コラム

 公開日: 2013-03-29  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その50)─文字は精神の杖─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈『逝きし世の面影』からお借りして加工しました〉

 江戸時代まで寺子屋などの教材として広く用いられていた『実語教・童子教』を見直しましょう。
 一度聞いたら忘れられない警句などがふんだんに含まれています。

「一日に一字を学べば
 三百六十字
 一字千金に当る
 一点他生(タショウ)を助く」

(一日に一字を学べば
 一年の間に360もの文字が覚えられる
 そうして覚えたたった一文字でも、大金にあたるほどの価値がある
 文字によって思考されたほんのちょっとした善行でも、苦しみのないところへ生まれ変わるための助けとなる)

 一日にたった一文字ずつでも覚えてゆけば、一年経つうちに360を超える文字が身につきます。
 たとえば、「朝」という文字を覚えれば、夜が白々と明けそめてきた時、「ああ、朝だ」と思え、心に一つの区切りがつき、次の時間へと進む心構えがつくられます。
 また、「朝」の文字に出会えば、明け方の空の色や鳥の声が連想され、あるいは、仕事や学校の始まりといった印象が心に浮かびます。
 文字は思いをまとめたり膨らませたりもします。

 イギリスの文芸誌『グランタ』の編集長ジョン・フリーマン氏(49才)は、産経新聞のインタビューに応じました。
 文藝編集者の役割です。
「新しい才能を発掘し、その作家が(本人すら意識していない)真に書くべきことを探り当てること」
 そのために心がけているのは……。

「常に自分が無知であることを認識し、好奇心を絶やさない」

 作家の原稿用紙を埋めさせるのが、自分もまた精神の〈白紙〉を埋めようとしている編集者の役割であるようです。

 私たちの精神のカンバスには、こうやって一文字、また一文字と書かれ、人は生涯かけて〈その人〉になってゆくのでしょう。
 だから、たった一文字であっても、覚えた文字、あるいは紡ぎ出された文字には、はかりきれない重みがあります。
 私たちの心がそうした文字と感応し合うほんのひとときは、この世の生を潤すだけでなく、次の世へもよき影響を及ぼすことでしょう。
 それが「一点他生(タショウ)を助く」です。
(一点とは非常に短い時間であり、他生とは、生まれ変わった自分です)

 私たちがものを考える時は、必ず文字の助けを借りています。
 ジョン・フリーマン氏のような〈考える人〉は、思考の先に必ず新たな言葉を求めています。
 だから、常に「無知」の自覚があり、好奇心のもたらす意欲が「無知」の荒野を歩ませているのでしょう。

 文字は精神の杖です。
 しっかりした人生を歩めるよう、子供たちへきちんと文字を与えたいものです。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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