コラム

 公開日: 2013-01-11  最終更新日: 2014-06-04

子や孫のためにふり返っておきたい先人の導き(その43)─謙虚に破壊的感情を抑え大欲を持って進もう

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈冬ざれの七ッ森〉

 この欄では、昭和6年に発行された小冊子を基にして子供たちの導き方を考えています。

40 「ひ」 一つ上ったらも一つ上れ

「向上の精神は少年の生命だ。
 上れ!
 あくまで上れ!
 中途で満足したら、それきりだ。
『これでいい』というのは退歩の言葉だ。」

 真の向上的精神は、決して我欲(ガヨク)ではなく、謙虚な心と大欲(タイヨク)によって支えられます。

1 謙虚な心

 謙虚な心が鏡となり自分の〈至らなさ〉に気づきつつ、私たちは向上します。
 鏡がなくなったら、それきりです。
 それきりとは、生まれの因縁と、それまでの人生の延長線上で惰性の生活をするということです。
 生まれの因縁のままに生きればそれでいいじゃないか、とは言えません。
 なぜなら、生まれ持った煩悩(ボンノウ)という「破壊的感情」によって自他を傷つけつつ生きざるを得ないからです。
 しかも、これを放置したまま、もしもお金持ちになったり権力を握ったり有名になったりすると、一人の煩悩によって人生を破壊される人々がたくさん生じてしまいかねません。
 
 A社は復興工事にからんで急成長し、全国規模で人集めをしています。
 当山の信徒Bさんは条件に魅力を感じてはるばる東北まででかけ、宿舎生活を始めました。
 ところが、労働条件は広告とかけ離れ、手取りは少なくタコ部屋同様の生活で、しかも上司は部下をいじめ、あげくの果ては暴力的制裁も常態化しているというありさまで、Bさんは泣く泣く東北の地を離れました。
 Bさんからいただいた手紙の一部です。
「ご縁により宮城県の法楽寺様にお邪魔する機会がほぼなくなることが残念です。
 ただ私はお金が用意できるならば法楽寺様がホームページにて募っておられる守本尊様のご奉納に参画したく思います。
 私自身は宮城県から遠く離れてしまいましたが、私を守ってくださる仏様が、お寺を守る支えとなるのはまことに光栄でございます。」
 肉体労働を行っているBさんは、いつの日にか守本尊様を奉納し、自分が守られると同時に、当山へ足を運び縁を結ばれる方々がその守本尊様に守られることを願っておられます。
 泣けました。
 そして、憤りました。
 このように、まじめにはたらき、他のためにもなろうとしている純真な若者が食いものにされてしまうとは何と恐ろしいことでしょうか。

 A社を動かす人の煩悩が悪業をつくり、A社が悪しき共業(グウゴウ…社会的な業)を積んでいる様子は決して珍しいものではありません。
 もちろん、お金を儲けようとすることそのものに善悪はなく、問題はいかなる目的で、いかなる方法を用いて儲けるかという目的と方法にあります。
 経営者や出資者が優雅な生活をするためだけであれば、あるいは、はたらく人々を単なる道具扱いするのであれば、いかなる大儲けにも本質的な価値は伴わず、むしろ、儲けの大きさほど悪業を積んでいる可能性を疑わねばなりません。
 そもそも、人間を使い捨ての道具として扱うシステムそのものがすでに非人間的であり、日本全が持っていたはずの美風である〈支え合い〉からどんどん遠ざかっていることを指摘する議論が少ないのはどうしたことでしょうか。
 膨大な〈Bさん〉を生みつつ大企業が儲け、国力を高めて、日本はいったい、どこへ行こうとしているのでしょう。

 謙虚に自らの煩悩を見つめ、〈至らない〉人間であることを忘れず、知的向上も運動能力の向上も、煩悩の浄化を伴いつつ行いたいものです。

2 大欲(タイヨク)

 ダライ・ラマ法王は煩悩を二つのカテゴリーに分けられました。

「貪欲、憎悪、悪意などのそれ自体破壊的なものと、怒りや愛着や怖れなどの状況にそぐわないほど強烈になったときに破壊的になるものです。」

 憎悪は発した時すでに破壊的であり悪行につながるけれども、怒りは正義感から発する場合もあり、それが行き過ぎ破壊的な様相になれば悪行へ走る怖れがある感情なので、二つをきちんと分けて考えねばなりません。

「疑い、恥じ、悲しみ、競争心などの感情も、またエゴイズムでさえも同じように破壊的な局面と破壊的でない局面の二面を持っています。」

 疑いから勉強は始まり、恥じや悲しみは社会生活に役立つ場面があり、競争心も「高度なすばらしいことを成し遂げよう」とする時には原動力となり得ます。

「エゴイズムもまた二種類に分けることができます。
『自分にはこれをやってのけることができる』という心、自信のもととなる強い自我意識なら有益でしょう。
 しかし自分の利益だけをひたすら追究するもうひとつのタイプのエゴイズムは、他人の幸せなど一顧だにせず、自分の利益のためなら喜んで他人を搾取します。
 そのようなタイプのエゴイズムは明らかに破壊的なものです。」

 よく誤解されているように、仏教は「欲イコール悪」と説いているのではありません。

「このように人の心の動きという微妙な問題をあつかうときには、教条的になりすぎないことが肝心です。
 ある心の状態が有益で建設的なものなのか、破壊的でよくないものなのか、文脈がわからなければ見定めることは不可能です。
 おおもとにある動機は何なのか、その感情の対象が何なのか、結果がどうなるのかなどを考慮に入れてようやく善し悪しの判断がつくのです。
 それゆえ、人の心という分野においては、私たちは常に心をひらき、柔軟に、実践的に対処すべきなのです。」

 まさにこうした真実を理由の一つとして、当山は対面の人生相談のみを行っています。
 私たちの生命力が強く動こうとする時、その大元に動機として大欲(タイヨク)があれば、決して破壊的感情ははたらきません。
 自他のためになろうとする大欲は建設的であり、自他を最大限に生かそうとするものだからです。
 
3 結論

 子供たちの向上意欲を正しく導きましょう。
 謙虚さを忘れず、心に潜む破壊的感情を抑え、善き目的のために大欲を持って進むよう、指導したいものです。




 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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