コラム

 公開日: 2013-03-24  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その49)─鍛えられる心─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 江戸時代まで寺子屋などの教材として広く用いられていた『実語教・童子教』を見直しましょう。
 一度聞いたら忘れられない警句などがふんだんに含まれています。

「祖(ソ)に離れ疎師(ソシ)に付く
 戒定恵(カイジョウエ)の業(ワザ)を習い
 根性(コンジョウ)は愚鈍(グドン)と雖(イエド)も
 好(コノ)めば自(オノヅカ)ら学位(ガクイ)に致(イタ)る」

(一族が住んできた家を離れて、遠くの師に弟子入りする
 戒めと心身の定まりと智慧とについて学び
 生来はそれほど智慧が回らない者であっても
 喜んで学べば、自然と位や資格を得るに至る)

 これは、親元から離れた子供がお寺へ弟子入りする様子です。
 自分を絶対的に守ってくれる親のいる家から離れて、見知らぬお寺へ入り、家にいた時とはまったく異なる環境で、まったく新しい生活を始める子供の気持はいかなる状態でしょうか。
 おそらく自分から申し出るケースは少なく、親が住職に鍛えてもらおうとしたり、あるいは口減らしをするために弟子入りさせたものと思われます。
 もちろん、地域によっては、今の子供たちが学校へ行くように、一定期間、お寺で手伝いながらの修行をさせたのかも知れません。
 ちなみに、タイのバンコックにおける早朝の景色は、橙色の袈裟衣をつけた子供たちの列と、ひざまづいてお布施を渡す人々のやりとりから始まります。
 いずれにしても、多くの子供たちは心細く、不安を抱えて修行生活へ入ったことでしょう。

 お寺で学ぶのは、戒定慧(カイ・ジョウ・エ)の三学(サンガク)です。

 普段の生活にあって自分を律する「戒」を学ぶのは、悪行を避け、善行を実践して福徳を積むためです。
 戒学には、布施(フセ)・持戒(ジカイ)・忍辱(ニンニク)・精進(ショウジン)の4つがあります。
 誰かのためになるのが布施、決められた戒律を守るのが持戒、何があっても堪え忍ぶのが忍辱、最後までやり抜くのが精進です。
 これができなければ、瞑想などの精神修養を行う資格がありません。
 自分のことしか考えず布施を行う心のない人がみ仏の境地をめざす瞑想に入っても結果を得られるはずはなく、飽きっぽい人に修行の続くはずはないのです。

 戒学(カイガク)が進めば定学(ジョウガク)へ入ります。
 これは瞑想によって心を集中させる訓練である「止(シ)」が主となります。
 日常生活にあっては、次々と見聞きするものに反応して心が動き、じっとしていても次々とさまざまな想念が起こり、み仏が説かれた真理を探究できる状態ではありません。
 だから、心身を整え、静かな環境で瞑想を行い、真理そのものへ向かう集中力を高める訓練が必要です。

 集中力ができれば、慧学(エガク)も進みます。
 慧学は、分析的に正しく判断する「観(カン)」が主となります。
 これには聞慧(モンエ)・思慧(シエ)・修慧(シュウエ)の三慧(サンエ)があります。
 まず、師の教えをきちんと〈聞〉けねばなりません。
 聞いたことは鵜呑みにしたり、忘れたりせず、自分で内容を〈思〉い起こし、納得できねばなりません。
 真理であると理解できたならば、内容を確認し、理解を深め、〈修〉める、すなわち真理に合わせた生き方を目ざさねばなりません。
 ここまで来てようやく智慧が得られ、真の精神修養が進むことになります。

 そして、智慧が得られれば、当然、布施も、持戒も、忍辱も、精進も行わないではいられなくなり、菩薩(ボサツ)として娑婆で活躍できるようになります。
 今回の教えで説く「戒定恵(カイジョウエ)の業(ワザ)を習い」には、こうした内容が含まれています。
 子供なりにとは言え、やる気を出して、歴史によって磨かれた精緻な心身の訓練を受ければ、心が浄められ鍛えられるだけでなく、正しく生きて行く力が出てきます。
 それが「学位(ガクイ)に致(イタ)る」です。
 知能指数がどうこうということではなく、その子供なりに、必ず結果を得られるのです。
 「たとえ愚鈍であっても」の一言には、大きな慈悲と救いがあると言うべきではないでしょうか。
 家庭でも、学校でも、こうした指導法に学ぶところがありはしないでしょうか。
 




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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