コラム

 公開日: 2013-01-02  最終更新日: 2014-06-04

子や孫のためにふり返っておきたい先人の導き(その41) ─明らかなことと明らかでないことを区別し

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈皆さんのお心にお支えいただきながら、新たな年の修法が始まっています〉

 この欄では、昭和6年に発行された小冊子を基にして子供たちの導き方を考えています。

40 「し」 正直にまさる武器なし

「奮闘の武器は何だ。
 第一の武器は正直だ。
 元気、快活、不屈、熱心、みんな、正直から生まれる。
 最後の勝利も正直の者が握る。
 正直なれ。」

 十善戒を人の道の根本とした慈雲尊者は、第4番目の不妄語戒を、こう述べています。
「正直、不妄語戒」
 不妄語つまり、妄語を用いるべからずというだけでなく、妄語を脱した〈正直〉をめざすことにより、妄語を使わなくなる、あるいは妄語を口に出来なくなる境地をめざす指導を行いました。
 まさに、お釈迦様の人間づくりに通底した最高の導きです。
 では、正直とは何か?妄語とは何か?

 最もわかりやすいのが、見聞きした、あるいは知っているとするところに生じる妄語です。
 以下の状態は皆、正直とは言えません。

1 見たものを見ないと言う。
  見ないものを見たと言う。
2 聞いたものを聞かないと言う。
  聞かないものを聞いたと言う。
3 知っていることを知らないと言う。
  知らないことを知っていると言う。

 どうでしょう?
 まず、私たちは1と2について、かなり怪しい空気の中で生きていると思われます。
 曖昧な状態である「~という気がする」を、そのまま事実に〈格上げ〉してしまい、「見た」「聞いた」として語り、行動してはいないでしょうか?
 最も端的な例が、「肩が重い→何か憑いているような気がする→断定的にモノを言う人から悪霊が憑いているよと指摘された→憑いた悪霊に悩まされる」といったパターンです。
 現代はまさに先行きが不透明な不安の時代であり、それは「~という気がする」ビクビクした心に顕れています。
 昔、トイレが真っ暗だった時代に、子供が一人でトイレへ行けなかったり、お墓が陰気だった時代に、お墓で肝試しをやったのと同じ心理です。
 昔はそれを笑い飛ばす先輩や大人がおり、人生の一時期を過ぎればいつしかビクビク状態は忘れ去られましたが、今は、大の大人同士がずっと引きずっています。
 しかも、不安の原因となっている曖昧さについて「それは実体がある」と無責任に断定する人々が現れ、より過激に断定することによってマスコミからスターに祭り上げられ、今や〈人生の師〉らしい顔で世を渡っている様子を見ると、これで日本は大丈夫かと心配になる日もあります。
 たとえば、関東大震災直後の日本はどうだったでしょう。
 当山のブログ『彼岸 ―鶴見署長大川常吉に学ぶ─』(http://hourakuji.blog115.fc2.com/blog-entry-655.html)からの転載です。

 大正12年9月1日に起こった関東大震災は、実に340万人以上もの方々が被災し、犠牲者は死者行方不明者合わせて14万人以上に上る大災害でした。
 翌2日、政府は戒厳令を宣告し、3日には戒厳地境が東京府・神奈川県全域まで拡大されました。
 非常事態にあたり、朝鮮人が混乱に乗じて日本政府の転覆を計るのではないかと疑心暗鬼になった人々は、兵士や警察官はもちろん、自警団を組織する民間人なども、朝鮮人と見るや暴行し殺害しました。
 治安を乱そうと強盗や放火を行い、井戸に毒物を入れているなどという噂も飛び交っていたからです。
 そうした最中、横浜鶴見の警察署へたくさんの朝鮮人が救いを求めて訪れていました。
 鶴見署は彼らを総持寺へかくまいましたが、人数が多くて安全の確保は難しく、殺気立った群衆から守るため警察署へ連れ戻しました。
 それを知った群衆は鶴見署をとり囲んでどんどん膨れあがり、ついには千人以上の人々がだれ込みかねない様相を呈するほどになりました。
 危機に直面した当時の署長大川常吉は覚悟を決めて群衆の前へすすみ出、まず自分を殺してから朝鮮人を殺せと大音声で言い放ち、実際に井戸へ毒を入られたというのならそれを持って来いと告げました。
 そして、眼前へつき出された一升にもなろうかという水を群衆の面前で飲み干しました。
 この気迫に押された群衆は引き上げ、ことなきを得ました。
 後に、大川署長はこう語ったとされています。
「朝鮮人であれ、日本人であれ、自分の仕事は人のいのちを救うことなのであり、当然の行動だった」
 こうした使命感を支えたもの、それは、限りない思いやりと、是非善悪を判断して揺るがぬ智慧です。

 今の私たちに、朝鮮人を狙って暴徒化した群衆に似た心理が発生しつつありはしないでしょうか?
 大川常吉のようなわけへだてのない思いやりと、ことの真偽を確かめ見分ける肝の据わった智力、そして、その慈悲と智慧に裏付けられた行動が可能でしょうか?
 ここではすでに、前掲した3、すなわち知っていることと知らないことを峻別し、責任をもって話す正直さも問われています。

 忘れ去られそうになっている言葉に「世迷(ヨマ)い言(ゴト)」があります。
 わけのわからぬバカバカしい言葉を指しますが、迷い、フワフワした心理から発せられる言葉は、自分の心理を表しているだけでなく、世を迷わせる危険性までも含む場合があります。
 お化けがいそうだと不安を口にする人々、そこにお化けがいるぞと断定する人々が加わったならどうなるか?
 やはり、正直であれと説く、こうした心の訓練は貴重であると思われます。
 当山の隠形流(オンギョウリュウ)居合でも、稽古の前に必ず唱和します。

「我、明と暗の区別をするは、人を惑わさず、自他の発展を願うがゆえなり」

 自分が、明らかであることと明らかでないことを区別できなければ、自分が迷うだけでなく、他人をも迷わせてしまいかねません。
「正直なれ」を胸に抱いてやりましょう。




 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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