コラム

 公開日: 2013-06-13  最終更新日: 2014-06-04

幼少時の育ち方は自業自得と言えるのか? ─NPO法人ワンファミリー仙台理事長立岡学氏の講演(補遺

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 前回、「自業自得?」で故永山則夫について書きましたが、路上生活者の方々が即、犯罪者になると言う意図はまったくありません。
 路上で寝る境遇となる経緯に〈自力〉が及ばないとしか思えない部分があり、しかも、路上生活は、過酷という言葉などではくくれないものを抱えている一例として書きました。
 補足しておきます。
 
 永山則夫は、住む場所がなくなりました。 

「通る人がね、『この橋の下!』って言ってさ、クラゲをバーンって俺の顔に投げつけたりするんだよ。
 そうするとヒリヒリして痛いんだ。
 だからどっか目につかないとこ探して、穴、行ったよ、穴。
 桜木町のあたりに、いっぱいあるんだ、防空壕、昔の。
 中が寒くてね、ヒンヤリしていて、ちょっとおっかないんだけど。」
「俺、映画館っていうのは寝るとこだって思ってたから。
 もうエロ映画とか観てもね、そんな感情、全然、湧かないんだ。
 とにかく俺、布団に寝たかったのね。
 それで布団代、布団代って何とかしようと思ってやるんだけど、また、使っちゃう、パチンコとか。
 もう身体が疲れてクタクタでね、何もできないんだ。
 どこか休むとこ、怒られないで休むとこって……。」
「夜になるとね、淋しくなるんだよね、なんつうか……。
 周りにいる人、歯がなかったりね、ちょっと頭が弱いような貧乏くさいっていうか、そういう人ばっかりでしょう。
 俺、親父の影、追ってたもんね。
 それで、おじいちゃんみたいな人とばっかり話してたんだ。
 親父のような者と話がしたくて。
 みんな、新聞にくるまって寝ちゃうんだ。
 汚いよ……。
 こんな中に親父、死んでいったのかなあって。
 それで俺、『親父のようにはなりたくない』って思っちゃったんだよね。
 『ああなったら終わりだ』って。
 それで『親父のようには死にたくない』って、親父が10円持って死んだっていうから、それが非情におっかなくって、いっつも1000円くらい持ってたよ。
 独り……、って言うか、ずんずんずんずん、独りになっちゃったんだよね。」

 石川義博医師へ吐露した永山則夫は、部屋を出る時、つぶやいています。

「こんな話をしても、分かってくれるかなあ。
 無理じゃないかなあ」

 カルテには「目のまわりを赤らめ、涙ぐんでいた」とあります。

 永山則夫は、逮捕された当時をふり返ります。

「捕まってから、(マスコミに)バチバチやられてね、『なんか一言』ってやるでしょう、それで、『この野郎』って怒鳴りたかったけど、でも黙っててね。
 あとでね、刑事にお茶かけたらしいんだ、バーンって。
 『お前らに分かってたまるか!』って。
 それが本当に言いたかったことかも分かんない。」

 逮捕後、兄弟たちは姿を隠した中、一人で面会へ行った母親は、後に、石川義博医師へ語りました。

「──則夫、とにかく甘えたかったんだの。
 おら、分かってたけど、出来んかった。
 おら、今でも信じられねえ。
 金、ほしくてやったんじゃねえのにやったんだって、則夫、言ってるんだなって、おら思った。
 誰が何と言おうと、今に分かるって。
 金、ほしくてやったんじゃねえ。
 なんぼニュースに出ても、本に出ても、こんなん嘘だ、今に見てろ、分かるって。」
 
 他人様のお金を奪うのは卑劣でしかないが、いかにおちぶれても息子はそんな人間にはなっていないと言うのです。
 たとえ殺人という悪しき手段を用いようと〈意地〉を通さないではいられないギリギリの思いを母親は知っていたのでしょう。
 その意地は、心の飢えによってもたらされたことも……。

 通常は一ヶ月ほどで終える精神鑑定を278日もかけて行った「石川鑑定」にある締めくくりの文章です。

「則夫は、『二人も殺したから自分も死ななければならない』と死ぬ覚悟を自分に言い聞かせながらも、『俺はなんのために生きてきたのか。このまま死ぬのはくやしい。やりたいことを何一つ出来なかった。何か足りない。充たされない。何かに対して強いうらみが心のなかでうずまいてどうしようもない』と、まず強いうらみを自覚した。
 次いで、このうらみの原因を分析し、幼少時の家庭環境を真先に挙げている。
 鑑定人の調査でもこの犯罪の主因をなした則夫の恨みや憎悪は、人生早期の体験に根ざすことが諸事実から明らかにされたのである。
 精神医学的に見ても、則夫の家庭環境の分析は、則夫の犯行時の精神状態を解明するためにもっとも重要なる鍵を提供するものである。」

 立岡学氏は確信を持って指摘します。

「問題の根本的な解決法は、若いうちに手を打つことです。
 中高年になれば対処療法的な対応しかできないのが実態です。
 しかし、若いうちに皆が関わり、心身のきちんとした成長をうながせば、生活困窮者に陥る人々はかなり減るのではないでしょうか。」

 氏は、人間としての最後の砦である自尊心から生じる悲しい意地が固まり、膨れあがり、やがては爆発しないよう、早めに心の飢えを解消する社会的手立てが必要であると言っておられるのではないでしょうか。
 路上に暮らす方々の心が故永山則夫の行き着いた極限の切なさへ向かわぬよう祈らずにいられません。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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