コラム

 公開日: 2013-05-26  最終更新日: 2014-06-04

み仏のパワーは怖い? ─畏怖と安心と─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈『尊厳の芸術展』ガイドブックからお借りして加工しました〉

 日本に仏教が伝来してまもなく、敏達(ビダツ)天皇の時代に、大臣曽我馬子(ソガノウマコ)は百済からもたらされた二体の仏像を、私邸に建てた仏殿へ祀りました。
 しかも、出家させた三人の尼僧をお仕えさせました。
 次いで仏舎利(ブッシャリ)用の大塔も建てました。
 
 しかし、まもなく疫病が蔓延し馬子も倒れます。
 そこで、馬子の政敵物部守屋(モノノベノモリヤ)は天皇へ奏上します。
「馬子が始めた邪宗のせいです」
 恐れた天皇は意見を容れ、仏塔も仏像も破戒され、法衣をとられた尼僧たちはむち打ちの刑を受けました。
 ところが疫病は止まず、敏達天皇が崩御し、次の用明天皇も病気に罹ります。
 人々は恐れます。
「老いたるも若きもひそかに相語りていわく『これ仏像焼きまつる罪か』」
 用明天皇が当病平癒をみ仏へ祈ろうとした時、守屋は「異国の神に祈る」必要はないと反対し、対抗した馬子は僧侶を用意するという一触即発の中、用明天皇も崩御されます。
 今度は、自ら病気を克服した馬子が仏法守護を奏上し、馬子と守屋の勢力が激突する「丁未(テイビ)の変」に至って物部氏は滅ぼされ、仏教の信仰は認められました。

 伝来から35年、政争に翻弄されつつ日本に根付き始めた仏教の黎明期を眺めると、崇高なものへ対する恐れ、あるいは畏れについて考えさせられます。
 政争の面はさておき、守屋の側には、異国の神を祀れば日本古来の神々の祟りがあるという恐れがありました。
 一方、馬子の側には、仏像を粗末にはできないという恐れがありました。
 こうした気持は私たちへも確かに受け嗣がれています。
 数年前、ゴミが捨てられやすい場所へ小さな鳥居を建てたところ、効果覿面と盛んに報じられた時期がありました。
 現在ではどうなっているかわかりませんが、畏怖の念は私たちにとって自然なものであり、とても大切であると考えています。

 私たちはギリギリの場面で、あるいは、まったく不意に、異次元を感じ、その圧倒的にリアルな感覚は誰に否定されようもありません。
 そして、体験に含まれている畏怖が崇敬へと変化すれば宗教心になってゆきます。
 祈りが形をとれば、いつしか畏怖は背景に退き、お慈悲にあふれた対象として観音様もお地蔵様も拝まれるようになります。
 
 太平洋戦争中にアメリカで強制収容された日系アメリカ人の方々は、手の届く範囲のモノに工夫を加え、収容所内で数々の工芸品を作りました。
 その一部が、「尊厳の芸術展」として全国に披露されています。
 仙台市で公開された品々の中に、なぜか仏像はありませんでした(NHKの担当者に訊ねたところ、全貌を確認し学術的に選んだ展示会ではないので収容所と仏教の関係はよくわからないということでした)が、仏壇は見つけました。
 そこには畏怖と安心が確かに感得され、「彼の家族は朝夕、手を合わせ祈りを捧げました。」という説明分に頭を垂れる思いでした。

 心のアンテナを錆びつかせていれば、畏怖も安心もありません。
 時には先人たちの心へ思いを馳せ、アンテナを磨いておきたいものです。



 
 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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