コラム

 公開日: 2013-06-19  最終更新日: 2014-06-04

『山楽耕』の自然農法 ─自然の力、土の力を信じる─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。











 ある日、黒川郡大郷町で自然農法を実践しておられる『山楽耕(ヤマガッコウ)』の太枝氏を訪ねました。
 当山の『法楽農園』運営の方針を固めるためです。

 農薬などの化学物質を使わない農法に一つの主張があることは理解できます。
 急速に広がる各種のアレルギー現象と、食品から摂取する化学物質との間に何らかの関連性があるのではないか、と疑われていることも承知しています。
 しかし、科学の最先端におられる方々のお話をうかがっていると、人類が日照りや飢饉と闘いながら積み上げてきた科学的農法を決定的に凌駕するやり方があることは、容易に納得できなかったからです。

 疑問が解けずに来たというぶしつけな僧侶を相手に、太枝氏は、訥々と話されました。

「江戸時代に都市部で処理しきれない汚物を農村へ出したあたりが、大量に肥料を与えて育てるやり方の始まりだったのではないでしょうか。
 時代をさかのぼってみれば、奈良の都は汚物処理がうまくゆかなくて疫病などが流行り、だめになりました。
 その点、京都は川をうまく利用したので、順調に発展できたのでしょうね。
 ベルサイユ宮殿にはそもそもトイレがなく、華やかに着飾った人々は豊かな茂みの陰で、立ったまま用を足しました。
 人糞や鶏糞などを農業に用いるのは、都市部の汚物処理という要請があったからです」

 奥さんが「どうぞ」とご用意くださったシソのジュースが喉を通ると、未体験の世界に来ていることを実感させられました。

「そもそも、野にあるものたちは、誰からも肥料を与えられないのに、仲良く生きています。
 自然は蘇生の力を持っています。
 一方、つくられたものは腐敗し、やがて滅します。
 人間によってつくられたものは滅失の方向へしか進めません。
 蘇生の力によってできた作物でなく、滅失の宿命を持ったものの力を借りてできた作物を食べるのは、化けものを食べているようなものではないでしょうか」

 なるほど、犬や猫や熊と同じ動物であり、稲ともDNAの40パーセント以上を共有している人間は化けものを食べ、いつしか自然界の存在から離れつつあるのでしょうか。

「効率第一に作業をすれば、米を刈り取ってからなるべく早く乾燥させ、出荷します。
 自然乾燥すると何倍もの日数を要し、出荷は遅れます。
 しかし、時間をかけた米は、炊き上がった時に、普段食べている米とはまったく別もののような芳香を放ちます。
 本来の米、本ものを食べようではありませんか」

「私たちは、並んでいるキュウリを買ってきておいしいおいしいと食べますが、ほとんどのキュウリは本ものかどうか、怪しいものです。
 それは、カボチャに接ぎ木するようにして育てているからです。
 そうする理由は、カボチャの方が地中から水を吸い上げる力が強いからです。
 土に張る肝心の根の力はカボチャに頼って早く、たくさん、つくられたキュウリ。
 これは果たして、本ものと言えるでしょうか」

 有限な地球上で人類が無限に増え続けることは許されず、他の生きものたちと共生するバランスも破壊できず、人口問題と食料危機と環境破壊は世界的共通認識になっています。
 私たちの文明は、生きるため、そして儲けるために「効率」を求めて戦い続けてきました。
 氏は言います。

「欲という文字を考えてください。
 左側に谷があります。
 また、俗という文字を考えてください。
 右側に谷があります。
 谷から上へ登る方向の片方には欠けるという字があり、もう片方には人という字があります。
 つまり、欲に走れば、俗すなわち私たち人間の住む世界からどんどん離れることを意味しているように思えます」

 放置された私たちの欲は、どうしても我欲(ガヨク)としてはたらくので、自他を傷つけがちです。
 お釈迦様は、智慧と慈悲をもって我欲を克服せよと説かれました。
 我欲を克服した菩薩(ボサツ)の清浄な意欲である大欲(タイヨク)は、私たち一人一人を真に生かします。
 私たちがどう生きるかという問題は畢竟(ヒッキョウ…つまるところ)、欲を菩薩に近づけるか、それとも我欲のままに放置するか、このコントロールいかんにかかっています。
 作物と雑草が共存する世界は、私たちが何をもって共存すべきかを考えるヒントに満ちているような気がします。
 
〝自分で食べるものは自分で、あるいは自分たちでつくる自給自足や地産地消の方向へ行けば、食の安全が確保できるのではないか。
 しかも、農園が限りなく自然の状態にあれば自然も守られる。
 当山の『法楽農園』もそうした方向での小さな実験台になりはしないか。
 氏の言われる〈本もの〉を食べ、本ものの生きもの、そして本ものの人間になれればよいが……〟

「作物は、固い土ではうまく育てません。
 固い土を砕いてよく見ると、その中には石があります。
 石を取り囲んで土が固まり、そうした塊だらけになれば地中の微生物などが活動できず、作物にふさわしい土とは言えません」

「私の畑では、農薬はもちろん肥料も使いません。
 土を耕しません。
 草刈りをしません。
 作物の周囲から草を除いてむきだしの土にしてしまうと、作物は雨も風も日光もモロに浴びてしまい、大きなストレスがかかります。
 周囲に草があれば、一緒に育つ作物にストレスは発生しません。
 ただし、強烈なものに負けないよう、作物よりあまりに伸びる草は、作物に邪魔にならない程度には刈ります。
 すべてのエネルギーは太陽からやってくるので、これだけは確保してやらねばなりません。
 草と共生する作物はストレスが少なく、安心なのではないでしょうか。
 また、耕せばフカフカの土にはならないので、不耕起農法にしています」

 作物が育つのは、子供が学校で切磋琢磨(セッサタクマ…互いに励まし合い、競い合い、磨き合うこと)しつつ育つのと同じではないかと考えつつ、畑に案内されて驚きました。
 雑草と野菜が共存し、殺虫剤を撒かないのに、ほとんど虫食いがありません。
 驚きました。
 氏が棒きれを土に差し込むと、たやすく、ズブズブ入ってしまい、氏は笑いながら、1メートル以上、こうなっているのではないかと言います。
 驚きました。
 ちぎってくださるマメも、葉も、あまりにも甘い味わいに満ちているのです。
 氏の言う〈本もの〉が実感できました。

 カメを抱え持ってきて状態を見せ、食べさせてくださった梅干しの味わいの深さには言葉を失いました。
〝はるかな昔のご先祖様方はこうした梅干しと、芳香豊かな米を食べていのちと心を養い、今の私たちを存在させてくださったのだ。
 ──私たちは何を失い、何を得たのか〟
 空いた時間に手ぶらで駆けつけたにもかかわらず、たくさんの作物をいただき、たくさんのご示唆をいただきました。
 ご夫婦の笑顔を思い出しつつ、ご示唆を反芻(ハンスウ…くり返し味わうこと)しつつ、合掌する気持で帰山しました。

 おりもおり、6月18日の朝日新聞は「ミツバチ群れ 農薬で『崩壊』」と報じました。
 ネオニコチノイド系農薬を摂取したミツバチは群を維持できないというのです。
 金沢大学の山田俊郎教授は発表しました。
「即死しない濃度でも、農薬を含んだ餌を食べたハチの帰巣本能がだめになり、群が崩壊すると考えられる」
 ネオニコチノイドは、こうした物質です。
「タバコに含まれる天然成分のニコチンから、人体への毒性を低減させて開発された物質。
 有機リン系の化学物質に代わり、平成に入ってから一般家庭での殺虫剤などを含め、さまざまな用途で使われている。
 神経伝達を攪乱し、異常な状態を起こさせて昆虫を殺す。
 近年、各国で多発しているミツバチの大量死や消滅との関連が指摘され始めた。」
 EUではネオニコチノイド系農薬であるクロチアニジンなど3種類が2年間の使用禁止となっています。
 科学の発達は試行錯誤の連続であり、その過程に発する諸問題との戦いです。
〝人類は永遠に勝者であり続けられるのか?
 しかも決定的な傷を負わない勝者で。
 はたして、消えた古代文明の中に、負けるはずのない戦いに負けたケースはなかったのか……〟

 
 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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