コラム

 公開日: 2013-06-27  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第139回)─大震災と四国八十八か所巡り─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 津波に呑み込まれた地は托鉢で歩き、日々を生かされ、望みや苦しみの現実について教えてくださる大恩人方が住んでいた。
 家がなくなり、人もいなくなり、のっぺらぼうの素肌をむき出したまま、そもそも生の営みの主人公が誰であるかを、黙って突きつけてくる大地と、くしゃみ一つで私たちのすべてをたやすく吹き飛ばしてしまう地球の抗えなさには、ただ、茫然とさせられてしまう。
 元の姿に戻った海は何食わぬ顔で寄せては返すばかり、時は変わらず、終わらず、細い一本の糸を紡ぎながら危うく生きている人間を立ちすくませる。
 漁師と家族が住み、肩を寄せ合うように低い軒を並べていた防波堤のすぐ内側にあった二並びの集落がそっくりなくなった様子は、神隠しそのものだ。
「ああ、よぐ来てけだねえ。拝んでけさい」たまたま休みだった小柄な漁師は、真っ黒な顔に真っ白な手ぬぐいの鉢巻をしていたっけ。
 歩き終え、浜辺で海へ向かい九字を切ってから戻る車を包みこんでくれていた風の涼しい松林も、もう、ない。

 あの時、幾度かは慰霊の托鉢を考えた。
 しかし、病気がちな妻と二人で守る自坊を離れることはできなかった。
 あちこちから支援物資が届く一方で、見知らぬ人々がローソクや水をもらいに来たり、これまでにない相談ごとを持ち込まれたりといった中で情けなくも手いっぱいだった。
 そんな中、小雪舞う浜辺を歩く托鉢僧の姿が新聞に掲載された。
 でかけない自分が恥ずかしかった。
 そして、「よくやってくれた」と、まだ二十代の彼に僧侶総てが救われるような思いもした。

 さて、当山は、かねて、四国の霊場へ足をはこべない方々のために「みやぎ四国八十八か所巡り道場」の建設を進めてきた。
 それは、私自身が霊場を訪ね、動けなくなった方を再び歩ませる加持力の確かさや、心に貼りついたものを切り放つ因縁解脱のお慈悲に涙する得がたい体験をし、霊場は行者にとって永遠の別世界であると確信しており、お大師様のご加護が広く人々をお救いくださるよう願ってきたからである。

 震災後二年以上経過した今、当山へ足を運ぶ方々の多くは未だ、「これでいい」と納得しつつ歩める道を見つけられずにおられるだけでなく、種々の後遺症的なものによる苦しみから離れられない。
 また、逝かれた御霊のために自分の身体で何かをしたいと願う方々、あるいは決して津波の来ない山で御霊を眠らせてあげたいという方々も少なくない。
 故武田明は、四国遍路の根底に大師信仰・死霊信仰・接待習俗があると喝破された。
 お大師様への思慕が霊場を歩ませるのはもちろんだが、祈りを重ねつつ、さまざまな思いを御霊へ届け御霊を安んじたいという願いも強く背中を押す。
 そして、相手を選ばぬ思いやりに触れて心に涙が流れれば、心のしこりや積み来たった悪業が解けてゆくような思いにもなる。
 四国では人間がその役割を果たすが、当山の道場では里山がそれに代わって癒しをもたらす。
 ぜひ、震災で傷つき四国まで行けない方々に宮城の霊場を歩んでいただきたい。

 はからずも大震災をまたいでの本格着工となったが、善男善女のご芳志を得て何としても道場を完成させたい。
 歩む托鉢が僧侶としての心構えをつくり、寺院開基の基礎固めとなった歩みの行者としては、人々が歩む道場の完成をもって、大恩ある御霊方と地域へのご恩返しの一つとしたい。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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