コラム

 公開日: 2013-06-25  最終更新日: 2014-06-04

科学と文化そして原子力と私たちの未来

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






1 火星移住の話

 6月20日付の朝日新聞は「あと20年で火星移住」と題し、昭和44年に人類初の月面活動を行ったバズ・オルドリン博士(米)の提唱を紹介しました。

「山の反対側が見たくなるように、未知の世界の開拓は人類の本能です。
 我々はすでにその(火星移住)技術を持っています」
「火星の衛星フォボスに火星基地建設のための資材や物資を終結させ、遠隔操作で運んで組み立てるのが私の構想です」

 博士は、その前段階として国際協力により月へ基地を建設し、月の資源で水素や酸素など宇宙船の推進に必要な燃料を補給しようと提案しています。
 火星に直接向かわない理由は、火星に大気や重力があるので、戻ってくるのが難しく、一旦火星に到着したならば、一年以上、住む必要があるからです。

「フォボスには大気がなく、重力は地球の千分の一以下。
 離脱に必要な速度は時速40キロなので離着陸は簡単です。
 人が生活できる基地を作るのも難しくない」

 地球と火星の通信は片道12分ですが、フォボスからだと、リアルタイムでのやりとりが可能です。
 こう言われると、他の星に住むイメージがかなり、具体的になります。
 人類の移住先として月より火星がお勧めな理由は明白です。

「月に比べて火星は季節の変化が穏やかだからです。
 月では太陽が当たって極端に暑い『昼』が約2週間続いた後、太陽が当たらず極端に寒い『夜』が約2週間続くという繰り返しです。
 大気はないし、水もわずかだとみられます。
 もちろん、放射線など克服すべき課題はありますが、火星には地球の周期に似た昼と夜があるし、季節もあります。
 地下には相当な量の氷があるらしいこともわかっています」

 そして、博士は膨大な費用を国際協調でまかなおうとしています。

「アポロ計画の時代は国同士の競争でしたが、月探査に必要なのは協調です。
 NASAの宇宙飛行士が今さら月に降り立つ必要はないのです」

 また、日本はインドと協力すれば月の資源探査に乗り出すことが可能であると見ています。

2 原子力ロケット・エンジンの話

 2月8日、フェイスブック「ロシアNOW」は、アンドレイ・リヴォフ氏の特別寄稿を掲載しました。
 連邦国営単一企業「ケルディシュ研究センター」所長アナトーリ・コロテエフ氏によれば、「宇宙で安全に原子力を利用する方法がロシアで発明され、それにもとづいた原子力装置の製造が行われている」というのです。
 計画は、「ロシア連邦宇宙局やロスアトムの企業と密に連携して」進められています。
 現在の酸水素エンジンと電気推進エンジン(プラズマ・エンジンなど)の持つ困難と限界を突破できるのが原子力です。

「化学燃料の可能性と、電気推進機関の省エネを、ひとつにすることはできるだろうか。
 宇宙機の加速段階で原子力ロケット・エンジンを使えば、それは可能になる。
 原子力装置を使って、かつてロシアは宇宙機32機を宇宙に飛ばし、アメリカは2機を飛ばした。
 NASAは今日、有人火星探索に、核燃料を使用する宇宙船の導入を検討している。
 今後5年で数十億ドルが、2件の研究プロジェクトに投じられる予定となっている。
 ひとつは原子力エンジンのロケットの製造で、もうひとつは原子力発電機の開発だ。
 このように、原子力ロケットという研究目的により、ロシアとアメリカが宇宙開発でひとつになることが可能だ。
 アメリカが原子力を利用したロケット・エンジンを製造する時、今回の『ケルディシュ研究センター』の開発で示された、この分野でのロシアの実績を、活かすことができる」

3 科学が無限に進む話

 理論物理学者佐藤文隆氏は共著『科学にすがるな!』において、フリー編集者の艸場(クサバ)よしみ氏へ語りました。

「そもそも科学とは、権威がこけていく物語なんだ」
「サイエンスは、先に立てた理論が間違っていることを自分で見つけていくんです」

 艸場よしみ氏はまとめます。

「科学は自分自身を否定していく。
 自分で定義したことに固執するのではなく、間違いを積極的に見つけて改善していく。
 これが科学の批判精神なのだと先生は協調した」

 こうした批判精神は、単に科学に限るのではなく、およそ文化はすべて批判精神の大正となりつつ変化し、発展してきたのではないでしょうか。
 私は、仏教も又、道理と実践の宗教であり、まっとうな行者ならば必ず清浄な批判精神を持っているはずであると考えています。
 そもそも、お釈迦様は指導されました。
「鵜呑みにしてはならない」
 自分で腑に落ちるまで考え、行い、血肉となったものを頼りにせよという教えです。
 だから、お大師様は、当時、学ぶことのできたすべての学問を学び、開かれた世界初の総合大学手芸種智院をつくり、ダライ・ラマ法王法王もまた、科学者たちとの議論を広く公開しておられます。
 佐藤文隆氏の話を続けます。

「新たな何かを発見したといっても、それが世の中に受け入れられなければ、発見とはいわない。
 受け入れられてはじめて、第三世界の共有財産になるのです」

 艸場よしみ氏はまとめます。

「先生がいう第三世界とは、人間が積み重ねてきた文化のこと。
 言語や宗教や文学や科学といった、知恵や精神や手法の蓄積のことである。
 科学の成果は、世の中という第三の世界を積み重ねるためにあると、先生はいっているのだ」

 佐藤文隆氏の話を続けます。

「人間は複雑で、扱いに苦労していることの7割は精神的なものです。
 精神的に大きくぶれて悲劇を味わったことが、歴史を見てもいっぱいある。
 私も含めて一時的に熱狂した社会主義だって、ガタガタと崩れてみると私の人生はいったい何だったのかとね。
 こういうことはできるだけ起こらないのがいい。
 そのために学問、そして知識はあるんだ」
「ぼくが物理学を学ぼうと思った原点は、ビキニ事件なんだ。
 世の中は死の灰で騒ぐ一方で、原子力発電がスタートする。
 人類の未来は原子力だとね。
 原子力発電と死の灰が降ってくる話は、高校生のぼくにとってはいっしょだった。
 どちらもワクワクする話だった。
 原爆は間違っていたとさかんにいういっぽうで、それを平和のために使えば未来は素晴らしいという意識が、原爆の惨禍を経験した日本でさえ共存していた」
「時代にもまれ、惨劇や過ちを背負いつつ、それでも懸命に進んでいくのです。
 科学も科学者も」
「科学者という人種は、原爆のような悪魔の知への挑戦であっても、嬉々として熱中してそれを達成する。
 このとに作用したのと同じ能力と情熱が、科学のフロントを拡大させている。
 両者に差はなく、どちらにも転化するのです」

 艸場よしみ氏はまとめます。

「私はこのとき理解した。
 最初に会ったときに先生がいった『騙されてはいけない。科学者は恐ろしい連中だよ』という言葉の意味である。
 なぜ、こんなことをいうのか。
 挑発しているのかとも思った。
 そうではないのだ。
 先生自身が科学者のリビドーを自覚しているからなのだ。
 はじめて会ったときに感じた先生の謙虚さの理由は、そこにあったのだ」

 科学は原爆をつくるが、同じ科学者としての〈能力と情熱〉そして〈リビドー〉が医学を発展させ、人類の寿命を延ばしているのです。
 佐藤文隆氏の話を続けます。

「科学はその専門性で世の中に寄与しているが、最前線では危ないことにも手を染めている。
 だから科学の営みには理念や倫理が必要です。
 しかし、科学者自身が理念の体現者ではない」
「専門に没入していくと、当たり前の判断を見失うことがある。
 市民はふつうの感覚にもっと自信をもって、科学を採点できるくらいにならないといけないのです」
「教育のない母親がいったことを、忠実に守って生きているだけなんだ。
 人に迷惑をかけるな、偉そうにするなとね」
「ほんとうの民主主義とは、私たちで決めるということ。
 我々がどう選択するかです」

 だから、私は、「今回の都議選の結果をどう思いますか?」と訊かれ、答えました。
「日本人は選挙のたびに右往左往するという見方もあるでしょうが、私は、人々の心の変化が政治に反映されるシステムが機能しているという点で、日本は世界に恥じないだけのレベルにあると考えています」
 佐藤文隆氏の話を続けます。

「われわれ人間の行為の是非をチェックしてくれる監督者は、われわれのほかには存在しないのだよ。
 われわれ自身で、けなげに、この事態にこたえていかなければならないのだと思う」

 艸場よしみ氏はまとめます。

「自然に対峙してつくり上げてきたいまの世界を失敗作というのなら、自然に逃げることが解決策ではない。
 そもそもわれわれが『自然』と認識したものは、人間と離れた手つかずの『自然』ではない。
 これまで積み上げてきた知を受け継いで、前に進めと先生はいっているのだ」

 当山の『法楽農園』についても、私は「自然に還れ!」と〈反科学〉を声高に叫ぶつもりはありません。
 積み上げてきた文化を呼吸しつつ、〈踊り場が必要な時はそこで一休みしよう〉という感覚で農園を動かしてゆこうと考えています。
 佐藤文隆氏の話を続けます。

「科学が、幸福とは何かという問いへの答をもたらすわけではない。
 ただ、幸福のために科学を役立てることはできる。
 科学は、近代社会がつくってきたある種のツールです。
 道具は使いようなんだ」

 宗教も同じです。
 サポーターの方々が発行してくださっている月刊紙『ゆかりびと』7月号に、こう書きました。
「お釈迦様とお大師様から伝わる伝統仏教の法灯を嗣ぎ、『この世の幸せとあの世の安心』を目ざす当山の法務に関心を持ち、頼りにされる方々は、『住職の考えのとおりに自分も考えなければならない』などと思わず、肝心なものごとは自分で考え、正直な心のままでご縁の糸を結んでいただきたいと願っています。
 私の浅薄な考えなどはあくまでも皆さんの〈たたき台〉でしかありません。
 それを上手に使い、皆さんが、ご自身の力と、み仏のご加護と教えの力と、周囲に網のように広がるよきご縁の力とによって『この世の幸せとあの世の安心』に近づいていただければ本望です」

 さて、私たちはどう原子力と向き合い、どう考え、どう判断してゆけばよいか。
 佐藤文隆氏の言うとおり、「われわれ自身で、けなげに、この事態にこたえていかなければならない」のであり、私たちは誰一人、今の事態からも、これからの成り行きからも逃げられません。
 熟慮したいものです。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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