コラム

 公開日: 2013-04-21  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その51)─師の影を踏んではならない─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 江戸時代まで寺子屋などの教材として広く用いられていた『実語教・童子教』を見直しましょう。
 一度聞いたら忘れられない警句などがふんだんに含まれています。

「一日の師たりとも疎(ウトン)ぜざれば
 况(イワン)や数年の師をや
 師は三世(サンゼ)の契り
 祖は一世の眤(ムツビ)
 弟子七尺(シチシャク)を去つて
 師の影を踏むべからず」

(たった一日、師となって何かを授け指導してくださる方をも疎んじてはならない
 ましてや、数年もの間、師となる方なら、なおさらである
 師弟関係は一代だけにとどまらず、過去・現在・未来へとつながる深い縁である
 親子関係は一代だけの縁である
 弟子はそうした師を敬い尊び、七尺は後へ退ってつき従うべきであり、
 まちがっても師の影を踏むなどという非礼があってはならない)

 私は、子供の頃、「師の影を踏んではならない」との教えが、なぜか深く印象に刻まれていました。
 当時、師といえば学校の先生でした。
 子供たちは当然、ワイワイと先生の側に群がり、実際は影を踏みつけ放しでしたが、私の心はいつもそうした親しい先生に自分とは桁外れの何かを見つけ、密かに尊敬していました。
 小学校1年から2年までを受け持たれた女性のK先生は、ぽっちゃりした丸顔で無限に優しく、教室はいつも陽光の中にあるように暖かく活気に満ちていました。
 3年から6年までを受け持たれた男性のS先生は長身痩躯(ソウク…やせ形)で、外には静けさを漂わせながら内には熱い確信のようなものを蔵しておられ、私は「ライフルマン」に似ていると感じていました。
 テレビ番組「ライフルマン」は、チャック・コナーズが主演するお決まりの西部劇でしたが、とても流行っていました。
 私が先生を明確に〈自分より遥かに上のレベルの人〉と感じとり、自然に礼を尽くしていたのは、こうした教えが頭にあったからなのか、それとも先生方の人徳が教えを再認識させたからなのか、そのあたりはよくわかりません。
 半世紀以上も過ぎた今、ふり返ってみれば、真実を含んだ教えはいつまでも心にとどまり、周囲の情報に反応し、取捨選択の判断をさせ、取り込んで熟成させるべきものを見逃さないための力となっています。

 しかし、一方で、自分の人生には、師となってくださった方々への幾多の無礼、非礼、恩知らずの行為もあったことを知っています。
 学校で、あるいは地域で、あるいは娑婆の仕事において、そして出家後の世界においても、たくさんの師とめぐり会ってきましたが、弟子としての礼を尽くし切れていません。
 たとえば、昨日の例祭で一緒に読経してくださり、お茶の席ではいろいろと人生観などを語ってくださった檀信徒の皆さんも、まぎれもなく、かけがえのない師です。
 み仏と一如である皆さんへお仕えするのは僧侶の務めであり、皆さんとの接触が「僧侶や寺院はいかにあるべきか」を考えるために欠かせない縁となって、こんにちの自分と当山を成り立たせています。
 私は、心では「師の影を踏んではならない」と思いつつ、法要などの修法においては、み仏と一体になった導師へ合掌していただくなど、思いとは反対の形をとらざるを得ません。
 そうであればこそ、この教えはまともな僧侶であるための決定的な重しであり、これが外れた瞬間に奈落の底へ堕ちることはよくわかっています。
 教えが心にあってなお、未熟な足どりで生きていることを思うと、教えがなかったならばどうなっていたか、想像すらできません。

 今の先生方は限りなく〈友だち目線〉で児童や生徒に接触することを求められ、同時に、保護者からは容赦ない批判の目でチェックされています。
 子供たちが混乱し、先生方が心を病みもする現実を直視し、今のやり方が本当に子供たちの心で大切なものが育つための最も有効な方法であるかどうか、古人の智慧に学びながらよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 今日の守本尊様の真言です。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0
 



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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