コラム

 公開日: 2013-03-04  最終更新日: 2014-06-04

亡くなった人を憎めば地獄に堕ちるか?

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 まだうら若いAさんがまっすぐに視線を合わせて訊ねます。
「私は、生前、互いに憎み合っていた父親をときたま、思い出しては、生前ほど強くはないにしろ、憎悪を感じてしまいます。
 仏様になった人、それも自分の父親をいつまでも憎むなんてあまりに酷い人間だと思え、自己嫌悪に陥ります。
 いつまでも父親と憎み合う私はどうせ地獄行きだと諦めようとする反面、何て悪い娘だろうと懺悔する気持ちもあり、どうしたらよいかわかりません」

 お答えしました。
「喜怒哀楽の感情は刹那的に生じ、まもなく消えるものですが、記憶に従って繰り返し呼び起こされもします。
 高校球児が甲子園のグラウンドの砂を持ち帰り、生涯、感激を忘れないための宝ものとするのは、砂が記憶に強く結びつくからです。
 私は存在感を感じていた校長先生が亡くなられたと知り、もうすぐ無人となるお宅へ友人と一緒にでかけたことがあります。
 古い家はきれいさっぱり整理されていましたが、小さな木製の机が一つ、書斎の隅に押しつけられるように残っていました。
 古畳と机が先生の面影を鮮明に呼び覚まし、ご遺族へ所望しました。
 いいですよとのご返事でしたが、その机はついに手元へは来ませんでした。
 その後、一度だけ、先生の故郷へ梅の花を観にでかけたことがあります。
 記憶は、実に、魂の震えを再体験させてくれます。

 さて、貴方の場合は、記憶と一緒に自分が好まない種類の感情が甦って困るという状態のようですね。
 二つの面から考えてみましょう。
 まず、あの世へ逝かれたお父さんはどうなっているかということです。
 導師からこの世とあの世を明確に分ける引導を渡された以上、いつまでもこの世での人間関係で発した感情を〈引きずる〉ことはありません。
 ご葬儀では、本来み仏の子であることを認識し、戒律そのものの清浄な状態を目ざすという道筋をお伝えした上で、引導が渡されています。
 この時点で、絶対の智慧と慈悲を持つみ仏の世界へ溶け込む旅が始まり、清浄ならざる記憶や感情はどんどん消えて行きます。
 それは、不殺生(フセッショウ)や不両舌(フリョウゼツ)や不瞋恚(フシンニ)などの戒律に導かれつつ、あの世を旅している自分自身を想像してみればすぐにわかります。
 位牌の陰からこの世を眺め、かつては憎み合う関係にあった娘を眺め、きっとこう思うことでしょう。
『かつてはいろいろあったけど、とにかく、お前は私の娘だ。
 心の底ではよく生きてもらいたいと願っていたからこそ、辛くも当たった。
 私も至らない人間だったから、感情的になり、お前を苦しめもした。
 しかし、今はもう、親そのものの気持でお前を見守っている。
 幸せになって欲しい。
 そう思う』
 だから、もはや、あの世から、貴方を悪しき世界へと引っぱる力のはたらきようはなく、もしも、そのように怖れたならば、亡きお父さんへ申しわけないというしかありません。

 次は、貴方の心です。
 確かに和解といった手順もなく相手が旅立ってしまったので、貴方の心に憎悪が残ったという事情は理解できるし、記憶を簡単に消せない以上、それに伴う感情も又、意のままにならないというもどかしさも理解できます。
 しかし、貴方の心には憎悪だけがあるのではありません。
 憎悪そのものを問題視し、それを発生するままにしておきたくない、引きずられてはならない、という意志があります。
 そして、懺悔する尊い心もあります。
 ならば、救いは明らかです。
 心は身体と同じく、トレーニング次第で変化させられます。
 よき意志と尊い心を強め、陽の力を増大させることによって、相対的に憎悪というあって欲しくない陰の力を弱めることができるのです。
 だから、当山の例祭では、皆さんと一緒に懺悔から祈りを始めます。
 み仏の前で赤児の気持になり、心の底の底から陰の心を絞り出し、祈りの声と共に心身から放出するのです。
 それからよき心をつくる経典を読み、考えます。
 こうして善男善女はますます善の方向へと心が変化し、幸せや安心が大きくなります。
 もちろん、貴方にもできます。
 トレーニングは思い立った時が吉日です。
 お大師様の昔から伝わる正式なやり方をお伝えしますので、一緒に声を出してみましょう。

 さっきお話したように、貴方のお父さんの側にはもう、貴方への憎悪はありません。
 それどころか、守護霊となっておられます。
 そして、貴方には心のトレーニングをする方法があります。
 どうぞ、ご心配なく」






 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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