コラム

 公開日: 2013-05-10  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第135回)─寺院はどう変わったか?─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。








 ある勉強会でご質問がありました。
「東日本大震災の前と後で、どう変わりましたか?」
 当山は宗派に属さない単立寺院ゆえ、自分の山寺を守るので精いっぱいであり、このテーマで他の寺院の方々と話し合ったことはありません。
 だから、当山の率直な思いを申しあげました。
 一つは文化の基底について、もう一つは思いやりの復活について、そしてもう一つは人間の分際の認識について。

○日常生活が根底から揺るがされて思い出した日本文化の基底をなしている伏流水のようなものを大切にして行きたい

 あの日以前は、伝統仏教の法務について「~は要らない」の大合唱でした。
 いわく、葬式は要らない、お墓は要らない、戒名は要らない、──。
 それにはいくつもの理由がありました。
 寺院のあり方、続く不景気、高齢者の孤立、功利主義的感覚の広がり、家族の崩壊に伴う祭祀を受け嗣ぐという姿勢の希薄化、などなど。
 どの問題も震災後になくなったわけではありません。
 しかし、今や、合唱はほとんど聞こえず、かつてタクトを振っていた人々の中には、早くも、別なタクトを光らせ始めた人もいます。
 なぜか?
 失われたことによって、忘れられていた価値が顕わになったからです。
 それはまるで、刺激的な芳香を求めていた人が、〈常々、清浄な空気があってこそ〉と気づいたようなものです。

 津波で最も大きな被害を受けた地域は、以前、托鉢で一軒、一軒とお訪ねしていたのでわかっていますが、そもそも、前述のような合唱に付和雷同する人々は少数派だったはずです。
 そうした方々にとって災害は、人や家や車や仕事を失っただけでなく、ありがたいことを知り大切にしていた清浄な空気を失ったようなできごとでした。
 家族や地域住民の紐帯、町の安全、ご先祖様の供養、家や地域の仏神の祭祀などです。
 失い、取り戻せなくなった方々の悲嘆が、意義や価値を忘れかけていた人々の胸を撃ち、「要らない」の合唱を少なくとも声高にはさせなくなったと考えています。

 もちろん、被災された方々の心をおもんばかる人間としての慎みが唄わせないという面も強く、前述の〈要らない理由〉がなくなったわけではありません。
 ただ、タクトに乗せられるといった状態から離れた今、一人一人があらためて考える必要があるのではないでしょうか。
 亡くなった人をどう送るかは、思いつきで決められるものではありません。
 人間の尊厳にかかわる行為であり、人間は、地球上のそれぞれの地域で、それぞれに苦しみ、考え、安心を得てきました。
 私たちに伝えられている葬法には、人間の歴史が始まって以来、連綿といのちと心をつないで来られた膨大なご先祖様方の思いが込められています。
 そのことを考えると、送る仕事の一端を担わせていただいている者として、あらためて鎌首をしっかりもたげさせられます。

 また、被災した各地で氏神様のお社が再建されたり、祭が復活したりして、住民の方々へ未来につながって行く安心感をもたらしています。
 これまで大事にしてこられた方々が喜ばれる笑顔は、近くに神社があってもあまり関心のなかった方々にとっても何ごとかではないでしょうか。

 早稲田環境塾編『京都環境学』は書いています。

「日本の神道と仏教は環境にやさしい宗教です。
 神道では、神社は社殿よりその背後の杜や山が重要であると言われます。
 神はその豊かな自然の中に鎮座しているからです。
 神を崇めることは即ち自然保護と同義語なのです。」

「天台教学においては、自然に対し、『悉皆成仏』の思想を説き、草木成仏が盛んに主張されました。
 一方、空海も法会において、施主のみならず、獣、鳥、魚、虫にいたるまであらゆる動物の成仏を祈りました。」

 まことに、私たちに身近な神様も仏様も、そして誰一人として例外なくそのいのちと心を受け嗣いでいるご先祖様方も、私たちの生活・文化のみならず、一人一人がいのちを承け、生きている国土そのものとも切り離しようがありません。
 その伏流水のようなありがたさ、清浄さ、豊饒さにあらためて気づいた以上、しっかりと守り、発展させ、伝えて行くことが災害で亡くなられた方々への供養であり、苦しんでおられる方々への一つの支えとなるのではないでしょうか。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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