コラム

 公開日: 2013-01-13  最終更新日: 2014-06-04

食料廃棄と破戒、そして小松左京の描いた大崩壊

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈お地蔵様の持ちものは?〉

 1月10日、イギリスの機械技術者協会(Institution of Mechanical Engineers)は世界で生産される約40億トンの食料のうち、3割から5割が廃棄されている可能性があると発表しました。
 報告書は「「Global Food; Waste Not, Want Not(世界の食料:廃棄を減らし、欲するのをやめよう)」と題されています。
 イギリスでは野菜の約3割が形が悪いなどの理由で収穫されないし、ヨーロッパとアメリカでは、購入された食料の半分近くが捨てられているそうです。
 中国における接待では、いかに適切な分量を超えた食卓を用意するかによってその人の器量が推しはかられるという悪習が蔓延し、社会問題になりかけています。
 国際赤十字社によると、平成22年には、栄養不足人口よりも肥満人口の方が多くなりました。
 その一方で、人口爆発と気候変動によって食糧の争奪をめぐる戦争が起こるのではないかという指摘もあります。

 食料の廃棄は「不殺生(フセッショウ)」という戒めに反しています。
 私たちのためにいのちを差し出してくれる生きもののいのちを粗末にしているからです。
 こうした悪業は私たちへ報いをもたらします。
 経典によると、地獄などへ堕ちたり、せっかく人間界に転生しても、短命だったり病弱だったりします。
 環境的な報いとしては、栄養価のある食物と適切な医薬品に恵まれず、持って生まれた命分(ミョウブン)を尽くす前に亡くなってしまうとされています。

 また、肥満になるほど貪るのは「不慳貪(フケンドン)」という戒めに反しています。
 生きものとして身体が求める適切量を超えて摂ろうとするからです。
 こうした悪業は私たちへ報いをもたらします。
 経典によると、欲望が止めどなく盛んになる一方で、日に日に豊かさが失われるとされています。
 恐ろしい悪循環です。

 昭和49年、今から39年前、小松左京は短篇『再建』を書きました。
 人口爆発と食料危機による「大崩壊」が起こり、生き残った人々は55才になれば村を離れ、荒野へ向かいます。
 異星人が持って来てくれた寿命を延ばすための薬なども拒否します。
 病弱な子供を抱え、荒野へ去る父親を見送る女性は、異星人へ語ります。
「そのお薬はいただけません。
 おろかな事を、二度とくりかえしたくないのです。」
「人口は急速にふくれ上がり、ふくれ上がるにつれて、次第に飢えも増大し、それにつれて、世界全体に、むき出しの欲望と争いがふくれ上がって行き、やがて、すべての国々が、それにまきこまれ、無秩序と混乱がとめどもなく広がって──そして、ついに……」
 彼女の目線の先は廃墟です。
「──丘の反対の地平近く、荒れ果てた大地の彼方に、恐竜の骸骨のような、巨大な都市の廃墟がその稜線をのぞかせていた。
 鷲か禿鷹か、見分けのつかぬ鳥が、その上を何羽も輪を描いて舞っている。」
 彼女は静かに話を続けます。
「でも、何もかも失われたわけではありません……」
「混乱と物質文明の崩壊のあとに、どこかに生きのびていた精神のバランスはブーメランのようにもどって来ました。
 ──得たものもありました。
 以前さわがれた人口問題とは、単なる貧しさの問題ではなく、精神や生と死の根本問題に目をつぶって、かたよった形でふくれ上がって行く物質的ゆたかさの問題だった。
 という知恵が得られました。
 私たちはこの教訓を忘れたくないと想っています……」
「今度は、生と死の問題、精神と物質のバランスの問題を慎重に考えた、本当に〝美しい文明〟を私たち自身の努力できずき上げたい、というのが、私たちみんなの、共通の願いなのです……」

 自由競争の名のもとに、ルールを離れた巨大資本が世界中の食料を奪い合っています。
 生きのびるための道具であり、死をもたらす道具でもある高度な医薬品が自由に売買されるようになりました。
 私たちはどれだけ「生と死の問題、精神と物質のバランスの問題を慎重に考え」ているでしょうか?
 はたして「本当に〝美しい文明〟」は考究されているでしょうか?
 心優しい小松左京は、亡霊ではなく、生きのびた人に「大崩壊」後の世界を語らせましたが、どうなることか。
 後の世代に「無秩序と混乱」を体験させたくない、戦争をさせたくない、ただ、祈るばかりです。


 

 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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