コラム

 公開日: 2012-12-17  最終更新日: 2014-06-04

子供に禁止や制限を課す智慧と勇気 ─いじめや低学力を根本から解決する方法─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈ペットの共同墓『一心』〉

 12月16日付の河北新報は高校教諭平居高志氏(50才)の「『禁止』や『制限』時に必要」を掲載しました。

「いじめや低学力など、今の学校に山積している問題に、現場で対応している人間の一人として、徒労感を感じるのはなぜだろう?」

 理由は、原因が見えていながら「末端処理に追われている」からである、と明解です。
 それはまるで、火事が起こる原因がわかっていながら放置し、消火作業を延々と続けるようなものです。
 氏は原因を「子どもたちを取り巻く文化の問題」としました。

 典型的なものの一つが、子供たちに蔓延した携帯電話への異様な依存状況です。

「この状態の中で、勉強しろというのは無理がある。
 じっくり落ち着いて理解し、記憶し、考え、創意工夫するといった、人間の成長にとって大切な作業とは正反対のものばかりがそこにはある。」

 当山も、以前からくり返し訴えてきた問題が、教育の現場から具体的に指摘されています。
 氏は2点を挙げました。

・直接的コミュニケーションが衰退する

 第六感まではたらかせて相手の人格を把握し、社会にいる人間としての作法に則りながら自分の意志を示して、目の前の人間を相手にきちんとおちついた会話を行うことが困難になっています。
 メールに頼らなければ対話ができないとはすなわち、人間が機械に使われているということです。
 あたかも、聴覚機能に問題を抱えた方が補聴器を使うのと同じですが、補聴器は心ならずも用いるしかなくなるものであり、自分から補聴器に頼る生活をしたい方は誰一人おられないはずです。
 しかし、私たち大人は、明らかに対話能力を衰えさせると知っていながら、自主的にメールへ頼り、子供たちが同じ道を歩んでいても放置したままです。
 おかしな構図であると言うしかありません。

・高機能の機器により安易に強い刺激を与えられる

 暴力や性など、子供たちへ悪影響を及ぼすと考えられるほど刺激の強い画面やゲームがほとんど野放しに提供されており、情操教育が危機に瀕しています。
 また、相手を思いのままに攻撃する、勝ち負けを競う、白か黒か二者択一で進む、といった単純でマイペースな時間の流れに慣れてしまうと、複雑な人間関係にじっくりと解を求める姿勢は育ちません。
 刺激が欲しくなった時に何らかの理由で親や先生から止められれば、即座に邪魔ものと感じ、麻薬患者のような精神の荒廃が進みかねません。

 そして、氏は、子供たちの心と生活へ悪影響を与えない工夫はできるはずなのに、社会がそれを行わない理由を述べます。

「人が喜ぶものはいい物だという単純な発想がある上、利益が絡んでおり、社会全体としても、お金になるものに文句を言えない雰囲気が存在するからである。」

 単純に言えば、儲け第一の大人にとって子供たちは〈お客さん〉でしかないということです。
 お年寄りへ過剰な診療を行い大量の薬を与えて儲けようと毎日通院バスで送り迎えし、ジュースのサービスまで行って問題になった医療機関と似た構図ではありませんか。

「私たちは便利さと利益にばかり目を奪われた結果、より大きく構造的な不利益を生み出しているのではないか。」

 ここで言う「不利益」は、子供たちの健全な成長の阻害だけでなく、家庭や学校や社会の荒廃と混乱、そして、未来への不安など、ほぼ無限大の大きさを持っています。

 氏は幸せへと目を転換します。

「経済は大切だ。
 しかし、それだけが大切なのではない。
 大切なのは、お金ではなく幸せである。
 お金は、幸せを実現する手段として有効な場面でだけ価値を持つ。」

 私たちはいつしか、幸せはお金で買えると錯覚してしまったのではないでしょうか?
 あの大震災は、そこをも激しく衝きました。

「私たちは東日本大震災によって、人と人とのつながりや、平凡な日常生活のありがたさ、そしてそれらこそが本質的な幸せであるということを学んだはずである。」

 ──私たちは確かに、学んだはずではなかったか。
 それにしては……。

 最後に、氏は、子供たちに起こる問題の解決法だけでなく、問題を起こさせない方法を「もっと真剣に考えたい」とし、提案します。

「子どもたちを取り巻く文化環境を見直し、地道で基本的な作業に忍耐を持って取り組ませるべきである。
 麻薬と同じで、人間を内側から駄目にするものに対しては『自由』を言い訳にせず、禁止や制限といった措置を取ることが必要だ。」

 これが可能であるためには、大人たちが自らの欲望を省みて、自他のためにならない煩悩(ボンノウ)の範疇にあるものは勇気を持って「禁止や制限」せねばなりません。
 産業界が儲けより子供たちの健全成長を優先するのはもちろん、大人たちが悪しき習慣を止めるなど、自らへ厳しくしてこそ、使命感と自信と勇気とをもって子供たちへの「禁止や制限」を実行できることでしょう。
 その時、賢者、聖者の残された宗教は明らかな指針となり、大きな力となるはずです。
 特に仏教は「自らを正しく律する」すなわち、正しい「禁止や制限」によって、人間が人間たるゆえんであるところの霊性(仏性)を大いに発揮しようとするものです。
 共に学び、身を律する大人として子供たちを救いたいものです。

 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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