コラム

 公開日: 2013-06-08  最終更新日: 2014-06-04

中国のカンニングと見当識の危うさ

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。








〈高橋香温先生の新作です〉

 6月8日付の河北新報は「カンニング対策に躍起」と題し、中国におけるモラルの欠如を報じました。

「912万人が受験する全国統一の大学入試に際し、各試験会場では金属探知機や指紋照合機を設置するなどカンニング対策に追われた。
 中国ではハイテク技術を使ったカンニングや替え玉受験が横行。
 当局は『市場最も厳しいチェック』と強調した。」

 受験生全員に精度の高い金属探知機での検査を義務づけており、手術によって体内に金属をはめ込んでいる場合は医師の証明書を提出しなければなりません。
 北京では市内の11か所に電磁波測定器を設置し、試験用紙を写し取って外部へ送り回答をイヤホンで聞くなどの犯罪を抑止せねばならないというから、ことは私たち日本人の想像を絶しています。
 
「江蘇省公安当局はカンニング機器を製造・販売していた組織を摘発し、使用する予定だった生徒約200人を拘束。
 吉林、湖北、四川各省でも同様の事件の摘発が相次いだ。」

 中国においては、生徒たちが善と悪を知らないまま高校を卒業することが常態化しており、お金を儲けるためなら善悪の見境を忘れる大人たちも珍しくはないようです。
 しかも、教育による人格の矯正が追いつかず、モラルの崩壊は、取り締まりという社会的に悪を排除する仕組みによってしか対応できない段階まで来ています。
 もはや、いかに生徒たちの人格を高めるかが問題なのではなく、犯罪と取り締まりのいたちごっこが主役という悲しい社会に堕しつつあるようです。

 こうした隣国の状況を他人事と無視したり、冷笑したりで済ませられる時代ではありません。

 さて、作家の辺見庸氏は『国家、人間あるいは狂気についてのノート』で語っています。

「人間が見当識(ケントウシキ)を失っているのではないかと、僕は最近しきりに思うんです。」
 僕はときどきいまある場や定位というものがわからなくなる。
 そのことは僕個人の老化や病いということと抜きがたく関わると同時に、それは他のことにも敷衍できる本質的なことなのかもしれないと思ったりする。」
「われわれは生きているのだと勘違いしているだけで、本当は死んでいるのかもしれません。
 それくらい見当識が危うくなっている。」

 見当識とは、今はいつであり、自分はどこにいるのか、などの基本的状況を把握する認識能力です。
 これが失われれば認知症などの病気の世界へ近づきます。
 Aさんが免許証の更新にでかけたところ、「~時~分を時計の長針と短針で書き表せ」というテストがあり、驚き憤慨されました。
 ところが、隣の席で混乱している人の様子が目に入り、愕然とし、自分もやがてそうなるのかと青ざめたそうです。 

「僕が大学で授業をいくつかもっていた時期に、学内サークルによる集団レイプ事件が起きました。
 僕は事件にかなり衝撃を受け、大教室のゼミに集まった学生たちに向かって『授業なんていいから、もっと怒れ』と言ったんです。
 すると皆『何を言っているんだ?』と不可解な顔つきをする。
 僕の声はやはり虚ろに教場に響いているだけでしたね。」

「ものごとの現れ方は一層であるはずはなく、ますます多層になってきている。
 その多層のなかに、じつは本質そのものを裏切る現象が出てきたりするということもあります。
 善いか悪いかという問題の立て方ではもうどうしようもないという気がしている。
 これが僕の悩みで、ほとんど迷路に入ってしまったようです。」

 人が人として社会をつくり生きてゆくためには、広範な共通認識が不可欠です。
 もしも共通認識から善と悪に関する部分が欠落すれば、モラルはなくなります。
 モラルを失った人間によっていとなまれる社会においては共通認識の基盤が崩れ、見当識が成り立たなくなることでしょう。
 それは、自分が居場所を失うことであり、他者と健全に関われないことであり、やがては自分そのものが失われることを意味します。
 ネットなど科学の発達によって、私たちは知識やモノや長い寿命を手に入れる能力を飛躍的に高めつつあります。
 一方で、迷惑メールによる国家的損失が数兆円にのぼるなど、他者の尊厳や社会的迷惑を省みない悪行もまた、飛躍的に悪質の度を高めつつあります。
 隠形流(オンギョウリュウ)居合の稽古ではこう誓います。

「我、権利より尊さを主張するは、人は万物の長であることを忘れず、自他の発展を願うがゆえなり」

 権利と義務といった当然の共通認識をわきまえているだけでなく、自己犠牲などに通ずる霊性の錬磨をめざすものです。
 中国のカンニング、辺見庸氏の見当識への不安、そして隠形流行者たちの錬磨。
 めくるめく時代になりました。
 徒手空拳でただ立っているだけでは、立っているつもりでも、すでに流されているのかも知れません。
 足元の崩壊にきづかずにいるだけで、気づいた瞬間、奈落の底へ堕ちるのかも知れません。
 他国に学び、賢者に学び、見当識をしっかり確認しつつ進もうではありませんか。
 
 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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