コラム

 公開日: 2013-05-25  最終更新日: 2014-06-04

迷いに惑わず、苦しみに翻弄されない道 ─四国霊場巡りによる自己確認─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈櫻井恵武著『四国名刹』より転写加工したお大師様〉

 最近は、四国八十八か所の巡拝が盛んに行われるようになり、歩く人々の目的も多様化していると言われています。
 四国霊場はまぎれもなく聖地です。
 心身の構えをしっかりさせてそこへわざわざ足をはこぶ方々は、きっと、それぞれの覚悟を胸に秘めておられることでしょう。

 さて、巡る目的の一つは、自己修養です。
 日常生活に翻弄されたままの自分ではなく、自己中心の穢れを祓い、み仏の子としての真姿を取り戻そうとするのではないでしょうか。
 また一つは、当病平癒(トウビョウヘイユ)や身体健護、あるいは家内安全や世界平和など、具体的目標の達成です。
 もう一つは、伴侶や大震災の犠牲者など、先に行かれた御霊の供養です。
 もちろん、僧侶にとっては、帰依とする心と修法の勉強を深め、未熟な法力を高めること以外の目的はありません。
 
 こういった中で、文化人類学者故岩田慶治氏は巡礼について、「一種の自己確認の手続きであると同時に、自分の所在を納得する手続き」であると鋭い指摘をしておられます。
 巡礼もしくは巡拝とは、巡りつつ礼拝するまぎれもない宗教行為です。
 それが自己確認であるとはいかなる意味か?

 巡拝する聖地は、この世にあるとはいえ、仏神がおわします別世界です。
 だからこそ、礼拝が行われます。
 礼拝のない巡拝はあり得ません。
 では、巡拝において各札所のご本尊様とお大師様へ捧げられる礼拝とは何か?

 礼拝は帰依に始まり、帰依(キエ)の確認に終わります。
 帰依とは、自分のすべてを投げ出して依りどころである仏神へ帰すること、つまり、鎧兜をまとったり美しく着飾ったりという世間的な衣を脱ぎ捨てて裸になり、聖なるものに導かれ、溶け込むことです。
 いつも頼りにしている世間的なものから解き放たれるところにこそ礼拝の重要な一面があり、それをくり返す巡拝を重ねているうちに、いつもの自分には起こりえないことが起こり、いつもの自分にはできないことができ、いつもの自分にはわからなかったことがわかるようになります。
 投げ出して初めて、〈今、ここにいる裸の自分〉に気づき、その自分になって生きれば、自分の所在は〈今、ここ〉にしかないことがだんだんに納得できることでしょう。

 こうして、いかなる目的を持った方も、至心に礼拝しつつ巡り、巡り終えてからも〈つかんだ自分〉を生きれば、迷いに惑わず、苦しみに翻弄されなくなることでしょう。
 憂き世に迷いと苦しみのない人生はありません。
 利他(リタ)に生きる菩薩(ボサツ)もまた、同苦(ドウク)すなわち、他者の苦しみを我が苦しみとするところからしか役割を果たせない以上、苦しむ存在です。
 聖徳太子が最も尊んだ『維摩経(ユイマギョウ)』の主人公である維摩居士(ユイマコジ)は、文殊菩薩(モンジュボサツ)と対等の悟りを得てなお、「生きとし生けるものに病気がある以上、私も病気に罹るのだ」と明言し、病の床に伏します。
 問題は、迷いや苦しみをどうするか、迷い、苦しんだ自分がどうなるかという一点にあります。
 迷いに惑わずレ洞察力や判断力をベルアップし、苦しみに翻弄されず克服する智慧と胆力を得られるところにこそ、憂き世に生きる者の救いがあり、そのためには〈今、ここ〉に生きて在ることを〈つかんだ自分〉にならねばなりません。
 四国八十八か所の霊場を巡ることは、そうした意味で、まぎれもなく「一種の自己確認の手続きであると同時に、自分の所在を納得する手続き」に違いありません。

 当山の『みやぎ四国八十八か所巡り道場』は建設が始まったばかりです。
 仏天のご加護と善男善女のご芳志により、一日も早くこうした清めと気づきと力づけのパワーを持った聖地として完成するよう祈っています。

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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