コラム

 公開日: 2013-07-30  最終更新日: 2014-06-04

電車やバスを押すのが珍しくなかった時代 ─支え合いと希望の大切さ─

おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 7月22日、さいたま市南区のJR南浦和駅京浜東北線ホームで、電車から降りようとした30歳台の女性がホームと電車の間に落ちました。
 そのおりに、車内やホームにいた乗客など約40人が協力して電車を横から押し、女性をまもなく助け出しました。
 女性には大過なく、皆が拍手をし、電車は最大8分の遅れで済みました。
 情報はたちまち世界を駈けめぐり、ネット上には、日本人への称賛があふれました。

 たまたま、チラッとその映像を観た私が機関紙『法楽』作りに参加された方々へ話題提供したところ、Aさんから意外なお話がありました。
「昔は、よく、バスなどを押したものです。
 戦後間もない頃の電車もバスもパワーが少なく、登りになると、元気な人たちは降りて歩いたものでした。
 それでもだめなあたりでは、よく押したものです。
 でも、誰一人文句を言う人もなく、譲り合い、協力し合いました。
 だから、今回のようなあたりまえな行動がニュースになることそのものが、よく理解できません。
 まして、世界中に流れるほどのニュースになるとは言葉もありません。
 世の中は、いったい、どうなっているんでしょうか」
 Bさんも、Cさんも、やはり、電車から降りて軽くしたり、バスを押したりすることをよく知っておられました。

 そうした体験がなく、知識もなかった私は、ただ黙って聴きながら、車体を軽くするために率先して降りる人は、別な場面でも〈譲れる人〉に違いなく、当然の行為として譲る人々によってつくられていた社会は、今のように無慈悲さが広がってはいなかったのだろうと思えました。
 200万人がいのちを失い、あちこちが焼け野原となった日本にあったのが奪い合いではなく助け合いだったことは、これまでもたくさんの方々から教えられました。
 今回も又、人生の先輩方は、困っていたけど希望があった時代について語られました。
 私は、こうして日本人は人口を増やしたのだなあ、と実感しました。
 互いに助け合う〈安心感〉があり、〈希望〉の持てる社会ならば、子供を増やしたくなるのは当然だからです。

 社会学者古田隆彦氏は「人口波動説」を唱えています。
「太平洋戦争後、日本は加工貿易文明という新たな人口容量を得て、爆発的に人口を増やしました。
 日本列島で自給できる人口は7700万人といわれており、田畑の上に工場を建て、海外から食糧を買うことで、さらに5500万人を食べさせているのです。
 この加工貿易文明を成立させていた条件は工業製品の方が農業製品より高いということでした。
 ところが、1993年以降、小麦、米、とうもろこしの国際価格は上昇し始めました。
 世界の穀物生産量は3年連続で消費量を下回り、2002年には推定8300万トンもが不足する事態に陥りました。
 したがって今後も穀物の価格は上昇していくことでしょう。
 その一方で安い工業製品が日本に流れ込み、人々は今後に対する漠然とした不安を抱いています。
 この人々の心理状態は江戸中期と同じ状況ではないでしょうか。
 人口は社会の余裕があるときには常に増加し、余裕がなくなると本能的な人口抑制装置が作動するのです。
 これはあらゆる動物において起こることです。
 子供を作るより、自分を守りたい。
 これが少子化の正体なのです。」
 (http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/interview/16/index1.htmlより)

 食物は自然からの贈り物であり、自然からの賜わり物です。
 地球が有限の世界である以上、地上でものを食いながら生きられる人間の数も有限です。
 この有限性を突破しようとさまざまな試みが行われ、日本では今や、工業製品的に生産される野菜なども珍しくはなくなりました。
 人間のあくなき向上心には敬意を表さねばなりませんが、地球上で循環するいのちのサイクルの中で生まれ、死ぬ人間に与えられている生きものとしての〈枠〉を、人間だけが無限に拡大できるとは思えません。
 子供たちに増え続ける各種のアレルギーなど身体的弱さや、ちょっとした困難にも耐えられず崩壊したり爆発したりしやすい精神的弱さは、〈枠〉からの警告ではないかと思われてなりません。
 生きものとして、食べられるものの範囲が狭まるのはとても恐ろしいことです。
 それは、それだけ、生きられる範囲が狭まることを意味しているからです。
 社会人として、困難によって鍛えられないのはとても恐ろしいことです。
 それは、それだけ、個人的には成長できる範囲が狭まり、社会的には助け合う力が狭まることを意味しているからです。
 これは、人間に対して発せられている警告の顕在化とは言えないでしょうか?

 冒頭のできごとに見られるとおり、私たちにはまだ、助け合う心が残っています。
 しかし、社会から希望が薄れ、希望を持てない人々は余裕がなくなり、社会全体が無慈悲な方向へと進み、人々の不安は人口を減少させています。
 もちろん、人口がどんどん増えることそのものが、これからの日本や国際社会にとって望ましいとは思えませんが、生きものとして個体を減らす流れが何を意味しているのかは、深刻な問題として真剣に考えられねばならないはずです。
 どうにか残っている助け合う心を支えとし、希望の持てる社会になるよう、社会から無慈悲さという暗雲が消えてゆくよう、願ってやみません。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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