コラム

 公開日: 2013-02-23  最終更新日: 2014-06-04

【現代の偉人伝】第168話 ─レディー・ガガのティーカップを寄贈した弓哲玖(ユミアキヒサ)氏─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




レディー・ガガ

 大崎市の歯科医弓哲玖(ユミアキヒサ)は、平成24年春、米歌手レディー・ガガが東日本大震災支援チャリティーオークションへサイン入りのティーカップを出品した際、「震災の復興目的以外で使われてほしくない」と考え、約600万円という破格値で落札した。
 弓氏は歯科医だが、かねて自閉症の子供たちの治療などへも精力的にとり組み、大震災のおりには歯形から犠牲者の身元を特定する作業に携わり、その後も被災地での支援活動を続けてきた。
 弓氏は震災後に発症した特発性肺線維症という難病をかかえており、平成25年に入って入院したが、酸素ボンベを用いながらも「患者さんをいつまでも待たせられない」と自分の病院へ戻り、治療に励んだ。
 しかし、2月の再入院をきっかけに、妹の張琴(チョウコト)氏へティーカップの寄贈を頼んでいた。
 3月20日、願いどおりティーカップは宮城県へ寄贈され、21日、弓氏は、それを待っていたかのように逝かれた。
 張琴氏は言う。
「最期は微笑んでいた。
 亡くなる前に渡すことができてよかった」
 村井知事もコメントを述べた。
「県に寄贈いただきましたカップについては、故人の遺志をしっかりと受け止め、一人でも多くの被災者を励ますことができるように、工夫して使わせていただきたいと思います」

 レディー・ガガは、震災から10週間後、世界が原発事故の放射能漏れを不安視していた頃に来日して被災者を励まし、「日本は安全だからみんな美しい日本へ」とアピールした。
 紅白歌合戦に出演し、「この宿命に生まれてきた自分を愛そう」と唄った。
 「PRAY FOR JAPAN」と書いたブレスレットを売り1億円以上もの寄附をしたり、件のティーカップをオークションへかけるために来日したりもした。
 世界中で各種の被災者などを精力的に応援するレディー・ガガの「日本のために祈りを」というアピールは、被災者を励ますだけでなく、多くの実質的な支援に結びついた。
 被災した仙石病院理事長の神部廣一医師の言う「本当に必要なもの」を理解し、努力していた。

 弓氏がこうしたレディー・ガガの思いに応えたのがティーカップの落札だった。
 カップはルース駐日米国大使もかかわったほどの品物であり、誰が入手してもずっと注目され続けるだろうと思われた。
 弓氏は、オークションへの参加者が必ずしも震災の復興を真の目的としないことを予想し、身銭を切った。
 復興させたいという一アーティストの志を純粋な形で守ろうとした。

 氏は54才だった。
 無念ではあったろうが、レディー・ガガの歌詞にあるとおり「この宿命に生まれてきた」ことを達観しておられたのではなかろうか。
 老いて、あるい病を得てこの世を去るにあたり、自分の志に合わせてモノを手放すのは自分のためであり、周囲のためでもある。
 最も晩節を汚すのはモノや立場への執着心であり、死後、周囲に醜くおぞましい争いが発生するのは不用意に遺された財物によるところが少なくない。
 その点、バラモン教に源を持つインドにおける四住期(シジュウキ)は理解できる。
 学ぶ学生期(ガクショウキ)、祭祀を行いつつ家族を守りはたらく家住期(カジュウキ)、森林に隠棲して修行する林棲期(リンセイキ)、托鉢(タクハツ)して過ごす遊行期(ユギョウキ)は、執着心を離れるイメージに合う。
 日本において同じく実践するのは困難だが、こうした意識で暮らしつつ最期を迎える生き方、死に方はできる。
 弓氏は、自分の生きざま、そして死への覚悟をティーカップの取得と寄贈に込めたのではないか。
 せいいっぱいの尊崇を込め、冥福を祈りたい。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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