コラム

 公開日: 2012-12-13  最終更新日: 2014-06-04

子や孫のためにふり返っておきたい先人の導き(その40) ─石へ穴をあける水滴のように─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈黙々と水を運んだ少年の活躍〉



 ここでは、昭和6年に発行された小冊子を基にして子供たちの導き方を考えています。

40 「み」 水の滴が石を凹ます

一滴づつの水でも石に穴をあける、長い間の力である。
力の不足を思ったら、水の滴を思い出せ。
飽きるな怠るな繰り返せ!

 水の滴は掌に受けることもできるほど柔らかく小さいけれど、それが何度も何度も滴り落ちているうちに、いつかは硬い石にすら穴を開けてしまうという事実は、私たちへ継続の力を教えてくれます。
 お釈迦様の解かれた言葉に最も近いとされている『法句経(ホックキョウ)』にもはっきり書かれています。

「小悪(ショウアク)を軽んじ、もって殃(オウ…災い)無しと為すなかれ
 水滴は微(ミ)なりといえども、漸(ヨウヤ)く大器に盈(ミ…満)つ
 およそ罪の充満するは、小積より成る」

 小さな悪事をはたらき、別に誰からもとがめを受けなかった、あるいは何の罰も受けなかったからといって、たかをくくっていいれば、いつのまにか悪業(アクゴウ)が積もり積もって自分へ災いを招きます。
 それは、原因があれば必ず結果が出るという宇宙を動かしている因果応報(インガオウホウ)の原理から誰もが逃れられないからです。
 私たちの考えたことも、言ったことも、行ったことも、何一つ決して〈それっきり〉となりはせず、後へ何らかの影響をもたらす業(ゴウ)という消すに消せない歴史となって積もり重なり残るのです。

 12月8日、成蹊大学3年生草山秀彦(22才)容疑者は、所属している空手部で指導を受けている最中、師の高木弘(77才)氏から張り手で注意されたことにカッとなり、あろうことか師へ回し蹴りを見舞い、死亡させました。
 何があったか事情はわかりませんが、主将を務めているほどの腕前でありながら、武道の精神がまったくできていなかったという恐ろしい事実が明らかになりました。
 常々、OBの指導法へ不満を抱いたり、師を軽蔑したり、あるいは慢心したりといった悪しき水滴が滴り続けていたのではないでしょうか。
 それらと正面から向き合い、きちんと解決しておかなかったからこそ、最悪の事態が起こってしまったのでしょう。
 まるで突発的な驚くべき事故と見えますが、真の原因は積み重ねられた小さな悪業であり、師からの張り手が決定的な縁となって大罪へと結実してしまったのです。

『法句経(ホックキョウ)』には、こうした教えが続いています。

「小善(ショウゼン)を軽んじ、もって福無しと為すなかれ
 水滴は微(ミ)なりといえども、漸(ヨウヤ)く大器に盈(ミ…満)つ
 およそ福の充満するは、繊々(センセン…こまごましたもの)より積む」

 善行を続け、まっとうに生きていてもなかなか報われないと感じておられる方はきっと、少なくないことでしょう。
 しかし、み仏は約束しておられます。
 小さな善行に対して特段、嬉しい結果がでないからといって善行を軽んじたり、続けることを諦めたりしてはなりません。
 小さな滴でも継続してしたたり落ちていれば、いつかは大きな器すら満たし、あふれ出す時を迎えます。
 み仏からの約束として福徳は確かに訪れるのです。

 宮城県相撲連盟副理事長伊藤裕之氏(38才)は、12月12日付河北新報の「持論時論」で述べておられます。

「武道を通して、心技体を一体として鍛え、人格の形成、さらに道徳心を磨き、礼節を尊重することで、われわれが忘れかけている日本の心、すなわち思いやりの気持ちを養う。
 いじめ問題にも貢献すると思う。
 社会のさまざまな問題を直接解決することはできないかもしれないが、武道を学んだ子供たちが社会の平和と繁栄に寄与し、よりよい社会の形成に活躍してくれるものと信じてやまない。」

 氏が、日本の心は思いやりにあるとされている点に注目せねばなりません。
 相手を〈そちら側〉へ置かず、相手に起っていることは自分に起こっていることであると心から思える想像力がなければ、真の思いやりは起こりません。
 そして、そこからしか、相手の哀しみ、淋しさ、苦しさ、辛さを見捨てておけない人間は生まれません。

 誰よりも「自分の心」をこそ相手にし、たとえ小さなことでも悪事は行わず、たとえ小さなことでも善きことは行い、目に見える結果がすぐに出なくても、因果応報の真理を信じて精進する尊さを教えたいものです。
 その点で、伊藤裕之氏が指摘するとおり、日本古来の武道は、継続性のない稽古はありえないという面でも大きな可能性を秘めています。
 子供たちの心に、たゆまず、怠らず、火がつけられたなら淡々と自分を燃やし続け、灰になった後も佳い香りを残すお線香の心が育つよう願ってやみません。



 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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