コラム

 公開日: 2013-05-06  最終更新日: 2014-06-04

【現代の偉人伝】第173話 ─重症を負いながら犯人を追った女性巡査─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 5月5日、国民栄誉賞を受けた長嶋茂雄、松井秀喜両氏の授賞式が報じられ、野球ファンならずともお二人の偉大さを改めて感じた方々も多かったことだろう。
 もちろん、私もプレー・お人柄共に感服するしかないが、こうしたまばゆいばかりの光へ人々の目が向いているときには、心に灯って消えない小さな光を思い出す。
 忘れぬうちに、忘れ去られてしまわぬうちに、書きとめておきたい。

 その一人が、2月の夜、重症を負いながらも強制わいせつ犯をつかまえた女性巡査(22才)である。
 はからずも、5月6日付の産経新聞が『視線』の欄で採りあげている。

 2月22日午後8時頃、愛知県警半田署員が連続強制わいせつ事件を警戒して巡回を行っていた際、不審な男に気づいた。
 やがて曲がり角の向こうから女性の悲鳴が聞こえ、巡査がかけつけたところ、男は逃走し、500メートル離れたアパートの陰で鉢合わせした時に巡査を2回殴り、また逃走した。
 それでも巡査は男を追ってまた走り、さらに二回殴られて転倒し、鼻血で制服は朱に染まったがさらに200メートル追いかけて首に飛びついた。
「警察だ!待て!」。
 身長170センチ、70キロの男(25才)はついに観念した。
「もう逃げません」。
 巡査は鼻の骨を折っており、全治1カ月の重症だった。
 以後、同種の事件が十数件も続いていた半田市内は平穏を取り戻した。

「目の前に同じ状況があれば、他の警察官も私と同じ行動をとったと思う。
 決して特別なことをしたわけではなかった」。
 こう言う巡査には苦い経験があった。
 22年1月に同署に配属されてすぐ、庶務質問に失敗し、少年に逃げられたのである。
 この件につき、『視線』は書いている。

「数百メートル追ったが、引き返した。
 どこかに『男の足には追いつけない』という思いがあった。
 上司に見透かされていた。
『女の足では無理と思ったのか。
 それで市民を守れるのか』。
 女だから、と甘えていた。
 心底、自分を恥じた。
 ただならぬ気迫の源はここにあったのだ。」

 そして巡査は、すぐ後、汚名を挽回して余りあるほど見事に役割を果たした。
 巡査は女性であるがために、強制わいせつ事件や強姦事件の被害者と正面から向き合い、調書の作成に当たったりする過程において、犯行を憎む正義感が膨らんでいたそうだが、犯人である大柄な男に重ねて暴力を受け、骨折するほどの傷手を負ってなおかつ追いかけ続けた心理は、容易に想像できない。
 質問に対して「怖いと思う余裕もなかった」と答えるほど強い思いとは……。

 あらためて、〈人〉を考えさせられた。
 社会の安全を守るシステムの一つとして警察がある。
 では、今回、そのシステムが有効にはたらいたからこそ犯人の逮捕に至ったのかといえば、それは事実の半分でしかない。
 巡査が、依然として〈取り逃がした人〉のままであったなら、今回も逮捕はできなかったことだろう。
 巡査が心身をレベルアップし、〈取り逃がさない人〉になっていたからこそ、役割を果たせた。
 最近、東京では老弁護士の横領事件があった。
 トラブルを防ぎ個人の財産を守るための後見人制度を担う人による背信行為である。
 岩手県山田町では、震災からの復興をはかるNPO「大雪りばぁねっと。」が破綻した。
 数億円にものぼる町からの助成金を放漫経営で煙にした背信行為である。
 また、ローマの空港では航空会社の職員19人、ミラノとナポリでも10人が、乗客の荷物から貴重品などを盗んだ疑いで逮捕された。
 乗客にとって他に自分の荷物を守る方法のない状況における背信行為である。

 実に、私たちの社会は〈人〉に対する〈信〉によって成り立っている。
 もしも、一人一人が社会人として信じられないレベルであれば背信行為が蔓延し、社会は成り立たない。
 それは科学と倫理の関係にも似ている。
 いかに優れた治療薬であっても、使いようによっては殺人の手段になる。
 いつの時代も、地球上のどこであれ、社会と人の世は、〈人間がいかにあるか〉にかかっている。

 弱冠22才の女性巡査は、今の日本がまだ、信頼に足る社会であることを示してくれた。
 そうでなくなりつつあるのではないか、という疑念へ、「まだ、大丈夫」と答えてくれた。
 私たちが朝、無事に起きられ、町を自由に歩いて生き、安全な眠りを得られているのは、こうした〈信頼をつなぎとめる〉無数の行動に支えられているという事実を示している。
 心からありがたいと思う。
 社会の隅々にまで監視カメラが設置されねばならない状況になってしまった今、本当にありがたくてならない。
 彼女の行動は、見られているからやるといったものではないだけに、いっそう、そう思う。
 後の時代を信じさせてくれることに感謝も尽きない。

 今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
 https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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