コラム

 公開日: 2013-03-07  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その45)─師弟関係は教育の大元─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 江戸時代まで寺子屋などの教材として広く用いられていた『実語教・童子教』を見直しましょう。
 一度聞いたら忘れられない警句などがふんだんに含まれています。

「師の弟子を訓(オシ)えざるは  
 是(コレ)を名づけて破戒(ハカイ)とす
 師の弟子を呵責(カシャク)するは  
 是(コレ)を名づけて持戒(ジカイ)とす
 悪しき弟子を畜(ヤシナ)えば  
 師弟地獄に堕ち
 善き弟子を養えば
 師弟仏果(ブッカ)に到る」

(師が弟子を適切に指導しないならば
 師たる資格がない
 師が弟子を厳しく指導するならば
 師の資格がある
 弟子が悪しく育てば
 師弟共々、地獄へ堕ち
 弟子が善く育てば
 師弟共々、悟りへ向かう)

 師の仕事は、自分の血肉となっている人の道を弟子へ教えることです。
 弟子の仕事は、善き心を育て、悪しき心を克服するために師から道を学ぶことです。
 互いに怠ってはなりません。
 師は、弟子へ教えつつ、さらに心の浄化を進めます。
 弟子は、師から真剣に吸収しようとします。
 だから、共々、悟りへ近づけます。

 3月6日付の朝日新聞は、『レベル下げるな 本気見せなきゃ』と題し、指揮者小澤征爾氏(77才)へのインタビューを記事にしています。
 氏は、高校生の頃、故山本直純と一緒に指揮者故斎藤秀雄から指導を受けていた際の記憶を語りました。

「直純が暗譜で指揮してて、先生はあれこれと分析した直純の楽譜を見ていて。
 で、終わった時に『直純、ありがとう。勉強になったよ』って言ったことがあったんだ。
 僕、マジマジと先生の顔見ちゃった。
 えーっ、先生がこんなこと言うのって」
「すごいんですよ。
 僕らにも音楽にも本気だって、これで伝わるでしょ。
 先生は確かによく怒ったけど、その怒りには必ず理由があった。
 プライドや単なる感情から僕らを傷つけるなんてこと、絶対なかった。
 音楽という大きなものの前には先生も生徒もないって、どこか謙虚に思っていらしたのかもしれないけど」
 
 弟子となり、今はいくらか師としての仕事もしている身としては、氏の言う「本気」と「謙虚」はよくわかります。
 師が本気だからこそ、弟子も又、本気になれます。
 師が謙虚だからこそ、弟子も又、謙虚になれます。

 氏は、合奏だけでなく合唱も高く評価しています。

「美しいハーモニーの中に、自分の声がとけこんでいる。
 そう実感することに、人生の本質のようなものがあると僕は思う」

 読経も同じです。
 僧侶を和合衆(ワゴウシュウ)と呼ぶのは、一緒に仏道を歩むからであり、同時に、声を合わせてみ仏へ読経のまことを捧げるからでもあります。
 だから、まず、頭(トウ)と呼ばれるリーダーの声をきちんと聴かねばなりません。
 また、周囲の人々の声も耳に入れて、そこへ違和感ないように自分の声を溶け込ませるのが正しい読経法です。
 もしも師が頭であれば、弟子は心して合わせる。
 そこに、大いなるものの前では「先生も生徒もない」世界が開けます。

「大切なのは、相手が子どもでも絶対レベルを下げない、ということ。
 こちらの本気を店、本物を体験させなきゃいけない。」

 師は、弟子から見れば異次元の存在です。
 それは自ずとわかります。
 そこで、師は、弟子の半歩先か一歩先を歩んで見せる。
 そうすると、弟子は自分もついて行けそうで、励む気になれます。
 氏の音楽塾の生徒さんたちは、小学生の前で演奏会を開き、中学生向けのオペラまでやっています。
 小学生や中学生が理解できる範囲で最高レベルのものを体験させるのです。
 大病と闘いつつ現場復帰を目ざしている氏は、「教育の礎を築く」のが自分にとって今後の課題であると言います。

 あるべき師弟関係こそ、あるべき教育の大元ではないでしょうか。
 私も弟子としての道をまっとうしつつ、いくばくかは師としての役割も果たして行きたいと願っています。
 そうした意味では、毎日、皆さんと接する法務のすべてが寺子屋の活動にオーバーラップしているのかも知れません。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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