コラム

 公開日: 2013-03-15  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第130回)─「小説は 死者と生者つなぐ」考(その3)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。









〈岩出山の『森栖』さん〉

 3月11日付の朝日新聞に掲載された池澤夏樹氏といとうせいこう氏の対談「小説は 死者と生者つなぐ」を読んでいます。

池澤氏
「政府発表や大メデイアのメッセージ、『大災害』や『きずな』といった言葉が空回りすることに危険を感じていた。
 それを切り崩すには一人一人の声にもどらなくてはならない。
 つかみきれないものをつかもうと、もがいていた。」

 政治とマスコミという二大権力機構によって〈特定の言葉〉がくり返し叫ばれ出したなら、私たちは、誰がいかなる意図で世論を繰ろうとしているのかと、一歩、身を退き冷静に眺めてみる必要がある。
 頻繁に見聞きする〈特定の言葉〉がオウムのように自分の口から出る時、私たちは思考停止に陥っている可能性がある。
 東日本大震災によって人と人との絆が無惨に切られた時、当事者はもちろん、周囲の人々もまた、絆の価値を再考させられた。
 ひとごとへの無関心という現代人の深刻な病理がいかに哀れで深刻なものであるかという事実にも気づかされた。
 そして、見返りを求めず、隠れた意図を持たない清浄な思いやりの実践、つまり真の布施(フセ)という人間が人間であることを示す最も崇高な心の核が目覚め始めた。
 ここから先は、各々が心の命ずるところに従って、真摯(シンシ)に進むしかない。

 最近、80才を超えたAさんから聞かされた。
「太っているのと年をとったせいで足腰の調子が悪く、知り合いから勧められた施設に連れて行ってもらいました。
 そこでは、半強制的に屈伸運動のようなものをさせられます。
 屈強な青年が支えてくれるので何とかメニューをこなせますが、帰ってくると動けなくなり、医者で両膝近くに注射をしてもらい、3日くらい寝たり起きたりをくり返し、また、でかけるという状態でした。
 あまりに酷いので、途中で狡(ズル)をしようとすると、そんなことではだめですよと叱られます。
 担当者たちは皆、信念を持ち誠意にあふれ、汗だくになってやってくれますが、私にとってはもはや苦痛なので、止めました。
 ここから先へはもう、行って欲しくないというあたりがわからないんですね。」

 こうした嬉しい世界と苦痛の世界との分岐点は、人それぞれであり、ほとんど当事者にしかわからない。
 しかし、本当に〈よかれ〉と思って何かをしたいと願うならば、そこを限りなく正確に感じとる努力が欠かせない。
 ひもじい人へ食事を提供すれば喜ばれるが、だからといって毎日ステーキを用意したならばどうなるか。
 実に、相手のためになることは難しさを伴う。
 難しさから逃げず、相手に合わせて〈よかれ〉と実践し続けるところに、実践者の成長もある。
 進むばかりでなく、時には立ち止まり、時には退がり、しかし、観音様の慈悲ある眼と手は失わないこと。
 そうした実践者の繊細な感覚を鈍磨させ、ともすれば相手へ苦痛を発生させかねないのが、独り善がりな思い込みや思考停止である。
 特に、宗教にかかわる人々は、「私があなたを救ってあげる」などという思い上がりを持たぬよう深く心せねばならない。
 
 氏の「一人一人の声にもどらなくては」という指摘は重い。
 何としても、そこを聴き、そこに立ちたい。
 その時、もはや、〈特定の言葉〉は不要なのである。





 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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