コラム

 公開日: 2013-06-11  最終更新日: 2014-06-04

真冬の味噌汁 ─NPO法人ワンファミリー仙台理事長立岡学氏の講演(補遺)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 寺子屋の講演でお聴きしたNPO法人ワンファミリー仙台理事長立岡学氏の言葉について、ふり返ってみます。

 氏は見知らぬホームレスの方々との関係性構築を「味噌汁飲みませんか?」「あめ玉要りませんか?」から始められました。
 関係性をつくったというよりは、そのように声をかけないではいられなかったのかも知れません。

「寒い時に温かい味噌汁があれば、誰でも飲むんです。
 冬の乾燥している時期にあめ玉があれば、誰でも嘗めるんです」

 托鉢で生きた日々を思い出させられました。
 雪の中を歩いていると、冷えが身体の奧へ奧へとしみ通り、弱点である腸がいつも気にかかるようになります。
 そんな時、お茶や、味噌汁や、おしるこをふるまわれると身体中の緊張状態が一気にほどけ、〈楽〉になります。
 もちろん、自動販売機が目に入らないことはありませんが、自分なりに行者のイメージを持っており、道行く人々の視線を集めながらゴクゴクと立ち飲みするわけにはゆきません。
 こうした点で、四国八十八霊場を巡拝したおり、自動販売機の前で墨染め衣の裾を乱しながらデーンと腰を下ろしていた若い行者にはとてもガッカリしたものです。
 彼の「ああ、疲れた」は手に取るようにわかります。
 しかし、「それを見せればおしまいだろう」と言いたくなってしまった記憶は消えません。
 イメージが確立していない行動は実に崩れやすいものです。
 だから、刃の上を歩くような気持で、あるいは糸をピンと張りつめたような状態で托鉢を行います。
 そうした中で、〈楽〉にさせてもらえる短い時間は、砂漠のオアシスのように感じられました。

 路上に暮らす方々は、きっと、托鉢行者などとは比べものにならぬほどの緊張条件を抱えておられることでしょう。
 味噌汁一杯がそれを解き去りはしないでしょうが、和らげることは疑いありません。
 それも、ほとんど受け入れを拒否できぬまま自然に……。

 氏がこれを実行されたのは、味噌汁による布施という方法を〈知っていたから〉だけではありません。
 知識は行動に際しての必要条件ではあっても十分条件ではありません。
 十分条件はきっと、裸になれたということではないでしょうか。
 自分を路上に暮らす方一人一人と入れ替えられたのでしょう。
 それは、哀しみを引き受け喜びを共にしつつ生きて来られた氏の表情に隠しようなく顕れています。
 氏は、どん底におられる方々を救う制度の不備を訴えるために関係省庁を歩いておられます。
 現在、目覚ましい成果を上げつつあるのは、たった一人の氏の口から流れる語る言葉にまぎれもなく路上で暮らす方々の生の声があり、静かなもの言いに何万人もの方々の思いが込められており、それが如実に相手へ伝わるからではないでしょうか。

 氏は本来、そこからしか入りようのないたった一つの入り口から、確実に他者の心へ入られました。
 ──見捨てられないから。
 必然的に、その後の物語が始まりました。

「どうしたら生きられると思いますか?」
 回答を得た。
「朝飯があれば、今日も生きて行けると思う」
 また、問う。
「それなら、朝に一汗流してから食べれば、朝ご飯がもっと、おいしくはありませんか?」

 氏が「生活困窮者が社会貢献し、労働による対価で生きられるのはすばらしい」と感じた社会的理想は、氏が裸になれたからこそ、凄まじいスピードで実現しつつあるのではないでしょうか。
 こうした成り行きには、やんちゃな若者が神主になり、やがて失望した体験と何か関係があるのかも知れません。

 今日の守本尊大日如来薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ