コラム

 公開日: 2013-02-10  最終更新日: 2014-06-04

危うく自分へ引導を渡しそうになった一幕

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







〈八葉の蓮華座におわす『みやぎ四国八十八か所巡り道場』のご本尊様〉

 お葬式は引導を渡すために行います。
 引導とは、死者が地獄界や餓鬼界ではなく絶対の安楽を得られる世界へ向かって往く道を示し、お導きすることをいいます。
 修法により、亡者を8枚の蓮華でできた輿(コシ)へ乗せ、四大明王(シダイミョウオウ)が導師の指し示す安楽世界へと輿を運びます。
 もちろん、この修法は導師たる者にしかできませんが、人はいつ、どこででも救われ得るという仏法の本旨により、導師がいな場合の引導についても説かれています。
 まだ未熟な僧侶が死者を送らねばならない場合は、ご本尊様へおすがりする一念で祈ります。
 僧侶もいない場合は、まず地獄界へでも修羅界へでも足をはこんでくださるお地蔵様へ死者の苦が消滅するよう願い、あとは般若心経などの経典に没頭して読経するしかありません。

 お釈迦様は、大愛道という養母を火葬するにあたり、栴檀(センダン)の香木を身に着けさせ、教えを説かれました。
 大愛道は、お釈迦様が覚りを開かれたと聞き、500人もの女性を引き連れて精舎を訪れ、最初の女性出家修行者となった方です。

「一切の行(ギョウ…現象している一切のもの)は無常なり
 生ずる者は必ず死する
 生ぜざれば死せず
 この滅を最楽となす」

 有名な一句は『法句経』にも収録されています。
 空(クウ)を説くこの一句こそが、安楽世界の境地を示すものとされています。
 なお、お釈迦様は父親を送る柩の先頭にも立ち、導師を務められました。

 こうした引導作法の内容を書くことはできませんが、法は一連の流れで結ばれます。
 さて、さる会場でのできごとです。
 流れが始まり、丹田へ溜めた力をバネに「喝!」と解き放つ直前、あらんことか、「ただ今より、お別れの言葉がございます」と担当の女性がアナウンスをしてしまいました。
 それに呼応して、最前列に座っていた長老のお一人が動く気配を感じました。
 これは一大事です。
 祭壇前へと歩む長老の背中から引導を渡すわけにはゆきません。
 そうかといって、中止すれば、もはや後輪が地上から離れる寸前の飛行機を急に止めようとして滑走路を外れる大事故のような事態に陥りかねません。
 そして、一旦、導師として法の中にいる以上、法を解かない限り、「ちょっと待ってください」などと声を発することもできません。

 結局、充分に丹田を満たす時間のないまま、いつものように全身全霊で引導を渡しました。
 その結果、文字どおり精根尽き果てて呼吸困難に陥り、頽(クズオ)れそうになりました。
 しかし、引き続き、供養の読経を行わねばなりません。
 もはやいつものような腹式呼吸はままならず、胸で浅い呼吸をしながらの読経となったので、かなり聞き苦しいものになってしまいました。
 それでも、み仏様と先輩である故人の御霊にお守りいただき、途中からどうにか復活し、一座をご守護くださったお不動様の徳をお讃えする最後の声明(ショウミョウ)は、いつものようにお唱えすることができました。
 参列された方々は、手順前後だけでなく私の異常にも気づかれたに違いない、年寄りだから何かの発作が起きたのかと心配されると申しわけないので、どう説明しようなどと考えながら会食の席へ向かいました。
 喪主様へ申しあげました。
「先ほどは失礼しました。
 あれは、跳ぶ体勢に入った障害走の選手が、急にハードルの位置を変えられたようなものです。
 危うく転びそうになりましたが、どうにか跳び越え、いくつかのハードルは倒しながらも、最後はちゃんと跳びながらゴールできました。
 きっと御霊がお守りくださったのでしょう。」
 喪主は、故人のお葬式らしいできごとでしたと笑い、この話は終わりになりました。

 あらためて、生前のバックアップだけでなく死してなお、危機からお救いくださった御霊へ感謝すると共に、張りつめた一本の糸のように、あるいは真剣の刃を渡るように行う修法における危機管理について考えさせられた一幕です。





 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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