コラム

 公開日: 2013-08-19  最終更新日: 2014-06-04

白鳥光代氏の歌に想う哀しみの共有 ─蝉・点滴・雨─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 4時過ぎてもまだ暗く、日は短くなりました。
 気温は24度、蝉の声はか細く、草むらで鳴く虫たちの声に負けつつあります。
 日中の猛暑がまた、蝉たちを励まし復活させるのでしょうか。

「暗ぐらと山の裾野に広がれる樹海の底より蝉の鳴き出づ」(白鳥光代)

 樹海の暗がりにむらむらと湧き出した蝉たちは、盛大にいっときのお祭を行い、地に斃れます。
 7年間も守られた静寂な地中から起き出した彼らの祝祭は一週間。
 彼らが生じ、滅するのは、永遠の仏界からこの世に現れた私たちが、数十年の饗宴と修行を終えて故郷へ還ってゆくのと同じです。 

「点滴はひたりひたりと落ちながらわれの抱きゐる海を満たしぬ」(白鳥光代)

 太古の昔、地上に生じた一滴の水を共有し、私たちは生きています。
 一人一人が異なった顔で、異なった身体に拠っていますが、水は共有されています。
 ならば、魂もどこかでつながっていて何の不思議もないはずです。
 死んだ肉体が骨となり分解され、限りなく分子の姿へ近づくように、死ねば魂もまた、広大なみ仏の世界へ溶解してゆきます。
 そして、因縁の風によって起こる波紋が生む波頭として〈個〉が生じるのではないでしょうか。

「訳もなく哀しみ覚え夜半に聞くいにしへ人の涙か雨は」

 私たちは〈個〉であるがゆえに哀しく、哀しみこそが人間の元感情であり、哀しみへの共感こそが〈個〉を超えさせ、苦を抜く道ではないかと考えています。
 私たちは、謳歌の状態を幸福と感じますが、何を謳歌しようと、所詮は線香花火に過ぎません。

 大企業がより儲かり、富裕層がより富裕になれば、国民全体がより豊かになるという理論によって日本やアメリカや中国の政治経済は動かされていますが、それが成り立つためには、決して欠かせない前提条件があります。
 富裕になった人が「おかげさま」や「おたがいさま」の心を忘れず、儲けさせてくれた社会へ富を還元することです。
 少なくとも半世紀前の日本では、この条件がかなり満たされていたので、富裕層は今ほど堕落せず、格差も今ほど酷くはありませんでした。
 自分の利益しか考えずに貪る人へ、庶民は眼を光らせていたのです。
「あいつは所詮、我利我利亡者(ガリガリモウジャ)だ」
 企業も人も、我利我利亡者であるとされることは、耐えきれないほどの恥でした。
 現実はどうでしょうか?
 富を得た企業も人も、無税の空間を求め、富を抱えて地球上をウロウロし始めました。
「自分が得た富を少しも手放さず、増やした富は自分だけが抱えておきたい」
 集められた富がこのような我欲によって世間から隔離されれば、どうして一般大衆が豊かになれましょうか。
 格差が拡大するのはあまりに当然な社会構造であり、ルールなきグローバル社会は人倫を破壊し続けています。
 私たちが我欲にまみれている限り、社会は、より、酷薄になるしかありません。

 今の人も、「いにしへ人」も、等しく哀しみを抱えており、私たちが雨音を懐かしく感じるのは、故郷を知っているからではないでしょうか?
 お釈迦様は、人が共に安寧に暮らしてゆくための方法として『四摂法(シショウボウ)』を説かれました。

1 布施(フセ)…………施し合い、分かち合うこと
2 愛語(アイゴ)………思いやりのある言葉をかけ合うこと
3 利行(リギョウ)……他人や社会の利となる行為を行うこと
4 同事(ドウジ)………人は皆、同じ仲間であるとして平等に接すること

 私たちはこうしたみ仏の世界からこの世へやってきた旅人です。
 四摂法からあまりに堂々と遠ざかりつつあるこの世で暮らしていれば、故郷が懐かしくなり、哀しみを覚えるのは当然です。
 互いに〈個〉であることを認め合い、〈個〉であるが故の哀しみを共有し合い、いつの日か、共に脱してゆきたいものです。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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