コラム

 公開日: 2013-07-16  最終更新日: 2014-06-04

安心と喜びと ─ある島のきつね─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈世界文化社『浜田広介童話集』からお借りして加工しました〉

 浜田広介の童話に『ある島のきつね』があります。

 小さな島の丘の斜面にお寺がありました。
 真っ赤な椿が咲き、海上には銀のように輝くいくつかの帆が動くともなく動いています。
 お堂への出入りを黙認されているキツネが、今日も住職の留守を見計らってご本尊様の前にお供えされたまんじゅうを二個食べました。
 そこへ目が見えず、耳も遠いお婆さんが杖をついてやってきました。
 お爺さんの命日なのです。
 お布施を差し出してお経を所望するので、キツネは、「きょうはおいでになりません」と教えますが、「こんこん、こんこん」としか言えず、しかもお婆さんは、自分の相手をしているのが住職だとばかり思っています。
 そこで、キツネは「おしょうまになってあげよう」と決心します。
 しかし、袈裟と衣をつけたものの、キツネは落ちつきません。

「だれかが見てはいないかと、きつねは、そこらを見まわしました。
 うすぐらいお寺のなかにいるものは、すぐうしろにいるおばあさんと、じぶんだけでありました。
 きつねは、えんからそとを見ました。
 そこには、あかるい昼の光が、ただひっそりと、さしていました。」

 鐘と木魚を叩き、何かを唱えようとしても、きつねに生まれたので鳴くしかありません。

「ぽっぽこ、ぽっぽこ、こんこんこん、ぽっっぽこ、こんこん……。」

 ちらっと後を見ると、お婆さんは「じゅずをしきりにまさぐりながら、いっしんにおがんで」います。
 キツネはすっかり嬉しくなりますが、食べ残しのまんじゅうが目の前にあり、内心ではこんなことを考えています。

「もう少し、となえてやめよう。
 それから、あれをたべるとしよう。」

「仏だんのましょうめんには、おしゃかさまの、とうといお像が立っていました。
 とうといお像は、にっこりと、しずかな笑いをかおにうかべて、きつねのしわざを見ているようにみえました。
 けれどもきつねは、それに気がつきませんでした。
 きつねの目にはただ、さらのまんじゅうだけがみえました。」

 やがて、キツネは鳴きやみ、お婆さんは「ありがとうござりました。おしょうさま、それでは、ごめんくださいまし」と帰ります。
 キツネもまんじゅうをくわえて出て行きます。

「お寺のえんは、なにごともなかったかのように、もとのようになりました。
 まっかなつばきは、のんびりとさいていました。
 青ぐろい葉は、つやつやと、あぶらのようにひかっていました。
 そして、青い海の上には、いくつかの帆が銀のように、まだ、かがやいて見えました。」

 ここには、お婆さんの信じる心と、キツネの善意しかありません。
 しかし、それでお婆さんもキツネも満たされます。
 すべては、ご本尊様の静かな微笑みに包まれています。

 私たちは、よきものを素直によいと信じ、続けているでしょうか?
 私たちは、誰かのためにと思い、行動しているでしょうか?
 盲信は危険ですが、考えすぎると何も信じられず、供養などの尊いものが失われます。
 我(ガ)が前に出ると、自分の得にならないものごとは面倒になり、見て見ぬ振りをしたくなり、徳ある行動から離れます。
 尊いものを失い、徳積みをしなくとも、人は生きられます。
 しかし、それではどうでしょう。
 このお婆さんの安心も、このキツネの喜びも得られなければ、どうでしょうか?

 今日の守本尊大日如来薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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