コラム

 公開日: 2013-06-05  最終更新日: 2014-06-04

住職と同じくあの世を信じていなければ檀信徒やサポーターになれないか

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 信徒Aさんとのやりとりは続きます。
「住職の考えは、あの世の存在を信じていることが根底にあると思いますが、檀信徒の方々やサポーターの皆さんがそこまで考えているかどうかわかりません。
 きっと、かなり濃淡があるし、そこは信じられないという方もおられることでしょう。
 住職はそれでも『ご縁の方には平等に対応する』つもりでしょうか?」

「現に、サポーターの方にはさまざまな宗派の方がおられます。
 神道など他の宗教を柱とすることが家風である方や、〈家の宗教〉はそれとして自分は法楽寺の説く内容が共鳴できるという方など、皆さんの事情は千差万別です。
 それをふまえて、当山では、皆さんが当山へ要望されることごとに対してまったくわけへだてなく対応するのが当然であるとの信念で法務を行っています。
 理由は、何度もお話ししたとおり、み仏はお智慧とお慈悲により、万人の苦を抜き万人へ楽を与える存在であり、み仏を信じ、み仏により近づこうとして日々を送る行者である僧侶もまた、〈み仏の子である万人へお仕えする存在である〉からです。
 み仏が選り好みをされない以上、僧侶が皆さんの考え方やお布施の多寡で選り好みをすることなどあり得ません。
 平等に対応する以外の道はないのです。

 私の個人的事情としては、学生時代の苦い体験があります。
 何しろ若い時分ゆえ、理屈に走ったのです。
 ある時、Bさんと論争になり、私としては決して感情的になったわけではないのに話の途中で突然、Bさんの態度が変わりました。
 『君はそう主張するが、私はそうは思わない。私が君の話のとおりであると思えない以上、君が何を言おうと無駄だ』
 Bさんは石のようになり、私の心では怒りが燃え上がり、二人の間に解きがたいしこりが生じました。
 私は決してBさんを言い負かそうとして論争を始めたわけではありません。
 Bさんのちょっとした指摘について反論したことがきっかけでした。
 明解な反論の裏側には、このまま行けば人生を誤るのではないかというBさんに対する思いやりや危惧もあったつもりです。
 しかし、理論的には私の言い分が認められてしかるべき段階になり、Bさんは論争から降りました。
 そうなった理由は、後になって、いろいろと考えられました。
 角張った性格もからんだBさんの人生観が動かし難くなっていたこと。
 私への指摘には、学業上の対抗心や嫉妬があったかも知れないこと。
 そうした事実に気づかず、論理だけで話の穏やかな結末にたどりつこうとした私が幼なかったこと。
 論争にはまり込み、相手への思いやりを忘れ去ってしまったこと。
 事実上の絶交状態になり、省察のすべては後の祭でした。

 以後、私は、論理のみで話し合いの終着点を目ざそうとはしなくなりました。
 論理のみでことを進めるのは、頭の中だけです。
 だから、チベットの寺院に残る問答法という修行には心底、敬服しています。
 指導的立場の僧侶が手を叩きつつ、相手へ質問をぶつけます。
 文殊の智慧を実現するための修行なので容赦はありません。
 ただし、叩いた直後の手は必ず、作法どおり正確に右手を引き、左手を突き出します。
 右手を引くのは智慧を導き出すため、左手を突き出すのは相手を地獄などの悪しき世界へ堕とさないためです。
 もしかすると、私が体験したように、厳しく言い負かされた僧侶の心に怒りなどが生まれないよう〈止める〉法を修する秘伝が伴っているのかも知れません。
 純粋に論理をつきつめる修行は、まさに文殊菩薩の世界を目ざすものであり、中郷政府の弾圧によってチベットの寺院から失われつつあるのは残念でなりません。

 さて、こうした修行や科学的研究といった世界は別として、論理を唯一の拠り所として円満な人間関係をつくって行くことは至難のわざです。
 事情は、宗教団体にあっても変わりません。
 円満な人間関係のないよき教団などはありえず、教団の外へも円満な人間関係をもたらさない教団があるとすれば、いかがなものかと思っています。
 
 共に相手のために〈よかれ〉と願いつつ人間関係を続けようとするならば、論理以外にも大切な要素はたくさんあります。
 あの世と、この世と、来たる世を経巡る輪廻転生(リンネテンショウ)は、お釈迦様もお大師様もダライ・ラマ法王も大前提としており、因果応報の理に基づく仏教の根幹です。
 しかし、それを頭で理解するだけでなく、真に道理であると納得し、生き方の根底に据えることはそれほど容易ではありません。
 そこへ到達する前に、山ほどの疑問も、反対の考え方も、あるいは考えるのをやめる怠惰な気持も起こります。
 私自身、学生時代から40年以上、おりにふれて学び、考え、死を我がこととしてリアルに想像できるような年令に達し、ようやくつかみつつあるといった状態です。
 きっと、娑婆でさんざんやらかし、40才を過ぎて生き直し、浅学非才の細い足で罪滅ぼしの道程を歩む者だからでしょう。

 とにかく、お釈迦様とお大師様から伝わる伝統仏教の法灯を嗣ぎ、『この世の幸せとあの世の安心』を目ざす当山の法務に関心を持ち、頼りにされる方々は、〈住職の考えのとおりに自分も考えなければならない〉などと思わず、ご自身の正直な心のままでご縁の糸を結んでいただきたいと願っています。
 私の浅薄な考えはあくまでも皆さんの〈たたき台〉でしかありません。
 それを上手に使い、皆さんが、ご自身の力と、み仏のご加護と教えの力と、その周囲に網のように広がるよきご縁の力によって『この世の幸せとあの世の安心』に近づいていただければ本望です。
 Aさん、どうぞ、お気持をゆったりとされ、ご安心の上、末永いおつき合いをお願いします」

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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