コラム

 公開日: 2013-04-05  最終更新日: 2014-06-04

日本人の生活と心の根を守りたい ─河相一成教授の指摘について─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 4月5日、河北新報は、東北大学名誉教授河相一成氏(80才)の『国家主権 崩される恐れ』を掲載しました。
 TPPは関税ゼロを目ざすことを基本としており、農業や医療や保険制度といった日本人側における〈聖域〉を確保できる根拠はどこにあるのかという指摘です。
 おおよその内容は以下のとおりです。

1 安倍首相は「オバマ大統領と会談し、TPPは聖域なき関税撤廃を前提としないことを確約した」ことを頼りにしているが、それで大丈夫か

 そもそも、TPPは関税ゼロを目ざして発足したものであり、首相自身も3月15日、「すでに合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくりかえすことは難しいのは厳然たる事実」と述べており、矛盾である。
 アメリカでは、国際協定に対する権限は大統領にはなく、議会が握っているので、大統領の権威だけで日本の主張を通しきれるはずはない。

2 日米共同声明に「TPP(経済同盟)交渉参加に際し、全ての関税を撤廃することを求められるものではない」とあるが、外交交渉では自国の主張を述べることが常識であり、だからといって、関税撤廃の例外を保証されるものではない

 平成24年3月に内閣官房がまとめたTPP事前協議報告書に「全てを自由化交渉の対象としてテーブルに載せなければならないことは、各国とも認識を共有していた」とあり、安倍首相も3月7日の衆議院予算委員会で「判然としない部分もある。引き続き情報収集したい」と述べている。
 関税には「関税自主権」という国際ルールがある。
 それは世界各国の「経済主権(国内の経済保護の権利)」「国家主権(自国のルールを守る権利)」を尊重するという意味であるが、TPPはそれらを全面的に否定している。

3 ISD条項(外国企業が損害をこうむった場合、その企業が相手国を訴えることができる仕組み)によって、国家主権が破壊されるのではないか

 例えば、A国の輸入食料品に含まれる食品添加物が日本で承認されていない場合、消費者が買い控えすればA国の関連企業は日本政府に損害賠償を求めることができるという仕組みである。
 仲裁は世界銀行傘下の国際投資家紛争仲介センターで行われるが、世界銀行の歴代総裁、事務総長はアメリカ人が占めている。
 仲裁判事三人は当事国双方から一人づつ、後の一人は両者の合意で決めるが、合意できない場合は事務総長任命になる。
 現在までアメリカが提訴した108件のうち、アメリカ敗訴はわずか22件である。


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 政権を担当している政府は、当然、安全保障などを総合的に考えてTPPの処置を進めているはずです。
 だからといって、交渉に参加した場合の成り行きについて、あまりに政府にとってつごうの良い予測だけを発表していては、原発事故の二の舞になりかねません。
 原発事故は、推進という国策の方向にそってすべてがつごうよく組み立てられ、危険性の判断や安全対策が後手のまま進められて来たために、もたらされました。
 TPPも、同じように参加ありきで進めて本当に大丈夫なのかと考えている国民は、河相教授ならずとも、少なからずおられるはずです。

 しかも、大丈夫かと心配されているのは、国のありよう、私たちの文化の色合いを大きく変えかねないという点です。
 誰しもが「美しい自然を守ろう」と言いますが、本当に守るべきものは、実際に美しい自然と共に生きる私たちの美しい心であり、互いに支え合う潤いある暮らしです。
 狭い島国にあって、私たちは山と海の間にあり、山と海に守られ、山と海の恵みによって生きる者として文化を育み、伝えて来ました。
 農業などの第一次産業は、文化の根となってきました。
 狭い地域で肩寄せ合い、互いに支え合う心で医療や保険の仕組みを成熟させてきました。

 今でさえ、第一次産業は青息吐息です。
 今でさえ、医療も保険も、年金などとと共に、この先の成り行きが不透明です。
 そして、私たちは今、地産地消などの考えも取り入れつつ、地域住民が直接、暮らしや文化を守って行く道筋を模索し始めています。
 ほとんど避けられないであろう地球規模の食料危機に対して、地域の叡智をもって乗り切る準備にとりかかっています。

 こうした状況下にあって、それぞれの国のありようという多様性を敵視するTPPの思想は、さまざまな工夫を根こそぎ破壊する危険性を持っています。
 と言うよりも、「原則としてすべての品目を関税撤廃交渉のテーブルに載せる」TPPは、そもそも多様性の破壊こそが目的なのです。
 前述の例のとおり、もしも、ある町で「米はなるべく、皆で作った田んぼから、皆で刈り取ったものを分け合い、食べることにしよう」と決めて輸入米を買わなければ、ISD条項によって訴えられ、大変な目に遭いかねません。
 至れり尽くせりの日本ですら、救急患者のたらい回しは社会問題になっていますが、巨大な保険会社や医療機関が乗り込んできて、自由競争の結果生じる格差は当然とするアメリカ型の保険や医療の制度になれば、保険料や医療費を払えない人たちは、救急車にすら断られることになるでしょう。
 払える日本人が払えない人を平然と見捨てる光景は、想像するだに恐ろしいものです。
 本当にそうなってよいのでしょうか?

 選良とされる議員の方々には、交渉に参加した場合にあり得る未来像を、よき面も悪しき面も隠すことなく堂々と議論し合っていただきたいものです。
 マスコミの方々にもまた、権力やスポンサーにおもねない姿勢を保っていただきたいものです。
 いかに世界へはばたく技術力や芸術的才能があるとしても、私たち日本人の生活と心の根は、互いを思いやりながら肩寄せ合って生きるところにあるのではないでしょうか。
 根を守り、原発事故に至った成り行きをくり返さないために、よく考えてみましょう。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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