コラム

 公開日: 2013-07-03  最終更新日: 2014-06-04

呪いについて ─オウム(アレフ)真理教の例に学び、呪う心から遠ざかるために─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 7月2日付の産経新聞は、7月1日、公安調査庁が行ったオウム真理教(アレフに改称)への立ち入り検査において、刃物で串刺しにされた公安庁職員の画像が発見されたと報じました。
 記事にもあるとおり、「公安庁が情報収集過程で得た画像を公開するのは極めて異例」ではありますが、公安調査庁は「悪質性が極めて高く、公表の公益性もあると判断した」と発表しています。
 写真を見ると確かに何枚もの紙がまとめて串刺しにされており、おそらくは仏画の前で呪いの祈りがなされていたものと思われます。
 
 このケースにおける「悪質性」とは、かつて倒錯した害意による殺人などの犯罪行為を行い、重大な社会的責任のある宗教団体が、いまだに、呪いという形をとって特定の人間に対する害意を育てていることを指摘しているのでしょう。
 もちろん、呪いそのものが罰せられるはずはありません。
 当局には、呪いに象徴される教団の体質が、やがて以前のような害意の実行を招きかねないと判断したのでしょう。
 そして、発表したという行為には、そうした状況にあることを社会へ知らしめ、教団への入信などにブレーキをかけるという意図があったものと思われます。

 ネットに流れているジャーナリスト大谷昭宏氏の見解です。
「常に監視対象となっているのに、このような脇の甘いことをするのか疑問。
 今回のケースだけで組織全体が危険との印象を持つのは短絡的だ」
「普段は情報を隠す組織が情報開示に積極的になった時こそ、われわれは冷静に受け止める必要がある」
 こうした見方にも確かに一理あると思われますが、ここでは、やがて害意の実行を招きかねないと危惧された呪いについて少々、考えてみましょう。

 社会的、法的には別として、宗教的には、呪いはすでに害意の実行そのものです。
 祈り、結果を待つ行為そのものが宗教的には効果が信じられる行為だからです。
 効果が信じられなければ、誰も、呪いをかけはしません。
 この、害意の実行をどう考えるべきか?

 仏教は因果応報を思想の柱とし、人間の行為が善であればよい結果をもたらし、悪であれば悪しき結果をもたらすと信じています。
 原因と結果とをつなぐものが業(ゴウ)と呼ばれる目に見えない力であり、善なる行為は善業(ゼンゴウ)を増やし、悪なる行為は悪業(アクゴウ)を増やし、前者の未来は明るい方向へ向かい、後者の未来は暗い方向へ向かうと信じています。
 仏教の倫理はここに基礎があります。
 倫理とは、仲間同士のふるまいが理にかなっているかどうかを考える筋道であり、人間をすべて、共に運命を創ってゆく仲間であるととらえています。
 人間社会の運命は共につくる共業(グウゴウ)によって左右され、共業は、一人一人が作る不共業(フグウゴウ)の積み重なったものです。
 仲間同士が安心で幸せな毎日を過ごす方法は一つしかありません。
 それぞれが悪業を積まず、善業を積むことです。

 悪業の中身は何か?
 これが、害意の実行に他なりません。
 お釈迦様以来、仏教は、悪行(アクギョウ)を行わず、悪業を積まない方法を探求してきました。
 現在、それが最も精緻に分析されたと思われるのがチベット密教における悪業の成立の研究です。
 殺人という最悪の悪行について、その過程をかいつまんでたどってみます。
 まず、憎い相手といった特定の「対象」があります。
 その相手に対して殺そうという「意志」を持ちます。
 この意志には、相手を思い浮かべる「着想」と、憎しみなどの「煩悩」と、殺そうという意志そのものである「喚起」とがあります。
 次に方法の「実行」があります。
 そして、相手が死ぬという「完了」に至ります。
 こうして悪行が成立し、悪業が生まれます。

 では、今回、オウム真理教で行われていたとおぼしき呪いについて考えてみましょう
 まず、「対象」は公安庁職員です。
 次に、殺意かどうかは不明ですが、対象の写真へナイフを刺すという行為は明らかに相手の不幸を願う害意があります。
 そこには、写真によって相手を確認する「着想」があり、憎しみなどの「煩悩」があり、呪いとして祈る「喚起」があります。
 次に、呪うという方法の「実行」があります。
 留意すべきは、世間一般におけるこうした方法の有効性と、狂信者における有効性は違うという点です。
 常識的には「呪ってもころせまい」と思われ、そうであるからこそ、呪ったからといって逮捕されはしませんが、狂信者においては、仏神が〈成果〉を約束された有効な方法となっているのです。
 そうすると、悪業の完成までは、「完了」を待つのみであることがわかります。
 よって、呪いは、明らかに悪行の過程にあり、たとえ社会的、法的に責任を問われる行為ではなくても、宗教者としては厳しく指弾されるべきであると考えます。

 そもそも、悪を離れ善を求める仏教に、害意の実行方法としての呪いはありません。
 不動明王のような猛威をもって悪行を止める修法はあっても、それは、あくまでも悪行に走る人の善なる心を導き出すための方便であり、悪業者の不幸を願ったり、心身へ傷つけたりといったことはあり得ません。
 当山へも、呪われた方々、呪いたい方々が訪れます。
 そうした辛い思いをしている方々の多くは、自分が害意から護られると同時に、害意を向けてきている相手へ害意を返してやりたいと願われます。
 しかし、〈返す〉のは、わざわざそうするまでもありません。
 お釈迦様が害意を持って向かってきた相手を諭す場面があります。
 お釈迦様はいきり立つ相手へ静かに言われました。
「あなたが、相手へ渡そうとしたものを相手が受け取らなかった場合、持ち帰るしかないように、あなたが今、私へぶつけた悪口雑言を私が何一つ受け取らない以上、あなたは自分自身で持ち帰らねばならないのです。」
 実は、相手へ届こうが届くまいが、害意を発した時、すでに、発した者は害意の悪影響を受けています。
 それは、持ち帰った時、特に、明らかになることでしょう。
 こうしたことを学び守護の法を受けられた方が、やがては相手へ憐れみをかけるようになったりすると、本当に救われた思いになります。

 私たちは、今回のできごとに学び、もしも呪いたい心が起こったならば、こうした方法は人間として正しいかどうか、落ちついて考えてみようではありませんか。
 そして、相手の悪行を正す人間として正しい方法を模索したいものです。
 特定の人や集団を執拗に攻撃する体質の宗教団体へうかつに近づかない方が安全なのは言うまでもありません。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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