コラム

 公開日: 2013-01-07  最終更新日: 2014-06-04

助けを求めている人を助ける心になりましょう ─インドのレイプ事件に思う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 1月6日付の産経新聞は、昨年12月16日にあったインドのレイプ事件で死亡した女性(23才)の友人男性(28才)が、テレビ局のインタビューに応じたことを報じました。
 事件は、首都ニューデリーで無認可のバスに乗り込んだ男女が襲われ、女性が6人がかりで暴行された上、二人とも裸で放り出されたというものです。

「男性が5日付のジー・ニューズ(電子版)に語ったところによると、路上で通行人に助けを求めたが、車やバイクは速度を落としたものの停止せず、見回り中の住人が警察に通報するまで25分かかった。
 警察が到着したのは解放から45分後で、その後も警察はどこの警察署が管轄するのかを決めるために時間を浪費し、病院に着いたのは、警察到着から2時間以上も後だった。
 その間、警察や病院内の人は誰も衣服を貸してくれず、シーツの切れ端を提供されただけだった。」

 日本では考えられない驚くべき成り行きですが、最後に、男性は火を吐くような思いを述べました。

「男性は、レイプ事件をめぐる抗議デモについて、ろうそくに火をともしても人々の考えは変わらないと批判。
『道で助けを求めている人がいれば、助けなければならない』と訴えた。」

 男性は二つの真実を衝いたものと思われます。

1 階級差別をなくさなければ、人権は抑圧されたままである

 インドでは恋愛に関する法の制限はありませんが、事実上、上流階級しか自由恋愛はできません。
 インドで作られる映画のうち、カーストを超えた恋愛の悲劇に関するものが少なくないのはそのためです。
 新聞紙上の求婚広告には6つのポイントがあります。
 カースト、年令、学歴、職業、収入、肌の色(例外なく「色白」と書いてある)。※大谷幸三氏による
 カーストが違えば、もう、別世界の人でしかありません。
 低カーストの中でも特に女性に対する扱いは想像を絶するものがあります。
 レイプされたあげく、恥さらしになりたくないなら結婚しろと迫られたり、事件をもみ消して欲しいなら金を出せと被害者が警官からも請求されたりします。
 昨年9月9日、ニューデリー近くの村で、最下層民ダリットの出身である少女(16才)がレイプされたあげく、通報すれば殺すと脅され、画像がアップされました。
 10日後、父親は殺虫剤を飲んで自殺しました。

 亡くなった女性が入院先のシンガポールから帰国した際、首相までが遺体を出迎え、火葬には知事も立ち会い、シンデ内相は「国全体が(性犯罪防止の)期待を持ってわれわれを見ている。裏切ることはできない」と言明しました。
 それは、インド各地で性犯罪の多発に抗議し厳罰化を求めるデモが激しくなったことが階級制という国家の屋台骨を揺るがせないための配慮と思われます。
 2500年前、お釈迦様は説かれました。

「人間の価値は出自によって決まるのではない。
 どう生きるかによって決まる」

 王様までもが仏教に帰依したインドにおいてこうした凄まじい階級制度がいまだに残っているのは、人間の変わりにくさを示しています。
 特権階級がその座を降りるためには凄まじい社会のパワーが要り、幾多の犠牲と混乱を経なければならないのでしょうか。

2 いっときの感情に動かされた行為だけでは、人は変わらず、社会も変わらない

 男性がいかなる人物であるかまったくわからないという面を差し引いてなお、少なくとも二人に同情し国へ抗議してくれた人々へ「そうしたことを行っただけではならない。行動を変えて欲しい」と述べたことは、男性ののっぴきならない人間不信を示しています。
 こともあろうに首都において被害者たちが25分もの間、通りすがる人々から見捨てられていたとは、信じがたいとしか言いようがありません。
 男性がここまで言わないではいられない気持もある程度は理解できます。
 そして、さらに考えてしまいます。
「煩悩(ボンノウ)による善からぬ行為から抜け出せず変わりにくいのは、インドの人々ならぬ私たちもそうではなかろうか?」

 人生相談を受け、日々、報じられる社会的立場のある人々が引き起こす事件に接し、さらに自分自身を省みて慨嘆したくなる時もあります。
 また、勉強会や寺子屋に参加し、対話する方々のいかに多くが「せっかく学んでも、なかなかそうは生きられません」と漏らされることか……。
 確かに、男性の言葉は恐ろしい真実を衝いています。
 中には恨みを晴らすための行動を起こすべく願いをかけて四国八十八か所巡りをした方もおられます。
 お寺巡りや、たまさかの座禅をしたからといって、簡単に無明(ムミョウ)の雲が晴れ、煩悩(ボンノウ)の覆いが溶けるものでもありません。
 しかし、それでもなお、いや、それだからこそ、心のトレーニングという精進は欠かせないと強く思います。

 自分で、自分の心を人間として理想的な方向へと向ける以外、根本的に救われる道はありません。
 そして、それは必ず、誰にでもできるはずです。
 なぜなら、私たちは、誰しもが幸せになりたいと願い、苦を離れたいと願い、光の方向を向いているからです。
 そして、自らを省み学ぶ姿勢があれば、自分だけでなく他人も同じ願いを持っており、一緒に同じ方向を向いて邪魔し合わない方が共に光を受け、光源へ近づいて行けることに気づくはずです。
 自分の無知や至らなさを懺悔し、思いやりを深める方向さえまちがっていなければ、いずれの宗教宗派であろうと、あるいは非宗教的な倫理・道徳であろうと、その人なりに、光へ向かって歩くための羅針盤となることでしょう。
 今日も、それぞれなりに、地道な一歩を確実に歩もうではありませんか。




 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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