コラム

 公開日: 2013-07-20  最終更新日: 2014-06-04

人間の尊厳はどこに? ─洟をたらした神─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 中国における景気の減速が世界の経済へ深刻な影響を与えるかも知れないという予測が流れています。
 NHKテレビの『クローズアップ現代』が報じた中国オルドス地方のゴーストタウンは、私たちの近未来を暗示するに十分な荒廃ぶりでした。
 生活感がほとんど感じられない茶色のマンション群と、工事が中断したままの現場を背景に、経営者らしき中年の男性が無表情で語る短い言葉は、ここで何が行われてきたかを物語っています。
「お金がないからもう、続けられない」
 マンション群は、人々が必要とするから造られたのではなく、国からお金が与えられたので、業者がそれを増やすために造られたのであり、お金が流れてこなくなれば、工事は止まるだけなのです。

 また、アメリカで大量に印刷されたドルが国際金融資本の手によってブラジルなどへ流れたために、それらの国々は一時的な好景気に沸きましたが、景気が曲がり角に来たと察するや、資本家は一斉にお金を引き上げ始め、どこの国でも生活できない人々が溢れ、デモが頻発しています。
 各国の政権は国民の生活の維持と権力の保持に必死ですが、あったお金がなくなった状態で国民の欲求を満たすのは難しく、どこの国でも政権は不安定になっています。

 お金がばらまかれて景気がよくなるのは、お酒を飲んで威勢がよくなるのと似てはいないでしょうか?
 酔っている間は気分が高揚し、このまま明るい未来へ入って行けそうな気がしますが、それは錯覚です。
 酔いが醒めてしまえば、厳しい現実に気づくだけでなく、酔った悪影響を引きずる苦しい時間を我慢せねばなりません。
 それどころか、酒が過ぎれば未来を根元から崩壊させてしまうかも知れません。

 私たちは、お金を道具としてきちんと使いこなしているのでしょうか?
 お金に使われてはいないでしょうか?
 また、私たちの生活そのものが巨大なお金によって操られてはいないでしょうか?

 吉野せいの作品に『洟をたらした神』があります。
 明治32年(1899年)に福島県小名浜の網元に生まれた吉野せいは、いわき市好間町で寺院から土地を借りて開墾していた詩人の三野混沌(本名:吉野義也)に嫁ぎます。
 嫁入り道具は行李一つ、机一つ、タライ一つだけです。
 極貧の生活の中で娘を失い、長男を戦争へ出征させたりします。
「愛の夢も、けたはずれの貧しさの前にとぎれとぎれであった」
 しかし、夫婦は、混沌がつくった詩の一節を口ずさみつつ、艱難辛苦を乗り越えました。

「天日(テンジツ)燦(サン)として焼くが如し、出(イ)でて働かざるべからず」

(陽光は厳しく、しかし、いのちを育てる強い力で照りつけている。さあ、野へ出て、はたらこうではないか)
 吉野せいは、たくさんの子供たちを育て上げ、夫を送った後、昭和49年(1974年)、草野心平に勧められてこの本を発表します。
 数々の賞を受けた小説もさることながら、昭和53年(1978年)に作られた映画も出色のできばえです。

 人は自然に、貧しさに、国策に翻弄されます。
 地震や津波や酷暑や豪雨など猛威をふるう自然、世界を股にかけ自己の利益のみを求め続ける国際金融資本、切実に必要とするところへなかなか手が届かない政治。
 しかし、人は、頭(コウベ)を立て、眦(マナジリ)を上げ、大地に足を踏みしめていれば、尊厳を失わずに生き抜くことができます。
 小名浜の女性といわきの男性がまことを尽くして生きた姿は、私たちに尊厳を思い出させ、勇気を与えます。
 現代の世相に憤懣や疑問や失望を抱いた場合は、ぜひ『洟をたらした神』をお読みください。
 共に、映画も観たいものです。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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