コラム

 公開日: 2013-03-31  最終更新日: 2014-06-04

僧侶の殺人事件に思う ─戒めの始まり─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 福岡県中間市にある浄顕寺の住職・畠山裕行容疑者(61才)が、「口うるさい」からといって85才になる母親を刺し殺しました。
 同じく袈裟衣をまとう者として、あまりに情けなく、恥ずかしい限りです。
 僧侶の中には、分をわきまえず出過ぎたことを行う者もいれば、飲酒を重ねて恥じない者もいれば、ゴルフバッグを車から降ろさない者もいます。
 いかなる修行や修法を行おうが、いかに読経や写経や写仏や彫仏などをおこなおうが、僧侶は自らと社会の業(ゴウ)を見つめ清め続ける〈一介の行者〉でしかありません。
 いい気になって外へ出れば堕落し、怠けて内を怠れば腐ります。

 今回、殺生という僧侶というより人間としての資格が問われる事件が起こり、あらためてお大師様が説かれた〈人間の基礎〉を読み直してみました。
 人が人たるには、けだものと違い、自らを戒めることが欠かせません。
 戒めは、五戒から始まります。

 五戒は、以下の五つです。
「1 不殺生(フセッショウ)
 2 不偸盗(フチュウトウ)
 3 不邪淫(フジャイン)
 4 不妄語(フモウゴ)
 5 不飲酒(フオンジュ)」

 お大師様は仏教の五戒がどうして定められたかを説いておられます。

「天地の初めのときに、人は地に生ずる食物を食べた。
 ひとりの人はたちまちに5日分の食物を取ったので、盗みの戒めを定めた。(不偸盗)
 地に生じた食物を食べることによって貪りの心が生じたので、男女の道の戒めを定めた。(不邪淫)
 愛欲のゆえに、互いに欺き奪ったので、殺すことの戒めを定めた。(不殺生)
 求め欲することによって、嘘をつきおもねるので、嘘をつくことの戒めを定めた。(不妄語)
 飲酒することによって酔って乱暴し、あってはならないことをするので、酒の戒めを定めた。(不飲酒)
 五つの戒めの始まりを尋ねると、そのよってきたるところは久しく、天地の始めにきざし、万物のさきに形をとったのである。」(筑摩書房「弘法大師全集」より引用)

 実に、私たちは、地上で生き始めた時からずっと、煩悩(ボンノウ)によってたやすく罪を犯す存在であり、戒めの心から離れれば、いつなんどき、罪を犯し、人間たるの資格を失うかわかりません。
 自己中心の煩悩と、かんちがいして世界を観る無明(ムミョウ)が克服されない限り、いつなんどき、畜生界へ堕ち、あるいはそれよりも下の地獄界へ堕ちるかわからない、〈危うい存在〉です。

 お大師様はまた、五つの戒律を「実(ジツ)」と「遮(シャ)」に分けられました。
 実とは、実際に行為そのものが罪となる戒めです。
 前述の「1」から「4」までの、殺し、盗み、よこしまなセックス、嘘は、そのものが悪です。
 遮とは、その行為が他の行為による罪を触発しやすいので注意をうながされた戒めです。
 飲酒は「遮」であり、それが即、悪行となるのではなく、酒を飲めば、えてして「1」から「4」までの行為が生じやすいので、注意せねばなりません。
 お大師様は、さらに説話を紹介されました。

「迦葉仏(カショウブツ…お釈迦様より先に悟りを開いた方の一人)のときに、在家の男性の信者がいた。
 かれは飲酒することによって他人の妻を犯し、他の者の鶏を盗んで殺した。
 他人がやって来て問うのに、盗まないといって、嘘の罪を犯した。
 このように(飲酒は)よく四つの罪悪をつくるのである。」(筑摩書房「弘法大師全集」より引用)

 人類の歴史と共にある酒そのものが毒なのではありません。
 酒を百薬の長として上手に愉しむか、酒に負けて人生を壊すか、それは一人一人の心がけ次第です。

 お大師様の書かれたものをひもときながら、ダライ・ラマ法王の言葉も思い出します。

「利他と空(クウ)を併せ持てば、これほどすばらしいことはない」

 心から他のためになりたいと思えれば、自分のことについての不平不満はなくなります。
 自分の心と身体を含め、すべては因と縁によって成り立っており、一瞬たりとも止まらずに変化し続けていると心から思えれば、つまらぬこだわりはなくなります。
 
 ここを目ざしていたはずの僧侶が、それも61才にもなって殺人事件を起こすとは……。
 私たちの愚かさ、哀しさに打ちのめされます。
 でも、今日も法務に邁進します。
 皆さんがそれぞれの持ち場で懸命に生きられるのと同じく……。
「一心祈願、法界平等利益」
(一心に祈願します、あらゆる生きとし生けるものの住む世界へ遍く仏神のご加護がもたらされますよう)





 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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