コラム

 公開日: 2013-08-02  最終更新日: 2014-06-04

炎天を来て燦然と美人たり ─夏の救い─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 久米三汀は、昭和18年(1943年)発行の『返り花』に鮮烈な一句を収めた。

「炎天を来て燦然(サンゼン)と美人たり」

 焼けつくように暑い日、容赦なく照りつける日光を浴びながら胸を張って平然と歩く人には尊厳が溢れている。
 いのちが躍動し、不屈の精神がみなぎっている。
 日傘やつばの広い帽子の陰からかいま見る女性の顔は、神々しくさえ感じられる。

 さて、「燦然」はキラキラと光り輝く様子を示す言葉であり、普通は、ダイヤモンドなどの宝石や、揺るがぬたぐいまれな功績などを表現するのに用いられる。
 燦然と光るものには、他を寄せつけない強く硬くはっきりした主張がある。
 三汀の異才は、その光を生身の人間に観た。

 歩いて来たのは、襟元をピシッと決め、内股で頭を上下させない和服の女性なのか?
 それとも、額に陽を浴びながら胸を反らせてずんずんと進む洋服の女性なのか?
 いずれにしても、そこには、他を寄せつけない美があり、その絶対性にはやはり「燦然と」が似合う。

 この言葉の用法はまるでコロンブスの卵である。
 一旦、そうしたありようが示されれば、それ以外にないほど〈決まっている〉のだが、誰かがやってくれないうちは、誰にも気づかれない。
 
 久米三汀は旧制一高時代から名を轟かせ、大正3年(1914年)に『牧唄』を発表したが、俳壇の変化から俳句を離れ、作家久米正雄として活躍する。
 やがて俳句を再開するが、冒頭の句は、そうした復活後の作品である。
 ちなみに、初期の『牧唄』にはこんな句がある。

「町は名古屋 城(シロ)見通しに 雛売りて」

 長野出身の久米三汀は、名古屋城を見通す道路の両側で豪華な雛祭り用具が売られているさまに圧倒されたのだろう。
 冒頭の「町は名古屋!」と言い切るあたりが堂々としており、ため息が出る。
 そうあるしかないあり方で紡がれた、たったの6文字、7文字、5文字が、詠んだ者とそれを読む者と光景とを一瞬にして結んでしまう。
 しかも、時を超えて。

 このように〈決まる〉とはいかなることなのだろう?
 たとえば、『般若心経』にある「色即是空(シキソクゼクウ)空即是色(クウソクゼシキ)」は決まっている。
 また、『理趣経(リショキョウ)』にある一節も決まっている。

「菩薩(ボサツ)の勝慧(ショウケイ)ある者は
 乃至(ナイシ)生死(ショウジ)を尽くすまで
 恒(ツネ)に衆生(シュジョウ)の利を作(ナ)して
 而(シカ)も涅槃(ネハン)に趣かず」

(菩薩として優れた智慧のある者は、いかに生き死にをくり返そうと、常に生きとし生けるもののためになろうと精進し、自分だけが安寧の地へ去ろうとはしない)
 エディ・コスタのジャズ『ハウス・オブ・ブルー・ライツ 』もそうだ。
 サルバドール・ダリの彫刻『宇宙象』もそうだ。

 きっと、〈決まる〉とは、〈達している〉ことなのだろう。
 私たちはきっと、そうした〈決まっているもの〉と感応し、魂がそこへポンと飛び込む時、余分なものを一瞬にして脱ぎ捨てられるのだろう。
 だから、爽快になり、魂がリセットされるのだ。
 それにしても「炎天を来て燦然と美人たり」には、お気に入りの喫茶店へ入った時のような気持にさせられる。
 特に、今年のような殺人的猛暑と通り魔的な豪雨と早すぎる秋風の到来に翻弄される夏にはもはや、救いですらある。 

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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