コラム

 公開日: 2012-12-05  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第118回)人知れず開いていた花─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






○Aさんのケース

 学校でいじめに遭ったAさんは部屋に閉じこもり、家族との会話も切れたままだった。
 成績は優秀、おとなしい性格で先生に叱られたこともないAさんは、学校へも家族へも、いじめをひた隠しにしていた。
 それが、ある日、突然、不登校になり、一家の暮らしは暗転した。
 あまりにも休みの多い担任の先生は、「私が校門で待っていてあげるから、必ず学校へ来なさい」程度の対応で終わり。
 いじめた犯人は厳しい処置を受けず、校長も教頭も教育委員会の顔色を気にするのみで、被害者であるAさんの立場に立つことはなかった。

 しかし、Aさんは大震災によって家族といる安心感に気づき、自分から申し出て給水車を待つ行列に並んだ。
 差し入れられたお菓子を老いた父親へ勧めるなどは、家族にとって久方ぶりに見る懐かしい光景だった。
 人前へ出るのが苦手で、かわいがってくれた祖母の死後、葬儀は家で過ごしたが、100か日忌には、誰も来ないだろうからと一人でお墓参りにでかけたりもした。
 Aさんはもう、部屋に閉じこもりはしない。
 家にいて、家族には優しいが、依然として社会へ飛び込んでは行けない。
 家族は肩を寄せ合いつつ、年かさの順に、自分亡き後のAさんの暮らしを心配している。
 きっと大丈夫だろうという小さな希望の灯を抱きつつ……。

○Bさんのケース

 Aさんは人間関係をうまくつくられず、学校でもアルバイト先でも、自分から手を上げて何かを行うことはほとんどなく、目立たない人だった。
 濃密な人間関係がないことをあまり気にしてもいなかったが、結婚はできそうにないと思えば、やはり、寂しかった。
 しかし、大震災で家族を失い、家を失い、泣いている被災者の映像に心が震えた。
 他人の喜びを心底から喜べないでいる自分をよく知っていただけに、見ず知らずの他人の悲しみ、辛さがこれほど自分の心に突き刺さってくるとは、あまりに意外だった。
 もっと意外だったのは、アルバイトをやめ、貯金を持って被災地へでかけたことである。

 家に入った泥を除けられず、着ぶくれて日向にじっとしているしかないお婆ちゃんから涙ながらに合掌された時は、自分も涙が出そうになった。
 あまり使ったことのない身体は、たった一日でクタクタになった。
 でも、お互いに多くを語らないボランティア仲間といる空間は、なぜか心地好かった。
 率先して何かを提案したりはできないが、リーダーの指示にはとてもすなおに従えた。
 メンバーが入れ替わるにもかかわらず、支援グループの輪には一体感を味わえた。

 Bさんは半年足らずで元の生活に戻った。
「被災された方々も、私も、〈慣れて〉しまいました。
 この先にかかわるのはもう、無力な自分の役割ではないと思ったからです」
 Bさんは、被災地での日々によって自分がどう変わったかはよくわからないと言う。
 しかし、自分にある可能性に気づいただけでも、将来について少々、気楽になったそうである。
 
 Aさんのご家族も、Bさんも、異口同音に「震災で救われたとは言えません」と小声になる。
 しかし、自然による膨大な破壊の陰で、小さな花が開いていた真実だけは記しておきたい。



 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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