コラム

 公開日: 2013-05-07  最終更新日: 2014-06-04

宗教的救いと宗教を超えた救いについて ─仙台稲門会にて(その1)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 5月7日、仙台稲門会の月例会でささやかなお話をします。
 自分が救われるまでの体験談、そして、ダライ・ラマ法王著『宗教を超えて』のご紹介です。

1 仏教が身近なものとなるまで

 幼い頃、福島県の山里で、幟を立てる葬列に参加し、三角の白い頭巾を着けて歩きました。
 土まんじゅうがあちこちにある丘で「下にはご先祖様がいる」と聞き、ここは別世界なんだと思いました。
 仙台市の家には仏壇があり、祖父母もいましたが、別段、拝むよう強く言われた記憶はありません。
 仏壇の前に座ることは、朝、起きたら顔を洗うような、淡々と営まれる日常生活の一部でした。
 お祭に連れて行かれた神社の境内では、出店のアセチレン灯の後にある闇が気になったものです。

 高校を卒業して仙台市を離れるまで、神様も仏様も慣習の範囲でした。
 ところが、受験に失敗してから急に、宗教が身近になり始めました。
 挫折は「自分本来の居場所はどこか?」という大きな疑問をもたらしました。
 新聞大好き少年で、社会のできごとが最大の関心事だったのに、いつしか、自分そのものに焦点が移っていました。
 鈴木大拙全集や西田幾多郎全集を読み、あちこちで座禅を組んだり、新興宗教へ出入りしてみたりしても、何もつかめないまま、家庭の事情もあって失意の帰郷となりました。
 親から嗣いだ仕事はそれなりにやりましたが、心は根無し草のまま倒産し、無一文となりました。
 その過程で、人生の師と思っている方からさる寺院を紹介され、それまで出会ったことのない〈活きた行者〉とめぐり会い、在家のまま、得度をしました。
 倒産後の道はもはやたった一本しかなく、墨染め衣で托鉢を始めました。

 こうして、〈居場所〉をつかむ手段の一つとして近づいた宗教が、いつしか、生きることそのものになっていました。
 自分で仏教を選んだり、真言宗を選んだり、寺院を選んだりした意識はまったくなく、師によるお導きでまた新たな師に巡り会い、師のおられる寺院が文字どおり救いの場となっただけです。
 すべてが凡夫のはからいを超えたみ仏のお導きであり、過去世のカルマと現世でのカルマとがあいまって、こうした運命を創ったのであろうと思います。



2 宗教によってどのように救われたか

 師との出会いにおける第一印象は、「本ものがおられる!」でした。
 それまでに、伝統と格式のある寺院の方や、難行苦行を何年もおやりになった方や、大学の教授や、新興宗教の責任者など、さまざまな方々にお会いしていましたが、修行の成果である法力を身につけ、あらゆる疑問に答え、現に、目の前で困っている人々の相談相手になり法力で役立っている方は初めてでした。
 私にとっての信心は、信心のある人への信から始まったと言っても過言ではありません。
 それだけに、人生相談などで、聖職者の言動に関する不信を耳にすると、すぐに、〈仏法の危機〉と感じてしまいます。

 信じられる人の説く教えは、すんなりと心へ届き、理解や納得のできない疑問もまた誠意ある指導によって解消されて行く中で、お釈迦様とお大師様の説かれた宗教がいつしか血肉となりました。
 そして、宗教と一体になって生きているうちに、宗教体験は人生体験となり、法力と智慧と両面への意欲が増し続け、こんにちに至っています。

 もしも師と出会わなかったなら、もしも、今、学んでいる教えと出会わなかったなら、きっと倒産に次ぐ、第二、第三の破綻を避けきれなかったに違いないと思えてなりません。
 たとえ政治にかかわっても、商売をやっても、何をやっていたとしても、あのままの自分であったならどこかの時点で大失敗をやっていたであろう、しかも、政治信条や経営などと関係のない些細な問題で大きな失敗をやらかしていたはずです。
 だから、他人の不祥事を見聞きすると、「自分が彼であったなら、そうしていたかも知れない」と心底、思います。

 古人の教えに「水へ落ちた犬へ石を投げてはならない」があります。
 また、罪を犯した女性を前にしたイエスは、周囲の人々へ「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」と言いました。
 悪へ対する阿修羅のような攻撃的姿勢を持っている一方で、自分の心から悪へ傾きかねない可能性が払拭されていないだけでなく、意識せぬ間に悪行を犯してしまう愚かさがあることを知っているので、悪〈行〉や悪〈因縁〉や悪〈業(ゴウ)〉は砕破したいと願いつつ、悪〈人〉は反面教師としても、石つぶてを投げつける気にはなれません。

 こうして、宗教は、私を悪行へ赴かせない力になっています。
 また、他人様へ対するいささかの寛容的姿勢も、もたらしています。
 み仏へお仕えする身となっている今は、み仏のご加護によって救われる方がおられること自体、私にとって大きな救いとなっています。

 たとえば最近、こんなことがありました。
 関西在住の信徒さんが、メールで如意宝珠(ニョイホウジュ)のご寄進を申し出られました。
 その一文です。

「私の宝珠が聖地にみなぎる救いの力の一端になりますように。」

 小さなクリスタル製の宝珠はご本尊様の正面にある宝塔へ納められ、永久に供養されます。
 願いをかける方がご加護を受けるだけでなく、当山へ足を運ばれる方々や心を寄せられる方々すべての救いにもなるのです。
 そのことを理解し、信じ、苦しい状況にあるご自身を全面に出さず、ご本尊様のお力が増大して広く皆さんのためになりますようにと願いをかけられました。
 たとえ文章は短くても、私の人生を丸ごと救ってくださるみ仏の言葉であると感じられます。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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