コラム

 公開日: 2012-11-27  最終更新日: 2014-06-04

飯を喰わせ救われる話

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 最近は、妻が私の作った朝飯を喰う。
 最も多いパターンは、残り物を温めたご飯に、目玉焼きとキャベツ、それに納豆と大根の味噌汁だ。
 卵以外は皆、信徒さんからご本尊様へいただいた貴重なお布施である。
 二足先に食べ終えた私が仕事をしている横から、妻がキャベツを噛む音が聞こえる。
 ──妻は喰い、今日も生きる。
 不意に、喰う者のいじらしさ、哀れさが迫ってきた。

 思えば、私は家族を養ってはきたが、心のどこかに、いつも、役割を果たしているという思いがあり、妻も子も親も、その〈相手〉だった。
 すべてが果たすべき責務の遂行なので、何を行っても「よしっ!」と小さく呟き、妻には「お父さんは何でも、よしっ、だねえ」と呆れられるのが常である。

 しかし、最近は、とまどう。
 拙いメニューにもかかわらず無心に喰っている妻との距離があまりにも近い。
 これまで、子供たちにすら感じていた薄膜がなくなっている。
 この薄膜は、自分の心中にある〈冷えた部分〉からきており、それは抜きがたい罪悪感の根源だ。
 いくら〈なすべきこと〉を行おうと、膜があれば、そこには必ず嘘があるに決まっている。

 ──これでも自分は人の親なのだろうか?
 ──これでも自分は人の子なのだろうか?
 ──これでも自分は人の夫なのだろうか?

 朝は喰う音を聴いたり聴けなかったり。
 私は三度の飯がきちんと喰えない日もあるが、昼と夜は極力、喰わせつつ、一緒に喰う。
 それにしても、喰っている〈生きもの〉がこんなにいじらしいのはなぜだろう?
 哀れなのはなぜだろう?
 脇で喰っている自分もいじらしく、哀れに思えるから不思議だ。
 これまでずっと私へ喰わせてきた妻もこうした感慨を持ったことがあるだろうか。
 一心同体と信じて疑わずにきた(もちろん妻は「お父さんが勝手にそう思っているだけよ」と否定するが)妻との間にあった薄膜が、〈生きもの〉と観てからなくなっているのも不思議だ。

 思えば、子供たち夫婦へ注意深く注がれている私の視線は、いつも、膜のあるなしを見極めようとしてきたようだ。

 66年、生きてようやく、小さな因縁解脱(インネンゲダツ)が一つ行われようとしているやに思える。
 解脱の因と縁は何か?
 喰わせられる妻が生きてあること、に尽きるのではないか。
 さんざん苦労をかけてきた妻に人生の終盤を迎えてからこんな形で救われるとは、「済まない」と言うしかない。

 だから、妻へ心中で行う合掌は、み仏へ手を合わせるのとまったく変わらない。



 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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