コラム

 公開日: 2013-03-08  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第126回)─あいまいな喪失に悩む方々へ─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈納経が続いています〉

 喪失感に悩む方々へ手を差し伸べようとする「『あいまいな喪失』情報ウェブサイト」には、「行方不明者の家族の方へ」というコーナーがあり、行方不明者への対応を決めかねている方々へ「決める必要はない」と勧めています。
 それは、「『わからない』というのがこの場合最も正しい状態だからです。」としています。
 そして、「『分からない』状態に家族が対処できるようになる」ための方法を提示し、模索もしています。

 方法の一つが、相手の好きだった花や写真を飾るなど「心の中での繋がりを取り戻す」こと。
 もう一つが、「同じ立場にある人や、家族や自分の思いを理解してくれる人に、今の思いを少し話してみる」ことです。
 二点について考えてみましょう。

○つながりを取り戻す

 行方不明者の身近な方が苦しむのは、結局、心のつながりが宙ぶらりんになっているからです。
 そして、つながりを手放したくないからです。
 もしも早く放したいならば、あるいは、つながりを別な形にしたいならば、ただちにあいまいな状態へ決着をつけられるはずです。
 つまり、今までどおりにつながりの糸を結んでおきたいという願望が苦しみを生んでいます。
 ならば、相手が目の前にいなくても、花や、写真をよりどころとして、仮に糸の端を結んでおこうというものです。

○通じそうな人へ思いを話す

 淋しさや不安は苦しみとなってくり返し心へ顕れ、あるいは意識できない靄となって心を覆います。
 それは、自分で気を紛らすなどして解消しようと思っても、思うだけではなかなか解消できません。
 そこで「話す」ことが役立つかも知れません。
 話したからといってそのまま苦しみが心から外へ出てしまいはしませんが、言葉としてであろうと、あるいは気配としてであろうと、相手が〈受けとめ、温かい気持を向けてくれた〉という実感が貴重なのです。
 その温かさが、春の陽光が凍土をやわらげるように、少しづつ苦しみを解いてくれる場合があります。
 このコーナーの最後は、「自分の思いが尊重されたと感じた時、人は次の一歩を踏み出せるのです。」と締めくくられていますが、人生相談を行っている身としては、ここが要諦であろうと思います。

○その先は

 上記のいずれもが、モノであろうと人であろうと、〈思いが通って行く先〉の必要性を指摘しています。
 まず、塞がりや覆いを外さねばなりません。
 それは、手足が縛られれば身体が苦しくなりついには不調を来すのと同じだからです。
 ここから苦の克服が始まります。

 真に大切なのは、つながりの糸は「わからない」状態の相手とだけ結ばれているのではないという実感を取り戻すことです。
 考えてみましょう。
 相手が好きだった花は、目の前で咲いている花そのものとして、観る人の心と確かにつながっているではありませんか。
 じっと思いに耳を傾け、同苦と慈悲を滲ませている相手は、語る人の心と確かにつながっているではありませんか。
 確かに、思いをかけている相手の心理的重さは、花や誰かと比べものにならないはずです。
 しかし、たった今、花や誰かとつながっているという実感体験を重ねれば、〈比較の意識〉は徐々に薄くなって行きます。
 また、『般若心経』を写経したり声を出して読誦したり、あるいは経典についての法話を聴いたりするすることが薄めるのに役立つかも知れません。
 『理趣経(リシュキョウ)百字偈(ゲ)』の写経や読誦は、今を生きている自分の役割に気づかせてくれるかも知れません。
 実感体験や経典との縁により、やがて、今ある確かなものへ意識の比重がかかり、記憶は徐々に昇華(ショウカ)されて行くことでしょう。
 そして、いつしか、生きている以上たくさんの相手とつながっているという感謝と、それは特定の相手とだけではないという空(クウ)の感覚とを得られれば、新しい確かな歩みが始められることでしょう。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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