コラム

 公開日: 2012-11-22  最終更新日: 2014-06-04

子や孫のためにふり返っておきたい先人の導き(その36) ─鳥の子育てに学ぶ─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈会津地鶏の写真をお借りして加工しました〉

ここでは、昭和6年に発行された小冊子を基にして子供たちの導き方を考えています。

36 「さ」 才智よりも真面目(マジメ)

 才智にすぐれた少年になるよりも、
 真面目な少年になろう。
 才智は頭にあり真面目は腹にある。
 頭よりも腹で成功する人間になろう。

 大人でも難しいありようが示されています。
 そもそも、腹のできた人物というのが、ほとんど見あたりません。

 思い出されるのは、子供の頃、近所にあった町医者の先生です。
 下半身に重心のある堂々とした体格で白衣をまとい、首から上は常に垂直で、低く響く声しか発しません。
 ほとんど笑わず、決して歯を見せませんが、いつも上瞼が少し降りているややギョロリとした目には、なぜかこちらが目線を離せなくなる磁力のようなものがありました。
 胸を患い、湿布薬でぐるぐる巻きにされている私を往診し終えると、やや表情を弛め「忠君、まっすぐ生きましょう」などとぶっきらぼうに言って去ります。
 生まれて初めて、超えがたい〈師〉のようなものを感じました。
 病院は、選挙が近くなると夜の出入りが多くなります。
 ある時、先生は共産党員であると父から聞かされ、小学一年生の私は何となく「やはり、異界の方なんだ」と思い尊敬を深めた記憶があります。
 今でも、お声もお顔も鮮明に思い出される先生は、まぎれもなく腹のできた方でした。

 もう一例、思い出すのは、作家故吉野せいが大正11年に書いた『春』です。
 何不自由ない網元の娘として生まれながら、開拓農民と結婚して阿武隈山麓の菊竹山へ入った吉野せいは、夫の死後に書き始めた作品をまとめ、75才にして『洟(ハナ)をたらした神』として発表し、一躍脚光を浴びるようになりました。
 そこに収録された『春』は、山に住む人間の生活と、周囲に広がり、移りゆく自然をありのままに述べています。
 最後に出てくるのが、姿が見えなくなっていた鶏一羽の帰還です。
 きっとイタチかキツネにやられたに違いないと思っていたのに、三週間後、11羽のひな鳥を連れて現れました。

「それにしてもこの姿のみすぼらしい衰えようは、赤いとさかは白っぽくざらざらと湿けたせんべいの切れはしみたいに垂れ、胸毛はぬけて桃色のぼつぼつの地肌が丸出しです。
 翼は灰を浴びたようで、五六本羽が抜け落ちそうに地辺(ジベタ)をひきずっています。
 尻尾も赤いお尻が見えるほどふらふらして、あのびっちりと引きしまった隙のない面影はどこにも残っていません。
 生命をつくりだした親どりの必死さが哀れになりました。」
「日に一回食をとるためと糞をするためにちょっと間巣をはなれるだけで昼も夜も抱きづめです。
 時には雨がびしょびしょ竹の屋根から降り注いだことも何回かあったにちがいありません。
 卵はただ抱いてあたためてさえいればいいものではなく、表面から全体に平均の温度を与えるために絶えず一つ一つを少しづつ回転させながら、全面に同じ熱を与えてゆかなければ見事な孵化は出来ないのです。
 一人の子を生むのさえ人間はおおぎょうにふるまいますが、一羽のこの地鶏(ジドリ)は何もかもひとりでかくれて、飢えも疲れも睡む気(ネムケ)も忘れて長い三週間の努力をこっそり行ったのです。
 自然といいきれば実もふたもありませんが、こんなふうに誰に気づかれなくともひっそりと、しかも見事ないのちを生み出しているようなことを、私たちも何かで仕遂(シト)げることが出来たなら、春は、いいえ人間の春はもっと楽しく美しい強いものでいっぱいに充たされていくような気がするのです。」

 小さな子供に「腹」を教えようとしても容易ではありません。
 一つには、誰か大人(タイジン…大人物)を感じさせる人間を引き合いに出すこと。
 もう一つは、人間であれ鳥であれ、こうした不屈の生きざまを教えるあたりから出発してはいかがでしょうか。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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