コラム

 公開日: 2013-03-13  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第128回)─「小説は 死者と生者つなぐ」考(其1)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。








 3月11日付の朝日新聞は、二人の小説家池澤夏樹氏といとうせいこう氏の対談「小説は 死者と生者つなぐ」を掲載した。
 宗教者の立場から考えてみたい。

池澤氏
「被災地には何回も通っているが、行くたびに、人がいる気配を感じる。
 建物がなくなった後のコンクリートの土台がお墓に見えて、墓参のような気持ちになる。
 原発や町の再建問題もあるが、ずっと考えているテーマは死んだ人たちのこと。」

 人がいるとは感じられないし、墓参のような気持にもならない。
 小説家のイメージの膨らみ方を想う。
 初めの頃は、津波からのがれるため海辺から内陸へと向かう人々のざわめきのような気配を感じた。
 最近は人の営みを無化してしまう自然の峻厳さや、頭を垂れないでいられない崇高さに圧倒される。
 不思議と、死の先にある穏やかさも感じるようになった。

いとう氏
「被災地を車で走っていた時、暗闇の中からざわざわと声が聞こえると思った。
 それを聞き取らないとダメだと思った。
 僕は16年間小説が書けなかったが、震災チャリティーで短編を数本書いた後、あの声を書かなければ二度と書けないと思い、『想像ラジオ』を書き始めた。
 震災関連の労作は多いが、死者と生者をつなぐフィクションがなくて、今回、池澤さんの『双頭の船』を読んで、向こう側とこちら側とに通路があり、そこに風が吹けば、死者と生者をつなぐ何かが生まれると感じた。」
 

 いとう氏の言う「ざわざわ」はわかる。
 夜になると、そうした〈動き〉を伴わず、じっと佇むものを感じたりもする。

池澤氏
「以前から、唐突に死んでしまった人は自分の死をどう納得するのかが気になっていた。
 準備ができていない死、不慮の死をどう受け入れるか。
 宗教を持たない僕らの大半は、向こうへの渡り方、見送り方、悼み方を持っていない。
 そのことをずっと考えていたところへ震災が来た。」

 唐突の死は、まるで、強く打つ両掌から片方が消えてしまうようなものだ。
 最大の速度が出ている時、対象がなくなると、その瞬間から力は削がれないまま、無限の先へと向かう。
 隠形流(オンギョウリュウ)居合の「突き」などはこのイメージであり、修法の際に行う遠隔法も、この原理を用いたりする。
 だから、対象のイメージを失った死者が彷徨する可能性はあると考えている。
 それに対応するため、死者を送る修法は一様ではない。
 み仏方がたくさんおられるのは、当然、役割がさまざまだからであり、死の様態によってお導きに加わるみ仏は異なる。
 ご葬儀を行う導師が死の様子をお訊ねするのは、決して世間話をするためではない。
 死者を確かに安心の世界へお送り手順を決めるためであり、引導の方法、つまり「渡っていただく道筋」はこうして定まって行く。
 亡くなったご本人の多くは、〈渡り方〉を知ってはおられない。
 しかし、〈渡っていただく〉修法を行う導師を介在してみ仏方の〈お導きの力〉がはたらき、結果として〈渡られる〉ことになる。
 だから、人が人を送る文明の続く限り、法力を持った宗教者の存在は欠かせない。
 当山が、相手の宗教宗派を問わずご葬儀を行い、引導を渡しているのはこの理に基づき、決して相手を選ばないみ仏のお力を信じているからである。

 また、当山は、〈見送り方〉や〈悼み方〉をご存じない方のために、法話や人生相談を行っている。
 こうした死にかかわることごとは、思いつきで〈方法〉がみつかるという次元の話ではない。
 だから、過去の聖者方や超絶的な力を持った行者の方々が全身全霊を挙げて研鑽・研究し、後代の私たちへ遺し伝えてくださった〈方法〉を敬虔な気持で学び、実践している。
 当山は、数珠の持ち方やお経の唱え方から学ぶ方々が〈見送り方〉や〈悼み方〉を通じて、いつしか〈渡り方〉も学ばれていると実感しつつ、ご指導申しあげている。
 もちろん、私自身が、皆さんと一緒に考え実践しつつ、〈渡り方〉を深めている。
 これが大乗仏教、すなわち、大きな船へ皆共に乗り合い、安心の世界を目ざす道であると信じている。
 共同墓『法楽の礎』や『自然墓』へ入られる予定の方々から「住職も一緒に」と言われ、私の遺骨は分骨されて共に眠る予定である。
 ありがたく、嬉しくもある。
 この世で信じ合える思いそのままにあの世へ行けるのだから……。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ