コラム

 公開日: 2013-07-11  最終更新日: 2014-06-04

福島第一原発所長だった吉田昌郎氏のご冥福を祈ります ─人が本来菩薩であると示されたことを忘れない

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈産経新聞からお借りして加工しました〉

 7月9日、原発事故当時の福島第一原発所長吉田昌郎氏(58才)が逝去された。
 心からご冥福を祈りたい。
 今、こうして当山で法務を続けていられるのは、所長を初め、〈逃げずに〉事故と闘ってくださった現場の方々のおかげ(現在、奮闘しておられる方々も、もちろん)であると、あらためて強く実感する。

 あれほどの大天災に遭っても、所長は、事故が〈起きた〉のではなく、東電が事故を〈起こした〉のであり、大被害をもたらしてしまったと自らの責任を感じておられた。
 7月10日付の朝日新聞である。

「事故から8カ月たった11月12日、事故後初めて現場が公開され、吉田さんは取材に応じた。
 記者の前に現れると『まずもって心よりおわび申しあげたい』と福島県民や国民に謝罪した。」

 全国的問題をとりあげる場合、ほとんど「市民」という言葉を用いる体質の朝日新聞であっても、ここは「国民」と表現するしかなかった。
 それほど、所長の国家国民への思いが強く明確だったのだろう。

 同紙が伝える氏の言葉である。

「ここで働いているほとんどの人が福島、浜通りの人。
 彼らも避難民で家族が避難している。
 浜通りを何とかしたい気持は、作業員みんなが持っている。」

 氏は、部下たちを〈使う道具〉ではなく、〈家族〉と思っておられたのだろう。
 地域の人々も、そして国民も皆、氏にとっては守らねばならない家族である。

 同紙が伝える社員の言葉である。

「極限の緊張のなかで、いつも指示は的確だった。
 現場を知り、気丈に振る舞う。
 あの人だから団結できた。」

 ここで言う団結は、所長が「死ぬだろうと思うことは数度ありました」と証言している状況で保たれた団結である。
 水素爆発という誰も想像しなかった事態にあっても、冷却用の海水注入を継続するなど氏は現場で的確に判断し、部下へ行動を命じた。
 氏は、かつて、こうふり返っておられる。

「(部下たちは)現場に飛び込んで行ってくれた」
「私が昔から読んでいる法華経の中に登場する、地面から湧いて出る菩薩(ボサツ)のイメージを、すさまじい地獄みたいな状態の中で感じた」

 7月10日付の産経新聞も、氏の言葉を掲載した。

「放射能がある現場に何回も行ってくれた同僚たちがいる。
 私は見てただけ。
 部下は地獄の中の菩薩だった。」

 国家国民のため、現場で闘ってくださった方々は皆、まぎれもなく菩薩である。

 産経新聞は、所長たちに取材したノンフィクション『死の淵を見た男』の著者門田隆将氏の言葉を掲載した。

「この日本を救う役割、使命を負って生まれ、それを果たしたことで去っていってしまったのではないか。」
「リーダーシップだけでなく機械にも詳しいオールマイティの人。
 部下からも信頼が厚く、『吉田さんじゃなかったらだめだった』と口をそろえていた。
 私たちは事故当時に吉田さんが福島第一原発にいたことを感謝しないとけない。」

 歴史的役割を負うとは、こういうことではなかろうか。

 当山はかつて、平成24年7月20日、米国コロラド州オーロラの映画館で起きた発砲事件に際し、恋人を自分の身体の下へ入れて守り、亡くなった大学院生アレックス・ティーブズ氏(24才)について書いた。
 犯人は「自分はジョーカーだ」と言いつつ銃を乱射し、死亡者12人、重軽傷者59人という大惨事となった修羅場で、彼はとっさに身を挺した。
 父親の言葉は忘れられない。

「もし、彼女を助けられなければ、彼は生きてはいられなかっただろう」

 所長も、逃げれば生きてはいられなかったのではなかろうか。
 と言うよりも、逃げるという選択肢のない方だったに違いない。
 あらためて、いざという場面で発揮される人間そのものの力、人間性がことを動かすという真実を思う。
 地獄にあって動じない菩薩に率いられた現場の人々も又、そろって菩薩になられた。
 ただただ、合掌するしかない。
 心よりご冥福を祈りつつ、自分も所長が示された人間の真姿に一歩でも近づきたいと願ってやまない。



--------------------------------------------------------------------------------
 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ