コラム

 公開日: 2013-06-14  最終更新日: 2014-06-04

因果応報と自業自得について ─NPO法人ワンファミリー仙台理事長立岡学氏の講演(補遺)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈さて、進むべき道は?〉

 お釈迦様は因果応報を説かれました。
 原因があれば必ず結果が出るし、結果のあるところには必ず原因があるのです。
 しかも、この理が動かす範囲は、現世だけにとどまりません。
 無始の過去から無窮の未来まで変わることはありません。
 現在があるのは過去があったからであり、現在起こっていることごとのすべてが未来を決めます。

 ならば、私たちの営みはすべて〈自業自得〉ではないか?

 確かにそうです。
 しかし、自分が理不尽な目に遭った時、「なあに、自業自得さ」とのんびりできはしません。
 正義感が強ければ強いほど「なぜだ!」「おかしい!」と憤ったり、何かを変えようとしたりします。
 また、辛い目に遭っている人がいれば、「なあに、自業自得さ」と見て見ぬふりはできません。
 なぜでしょうか?

1 人間は原因と結果をすべて結びつける能力を持っていないから

 私たちは、誰かを叩けばそのままでは済まないことがわかります。
 しかし、もしも自分の発言が曲解されて誰かに伝わり、それが原因で人間関係がうまくゆかなくなったりした場合、そもそもの原因が自分にあったと気づけないかも知れません。
 自分がなぜ、今あるような人間に生まれてきたのかもわからないし、死後、自分の人生が自分に関わった他人様と自分のあの世とにいかなる結果をもたらすかもわかりません。

2 現実を観て判断する視点や基準や価値観が多様であり変遷するから

 幾多の嵐を乗り越えた老賢者となれば、すべてが因果応報と観え、自他に何があっても泰然と対応できるかも知れませんが、若いうちにそうなることは困難です。
 また、半世紀前まで、マラソンをする時に水を飲んではいけないことになっていたことも忘れてはなりません。
 今は、小学校からオリンピックまで、飲みものを用意せずに行われるマラソン大会はなくなりました。
 長距離を走ることと、身体を鍛える成果と、身体を壊す危険性との関係は、今の時点でわかる範囲までしかわかっていないので、因果の糸がどこにあるかを疑い、研究する姿勢は永遠に欠かせません。
 たかだか今、わかっている範囲で「因果応報」「自業自得」と終わらせるわけにはゆかないのです。

3 人間には理性と感情があるから

 自分の未熟さが原因で会社に損害を与えた場合、自業自得と減給に応じるだけで終われない場合があります。
 ろくに指導もしてくれない上司から「ばか者!」と叱られたばかりに、頭へ血がのぼり、上司の指導不足が原因であると言い張って会社へ抗議したり、裁判を起こしたりするかも知れません。
 また、他人の辛い話を聴いて自分も涙を流すのが人間であり、こうした情緒や感情のはたらきが行き来するからこそ、私たちは共存できます。
 事実としての因果応報や自業自得を観るよりも、結果としてもたらされた哀しみや苦しみにまず、対応しないではいられないのが、み仏の子である証拠です。
 
4 結果をもたらす影響力である「業(ゴウ)」には個人的な業と、社会的な共業(グウゴウ)があるから

 映画『奇跡のリンゴ』には、困窮したリンゴ農家の主人公木村秋則が出稼ぎに行き、お金を使うのがもったいないので公園で野宿していたところ、三人組のならず者たちにナップザックごと強奪されるシーンがあります。
 主人公は「何で……」と悔し涙にくれますが、生活に困窮している人々を食いものにするならず者がはびこる社会は、私たち皆がそれとは気づかぬうちにつくり出したものであり、被害者の個人的な因果応報とだけ考えることはできません。
 堀川惠子著『永山則夫 封印された鑑定記録』の核心もそこにあり、木村秋則と永山則夫の身に起こったできごとは、二人にとってのみ因果応報なのではなく、私たち皆が、悪行の発生をもたらした因果応報の糸の一本に関わっていることを忘れないようにしたいものです。

5 終わりに

 神職の資格を持つ立岡学氏が仏教哲理に基づく「共業」という思想を持っておられるかどうかはわかりません。
 しかし、氏は言われました。

「路上生活者は苦しみや悲しみや怒りでさんざん自分を壊してからNPOにやってきます。
 そもそも、冬の寒い時期に路上で寝ること自体、心が正常にはたらいていると言えるでしょうか?
 自業自得と切り捨てられるでしょうか?」

 路上生活を余儀なくされた方々の身に起こったできごと、現に起こっているできごとと自分は無関係ではないという魂のレベルでの直感と核心があればこその言葉ではないでしょうか。
 
 氏はこうも言われました。

「本当はこんな団体がなくなり、我々の存在のなくなることが究極の目標です。」

 氏の法人は立派に成り立っていますが、氏の視点は経営そのものの発展などにはありません。
 辛い社会に生きる人々を見捨てられぬ人々によってやむを得ずつくられた集団なので、辛い生活環境がなくなれば目的は達成されるのであり、それ以外の経営的成功などは眼中にありません。
 映画『奇跡のリンゴ』の最終場面を思い出しました。
 木村秋則は、糟糠(ソウコウ)の妻(米かすと米ぬかしか食べられないような辛苦の人生を共にしてきた妻)へ言います。

「一つのものに狂えば、いつか必ず答に巡り合う」

 立岡学氏の冷静かつ情熱的に狂っておられる姿はきっと社会を変え、人々の心を変え、やがては日本人の叡智がきちんとしたシステムをつくりだすことでしょう。
 氏の周囲へ広がる縁の糸の細い一本であり続けたいと願っています。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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