コラム

 公開日: 2013-05-21  最終更新日: 2014-06-04

リンカーンの実像は? ─岩波文庫『リンカーン演説集』と映画リンカーン─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 5月13日の朝日新聞に掲載された『人種差別主義者だった?リンカーン』を読み、子供時代に学校で習った歴史的イメージとのあまりの落差に勉強不足を痛感させられました。
 植え付けられた固定観念「奴隷解放の父」は一体何だったのか、岩波文庫の『リンカーン演説集』さえ読んでおけば、と情けなく、ため息をつく思いです。

 以下は、朝日新聞の記事におけるリンカーンの言葉です。

「この戦争における私の至上の目的は、連邦を救うことにあります。
 奴隷制度を救うことにも、それを滅ぼすことにもありません。
 もし奴隷は一人も自由にせずに連邦を救うことができるのなら、私はそうするでしょう。」
「私は現在もこれまでも白人と黒人の間に社会的・政治的平等をもたらすことを好んだことはありません。」
「私はここにいる誰もと同じように、白人に与えられている優等な地位を保持することを好んでいるのです。」

 以下は、岩波文庫の文章です。

「『黒人を有権者や陪審員にしたい』と思ったことは、1度もありません。
『彼らを公職につかせよう』とか、
『異人種間の結婚を許そう』などと思ったこともありません。
 私は、ここにいる誰もと同じように、白人に与えられている優等な地位を、保持することを好んでいるのです。
 でも白人たちが、優等な地位にいるからといって、『黒人たちの全てが、否定されて良い』ということには、ならないのです。」

 政治家リンカーンの願いは南部の地域でつくられた南部連合を解体し、合衆国へ統合することであって、奴隷解放は、超えられないハードルを課して南部連合を潰す目的に使われたというのが真相らしいのです。
 日本が太平洋戦争に突入せざるを得なかったABCD包囲陣(対日経済封鎖)、そして、事実上の最後通牒となったハル・ノートを思い出します。
 当時の駐日アメリカ大使ジョセフ・グルー氏は、後日、こう述べています。

「もし日本が、南方における主導権を軍隊によって追求しようとするならば、日本は直ぐにABCD諸国と戦争になり、疑問の余地なく敗北し、三等国になるであろう」

 ABCDとは、アメリカ(America)、イギリス(Britain)、オランダ(Dutch)、中華民国(China)です。
 正義は自分にありとして相手へ譲歩できない条件を突きつけ、相手を〈やむなき一戦〉へと導いて壊滅させるという政治的・軍事的方法を用いたのです。

 さて、南北戦争後、北部諸州は奴隷を率先して解放するどころが渋ったのが実情であり、冒頭の記事は都留文科大学教授大森一輝氏の見解を伝えています。

「科学という名のもとに、黒人は生まれつき怠け者だとか、白人より体力がないといった議論がまことしやかに行われていた。
 当時の政治的文脈の中では、人種平等に触れること自体、難しかったんです」
「解放で形の上では平等になったなめ、逆に黒人を日常的に抑えつけなければならなくなった。
 物理的・精神的圧迫感は時代が下るに釣れて増したと考えられます」

「奴隷解放宣言」は1863年、人種差別撤廃のための公民権法が成立したのは1964年です。
 記事はこう締めくくられています。

「南方戦争の死者は第二次世界大戦の米軍死者を上回る62万人。
 都市の徹底破戒や殲滅戦が行われるなど近代戦の幕開けとなった。
『正義の戦い』を声高に叫ぶ点など、米の戦争の原型がそこにできあがったとみる研究者もいる。
 リンカーンこそ、現代に至る、アメリカの光と影を培った大統領と言えるのではないか。」

 今、日本では映画『リンカーン』が上映されています。
 頭のどこかに岩波文庫の『リンカーン演説集』を置き、スティーヴン・スピルバーグ監督の思いなども想像しながら複眼的に楽しめば、興趣が増すかも知れません。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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