コラム

 公開日: 2013-02-13  最終更新日: 2014-06-04

「一途一心、命をつなぐ」を読む

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈『森栖』さんです〉

 順天堂大学医学部教授で心臓外科医の天野篤氏が『一途一心、命をつなぐ』を上肢された。

「弱気は敗北、甘えも敗北。
 心臓外科医にとって、『敗北』は患者さんの死を意味する。
 負けるわけにはいかないのだ。」
「命を守るために、真剣勝負する。
 それが外科医の仕事なのだ。」
「心臓の手術は、地獄の入り口にいる閻魔さまとの闘いだ。
 敗退はできない。
 何があっても患者さんをこの世に元気に連れ戻さねばならない。
 手術の中にある命の分岐点と、生と死の天秤棒。
 それを意識しながら手術をすることがいかに重要かを、今は僕自身が若い医師たちに口を酸っぱくして伝えている。」

 手術の現場では、真剣勝負以外の様態はあり得ない。
 氏は修業時代、恩師から口を酸っぱくして言われたという。

「ポイント・オブ・ノー・リターン。
 その分岐点を常に意識しろ。」

 手術では、もう、ここからは後戻りできないという段階がある。
 その先は、一本道を到着点まで進み続けるしかない。

「トンネルの先に見える小さな一点の光を目指して、まっしぐらに進む。」

 患者のいのちは生と死のどちらへ行き着くか。
 手術の途中で生と死の天秤棒が死の方へ傾いたと感じたら、軌道修正せねばならない。

「あたかも神様が天秤の支点をそちら側にすらしてしまった……そんな瞬間が心臓手術の中にはあるのだ。」

 ここで支点を戻さない限り、患者は死ぬ。

「『ここがその分岐点だ』と気づいたら、腹を決めて、それまで以上に精神を集中させて前に突き進む。」
 
 読んでみると、最先端技術を駆使して病魔と闘う医師は、実に〈人間〉であり、胆力や集中力など人間としての力が手術の成否を決定的に左右することがわかる。
 メスを入れれば、一瞬先はいかなる事態になるかわからない。
 天秤の支点がどう動くか、コンピューターも人間も、完全な予測はなし得ない。
 時々刻々と変化する新しい事態への対応策を瞬時に決め、ためらわずに実行しつつ、患者と共に「小さな一点の光」へ必ず到着する。
 人間がこうした行為をなし続けられることにあらためて驚嘆し、人間への崇敬の念がじわじわと胸に広がる。
 氏が「口を酸っぱくして伝えている」のは、全身全霊を挙げ極限まで研ぎ澄まされた意識の集中であり、技術という言葉を遥かに超えている。

 引導を渡す瞬間はこうありたいし、そうでなければ、死者を確実に安心の世界へと送ることはできない。
 医師に比べれば僧侶は格段に恵まれている。
 患者と違って死者は動かないからだ。
 法を結び意識を澄ませれば、肉体から離れつつある何ものかは必ずとらえられる。
 しかし、動く玉を打つ野球よりも動かない玉を打つゴルフの方が簡単だとは誰も思わないことだろう。
 
 引導を渡すと精も根も尽き果てたような気になるが、時には10数時間にも及ぶ外科医の集中力を想うと、想像し切れない世界と言うしかない。
 ただただ、頭を垂れつつ、本書を読んだ。
 最後に、氏は自分へこう言い聞かせている。

「天職と思うなら、もっと努力しろ。
 もがけ。
 立ち止まるな──。
 ゴールテープを切るまでは、この声が消えることはない。」

 まったく同感。
 目線を上げてもがきつつ進み、前のめりに倒れたい。
 長く合掌した。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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