コラム

 公開日: 2013-07-23  最終更新日: 2014-06-04

わからないお経のありがたさ

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 なぜお経がわかりやすい言葉だけで唱えられないかというご質問は多々、あります。
 昔のインドで作られたお経が主となっているという成り立ちの問題もさることながら、直接、意味のわからない形で唱えられる意義のある言葉が、聴く人の心の深いところへ得も言われぬ思いをもたらすという点が最大のポイントです。

 たとえば、娑婆にいた頃、「何としてもここを突破したい」との願いを込めて護摩祈祷へ参加した時、太鼓と共に唱えられた般若心経と慈救呪(ジクジュ…お不動様の真言)は、忘れられません。
 燃え上がる護摩の炎、法を結ぶ導師、魔を祓う不動明王の偉容、そして全身全霊で唱えられるお経は、人間が人間の限界を突破し得るギリギリの世界を感じさせ、帰り道では「もう、ここまでやった」と、〈まな板の鯉〉の心境になったものです。
 また、持病が悪化してご加持(カジ…心身へはたらきかける祈祷)を受けた時は、修法する導師の法力によって、手足の細胞も胴体の細胞も脳細胞も一つ一つが清められ、生き返るようなリフレッシュ体験をしました。
 もちろん、導師が何を唱えておられたか、その経文や真言はいかなる意味を持っているのかなど、一切、知る由もなく、知りたいとすら思いませんでした。
 ご加持を受けるために寺院を訪れた必死の思いは、「中身を知りたい」という興味とはまったく次元を異にしていたからです。

 今こうした体験をふり返り、皆さんの願いを自分の願いとして修法する立場になった行者として我が身を省みると、唱える文言の多くが普段用いる日本語になっていないことの重大さを実感します。

 たとえば、最初にインドの言葉で唱えることになっている声明(ショウミョウ…音楽のように唱えられるお経)「四智梵語(シチボンゴ)」が、もしも漢文の読み下し文となり、修法を受ける方の耳に、こう届いていたならどうでしょうか?
「金剛薩埵(コンゴウサッタ)が摂受(ショウジュ)するが故に無上の金剛宝(コンゴウホウ)を得、金剛法を諷詠(フウエイ)すれば金剛業(コンゴウゴウ)を成(ジョウ)ざられかし」(「真言宗読経偈文全書」より)
 あるいは、唱える前にこうした内容の説明があればどうでしょうか?
「内容は、金剛界こんごうかいの大日如来を讃歎するものです。
 四智しちとは、阿閦如来あしゅくにょらい・宝生如来ほうしょうにょらい・無量寿如来むりょうじゅにょらい・不空成就如来ふくうじょうじゅにょらいの智慧を表しており、それは金剛界の曼荼羅全体を意味するものでもあります。」(「真言宗豊山派ホームページ」の説明文より)
 それではわからないから、もっとわかりやすく説明してくれと所望されたならば、私のような未熟者なら30分以上を要すると思われます。

 唱える側としては「おーん」と帰依の言葉に入った瞬間から異次元が始まり、観想と共に、一つ一つの発音と音程や抑揚そして息継ぎに全神経を集中させ、自分と場とみ仏の世界が一体となっている救済世界へいのちのすべてをかけます。
 この際、もしも日常生活で用いられるわかりやすい日本語であったならば、きっと、わかりやすさが邪魔になるものと思われます。

 声明は梵語で唱えよという伝統仏教の教えの裏には、言葉にし尽くせないほど膨大な意義があるものと思われます。
 幾多の聖者・行者の方々が、いのちがけの修行や修法によって実践し、私たちへ遺してくださった宝ものであり、それによって実際、自分が救われ、いくばくかはどなたかのためになっていると実感している身としては、ただただ、合掌しつつ日々、お唱えするしかありません。

 もちろん、ケースバイケースで、極力、わかりやすい読み方なども用います。
 当山は現在、般若心経などの読み下し文を皆さんとご一緒にお唱えします。
 また、ご葬儀の際には、何が行われるかが書かれているメモを事前にお渡しする場合もあります。
 こうしたバランスの取り方については、常に皆さんと共に歩む姿勢を忘れず、プロとしての智慧を絞って工夫できる範囲を工夫しているつもりです。

 ご参詣される方々におかれては、ぜひ、目的達成のための「五力(ゴリキ)」をお考えいただきたいと願い、おりおりにお話ししています。

・信力…目的を定めましょう
・精進力…たゆまず怠らず励みましょう
・念力…要点をぶれさせないようにしましょう
・定(ジョウ)力…心身を調えましょう
・慧(エ)力…智慧の限りを尽くしましょう

「今日は、自分の我がままを矯正しよう」
「今日は、タバコをやめられるように願いをかけよう」
「今日は、おふくろの供養をしよう」
 そして、五力を胸にご来山されれば、声明はしみじみと心にに届くことでしょう。
 ああ、み仏方にお守りいただいているという実感を持てるかも知れません。
 太鼓と共に唱えられるお経は、魂を揺さぶることでしょう。
 ご自身も力のみなぎる思いをされるかも知れません。
 ──その時、「お経の意味がわからない」といった形で不満や批判が起こることはないものと思われます。

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 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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