コラム

 公開日: 2012-12-19  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第121回)仙石病院理事長神部廣一氏がふり返るあの時(

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈「東日本大震災の検証」からお借りして加工しました〉

 仙石病院理事長神部廣一氏が、建設新聞社発行の「東日本大震災の検証」へ「大震災と医療~民間病院の経験を通して~」を書いている。

2 亜急性期

「2週間目から一日一回は弁当が配給になった。
 配給はすべて自衛隊が運搬してくれた。
 食事のランクが上がるたびに歓声をあげたものである。」

 仙石病院では、「入院患者の給食は職員の家庭の米を持ち寄ってカロリーを主体につないでいた」という。

「一週間目からプロパンガスが復旧し、給食業者による食材の供給が再開したので、ほぼ通常給食に戻すことができた。」

 医師のほぼ全員とスタッフの相当数が3週間ほど病院へ泊まり込んだが、患者以外の食料は支援物資だった。
 最初はおにぎりや菓子パン、一週間後あたりからは厨房がときおり「芋だけのシチューやみそ汁」を作り、そして冒頭の弁当へと結びつく。
 だから、「歓声をあげた」のは病院で砕身している人々だ。
 職務をまっとうしようと体力と気力と智力の限りをふりしぼり、ようやく食事の時間が訪れ、食べ物を見て「うわあ!」と思わず声を出す場面を想像すると、またもや涙をもよおしてしまう。
 どんなにかありがたく、どんなにか嬉しく、どんなにかおいしかったことだろう。
 戦場で戦う人々といえども、生きものである。
 腹の底から湧いてくる無垢な思い、そしてどの笑顔からも放射したであろう光を想うと、切なくさえなってくる。

「メデイア取材にも考えさせられた。
 急性期に記者が取材に来た例は一つもなかった。
 この結果、信じられないことに当院の開院状況は5月初めまで報じられず、5月16日の固定電話復旧までの約2カ月間、患者にとって当院が受診可能かどうか知る手段はなかったのである。
 それまで何の接触もなかったのに、電話が通じるようになると、電話取材が頻繁になった。
『足で取材する』という記者魂は現代のニュースメデイアでは死語になったのだろうか。
 そういえば、福島県の被災地にも記者は寄り付かず、外注のカメラマンなどに取材させていると聞いたこともあるが、さもありなんと思われる。
 メデイアには情報発信者として大いに反省してもらいたい。」

 3月17日、仙石病院に電気が復旧した様子はNHKテレビでチラリと流れ、私は「アッ、やっている」と機能していることそのものを喜んだ。
 しかし、確かにそれだけだった。
 それにしても、現場確認の「外注」とは──。

3 慢性期

「被害の大きかった東北地方沿岸地域(内陸過疎地も同じだが)は老人人口が多く、小泉改革以来、医療費抑制を目的に長期入院の抑制、およびそれとセットになった老人の在宅医療へのシフトが政策として進行しており、慢性期病棟の極端な減少が平時から急性期病院の受け皿不足という形で一般病院の効率化を著しく妨げていた。
 これらの田舎の悲鳴には目もくれず、入院期間のさらなる減少を進める政策が基幹病院の効率化という名目のもとにさらに進行しつつあった。」

「震災で自宅の居住が不可能になった結果、要介護者の健康が損なわれるのは当然の帰結で、もともと少なかったこの地域の施設に、新たに病人として発生してきた老人、弱者を受け入れる余裕は全くなかったのである。」

「田舎の悲鳴」は忘れられない。
 都会で旗を振る人々の耳へはほとんど届いていないのだろうか。

「このような視点から今後の医療政策を全体として眺めると、喪失した病院機能の復活問題は一部にすぎない。
今後増大する老人患者、弱者を社会としてどう扱うかという、これまで真剣に向き合ってこなかった問題が一層鮮明に突き付けられている。」

 小泉政権時代から続く、老人を見捨て、弱者を軽視するかのような国策の実態には驚く。
 氏は具体的な要望事項などを述べ、最後にはこう提案している。

「公的大病院は多数あるが、公的老人介護施設は一つもない。
 例えば、公立の大規模介護施設を建設する等のもっと抜本的な解決策が必要であろう。」

 指摘されてみれば、「本当だ、膨大な要介護人口がある国にしては、なぜ、公的大規模介護施設がないのだろう?」と考え込んでしまう。
 民間でできることは民間で行うという方向性に理由があることは理解できる。
 しかし、それを極端に推し進めてきた結果がこうである。
 弱者に寄り添いながら民間医療機関を率いてきた氏の目には、国がどんどん手を引いてきたことによる社会的不公正がよく見えているのではなかろうか。
 経営者へ自分で儲けて運営しなさいと言い、救いを求める人々を放置すれば、お金がなくて見捨てられる人々が増加するのは当然である。
 教育や医療や福祉までも〈商売〉の範疇に入れてしまい〈弱肉強食の自由競争〉を行わせる思想そのものが問題とされねばならない。

4 老人施設の被害状況

 氏は老健施設の被害状況を図示している。
 岩手、宮城、福島三県で52施設が全半壊し、平成23年6月13日現在で死者・行方不明者は以下のとおりである。
・入所者…485人
・職員……173人
 特筆すべきは、養護老人ホームにおける入所者の犠牲が50人であるのに対して、職員の犠牲が24人にものぼっていることである。

「これら職員の犠牲者の大多数は入所者の避難活動中の殉職と考えられる」

 頭を垂れ、合掌するしかない。

 三県で殉職した消防団員と警察官へは手厚く顕彰や補償が行われており、氏はそれに「異論はない」としつつ、介護職員の存在を忘れてはいないかと書く。

「社会のために重要な職務に、昼夜分かたず献身し、災害時には老人救助に挺身・殉職した介護職員が公に顕彰されることはなく、メデイアによる国民世論形成の働きかけもなかった。
 特別の補償もなく、近しい人のみに細々と語り継がれるだけの彼ら、彼女らの崇高な志と、無念に思いを致すと、明治時代から今に至るわが国の非公務員への軽視、差別に嘆息せざるを得ない。」

 志を共有し現場で汗を流す氏の憤激が胸に迫る。

 巨額の施策について氏は見透し、警鐘を鳴らして筆を置く。

「被災地に投資が直接還元される計画は少なく、被災地から離れた企業、大学等に利するものが目につく。
 以前からの方針であり、なかなか進まなかった中核病院一極集中、一般病院の中核病院傘下施設的位置づけ化、慢性期病棟のさらなる減少、住民の意向を無視した在宅医療への誘導などの医療環境再構築を、この期に乗じて強引に進めようとの流れも垣間見える。」

「被災地への公的資金の投下はまず被災地の住民、民間機関に資することを大原則にすべきと考えるが、そのような視点は被災地から遠い施策立案者には欠けているように思われて残念である。」

「行政は、一段落したところで、未曾有の災害から得られた各方面の経験に学び、施策を見直し、修正する勇気をもつことも重要であろう。」

 弱者の希望や現場の志が反映される理想の政治は、それらを自分自身の希望や志とする政治家によってしかもたらされはしない。
 私たちは今回の選挙で、はたして、そうした〈人物〉を確かに選び得ただろうか?



 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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