの制度は作られたのか?
 学校までも(医療機関や福祉機関までも)儲けの場として恥じないほど私たちの文化は落ちぶれ果てたのか?

 現代日本は、人間がはてしなく〈未熟〉の方向へ向かっていると思われてならない。
 その根本的理由の一つは、皆が〈今〉さえよければよい、〈今〉すぐ自分に役立つことを第一にやろう、〈今〉すぐ自分だけが儲けたいと考え、時間をかけることの価値、時間をかけたものの価値、時間をかけねばならないものの価値を忘れたところにある。
 派遣教師の問題の根は、私たちに巣くったこの人生観と、人間を堂々と道具扱いした小泉構造改革にあると思う。
 さらに総括すれば、やはり、一人一人が自分の一生を創造して行く人生設計を成り立たせなくしてしまった社会のしくみにあるのだろう。
 この巨大な共業(グウゴウ)に立ち向かわねば、日本の未来は極めて危うい。
 それにはまず、自分にある業(ゴウ)を清めたい。
 〈今〉さえよければよい、〈今〉すぐ自分に役立つことを第一にやろう、〈今〉すぐ自分だけが儲けたいという業を。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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