コラム

 公開日: 2013-07-14  最終更新日: 2014-06-04

傷ついた日本人へ(その17) ─苦しみから抜け出す方法─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 被災地を訪れたダライ・ラマ法王が高野山で行った講演の概要が『傷ついた日本人へ』という本になりました。
 皆さんと一緒に、要点を考えてみましょう。

 ダライ・ラマ法王は、苦しみには二種類あると説かれます。

・外因的なもの…病気・不調な人間関係・天変地異などによるもの
 薬によって病気が治り、スムーズな人間関係になり、破壊されたものが修復されるなど、原因が除かれれば解決できる。

・内因的なもの…自分の心が生み出すもの
 自分で生み出してしまった自立的苦痛は、原因の除去が難しい。

「もともとの苦しみは、自身という外部刺激によって引き起こされたものでした。
 自身そのものの恐怖、家族や故郷をなくした悲しみ、そういったものだったのです。
 しかし、徐々に苦しみや悲しみがひとり歩きをするようになった。
 精神を飲み込み始め、自分で苦悩を新たに生み出すようになってきているのではないでしょうか。」

 いつの間にか苦しみが生じており、苦しんでいる自分もいます。
 では、そうしたものは、どこに、どのように存在しているのでしょうか?
 よく考えてみると、苦しみの〈実体〉はどこにも見つかりません。
 同じように、苦しんでいる自分の〈実体〉もまた、どこにも見つかりません。
 確かに在るのに見つからないとはどういうことでしょう?

「あなたの苦しみも、苦しみを感じているあなた自身も、その実体はありません。
 すべてあなたの観念に過ぎず、あなたがそう認識しているだけなのです。」
「苦しみだけではありません。
 恐怖、猜疑、憎悪、絶望……。
 あらゆるマイナスの感情は、どれも自分で生み出し、自分でそれを認め、そしてそれに自分が苦しめられている悪循環に陥っています。」
 
 では、どうすれば悪循環を抜け出られるか?

「もしあなたが誰かに怒りや憎しみを抱いたとします。
 そんなときは少しだけ立ち止まって考えてみてください。
 私はどうしてこんなに怒っているのか。
 本当に相手は憎むべき人間なのか、と。」

 まず、感情の嵐によって舞う木の葉の状態でなく、深呼吸して〈立ち止まる〉ことです。
 そうでなければ、木の葉がどこに落ちるかを自分で決められないように、いじめ、ストーカー、暴力、殺人、ありとあらゆる悪行や、自分の心身の不調など望んでもいなかった結末を迎えるという取り返しのつかない状況に陥るかも知れません。
 立ち止まればどうなるか?

「相手自身に実体はまるでないのに、自分が勝手にマイナスの解釈を膨らましていることに気づくはずです。
 ちょっとした言動で『この人は敵だ』と思い込んでしまっていただけなのです。」

 たとえば、新しい職場で上司となった人から「学歴だけで通用すると思わないでください」と言われたとします。
 もしもあなたが有名大学を出ていたらどうでしょう。
 この先輩は私をやっかんでいる、私をいじめようとしている、そもそも自分を部下にしたくなかったのではないか、などなど、限りなくマイナス思考がはたらき、その一言とその時の顔を繰り返し繰り返し、思い出すようになるかも知れません。
 そして、こいつを蹴落としてやろう、いつか恥をかかせてやろう、などなど、限りなく悪しき行動を夢想するかも知れません。
 しかし、くるくるとはたらく自分の頭の中を冷静に観てみると、一言あったことだけが事実で、あとはすべて、「思い込んで」いるだけの独り相撲に過ぎないと気づくはずです。
 ダライ・ラマ法王は、それを「自分が勝手にマイナスの解釈を膨らましている」と指摘されました。

「この世界の事象に実体はないのです。
『嫌な人の存在』『怒りを覚える言動』はときに絶対的な実体に思えますが、論理的に考えていくと結局は実体が見つからず『空(クウ)の本質』に突き当たってしまうでしょう。
 このマイナスの感情から抜け出すためにも、物事の本質は全て『空(クウ)』であるということを改めて見直しましょう。
 自分を支配している苦しみや憎しみには実体がないことをはっきりと自覚するのです。
 そして自らの知性でそれを良い方向へと転換させましょう。
 また、相手の言動に怒りを覚えたり、思い通りにいかないと悩んだりするときには、その裏に利己的な考えがあることにも気づかなくてはいけません。
 自分さえ良ければいいというエゴが膨れ上がり、それが裏切られたために心が乱れているのです。」

 前述の例にあてはめれば、上司は人間であり、たまたまあの時は生きており、今も目の前にはいなくても生きていると想像できますが、明日、出社した時に、病欠を知らされるかも知れないし、あるいは事故死を知るかも知れません。
 また、あの一言は、あの時の事実でしかなく、しかも、そこに込められた上司の気持ちはすべて、自分の頭が生み出した妄想でしかありません。
 もしかすると、上司は嫌われても言うべきことはきちんと伝える真の部下思いであり、万が一にも学歴を鼻にかけてはいけないよと最初に自分の高慢の鼻をへし折ろうとしてくれたのかも知れません。
 そして、自分の心をのぞいてみると、学歴は弱い自分のたった一つのより所であり、それが強そうで脆いガラス細工のような高慢心になっていることに気づきます。
 これまでの自分をふり返ると、高慢心に触れられた途端、一方的に相手を憎んだり、相手が高慢心を潰すほど強いと、勝手に落ち込んだりしてきたことが思い起こされます。
 空(クウ)の相手との間に起こった空(クウ)のできごとを相手に、独り相撲をとってきた空(クウ)の自分。
 これが真実の姿であり、これに気づきさえすれば、日々の心のありようは変わります。

「もちろん、ことはそんなに簡単ではありません。
 実践していくには難しいことも多いでしょう。
 しかし、この習慣を常に意識化し、少しづつ心を訓練していくのです。
 そう考えることで、感情に振り回されず、冷静に対処することができるようになります。
 理由のないまま感情が膨れ上がることは減り、その感情の強さは徐々に和らいでいくでしょう。
 すぐに苦しみが消えるわけではありませんが、やがてはそれをコントロールできるようになると思います。」

 
 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ