コラム

 公開日: 2013-08-24  最終更新日: 2014-06-04

藤圭子の自死に哭く ─居直ってくれた同士の最期─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 藤圭子が逝った。
 ──それも自死……。
 これまで、誰にも言ったことはないが、藤圭子はかつて、私の心中で共に居直ってくれる唯一の相手だった。
 一度も会うことのなかった同士へささやかな思いを述べ、手向けとしたい。

 夢破れ、東京を去らねばならず、〈自分への負い目〉から逃れられない私は、仙台で必死にはたらき、よく遊びもした。
 根底にはいつも、居直りがあった。
 心の根無し草になった者には、居直りが最も生きる力を与えてくれる場合がある。
 
 ただし、こうした居直りは、「居直り強盗」のそれとは違う。
 態度に表したなら負け犬となり、おしまいだ。
 愚連隊になるなどの粗暴に陥らず、斜に構えず、ニヒルを気どらず、ただ、人知れず居直り、表面的には淡々と社会的役割を果たすタイプの居直りがある。
 
 藤圭子は、見事に居直って見せてくれた。
 世間は「怨歌」や「援歌」や「演歌」などともてはやしたが、私の眼に映っていたのは、居直っているとは言わずに堂々と居直りの歌を唄う希有の歌手としての藤圭子だった。
 スポットライトを浴びると、大きな黒い瞳も、若く紅い唇も、艶やかな髪も輝いた。
 しかし、光は他の歌手たちとは無縁な次元から発し、まるで、うら若い女性の肉体をまとった幽鬼がまったく場違いなことろで妖しい道化を演じているようだった。

 私は、飲み屋で興に乗ると、ときおり、藤圭子の歌を唄った。
 昭和47年(1972年)にヒットした『京都から博多まで』は「今日も逢えずに泣く女」で終わる。
 こうしたモチーフの演歌は普通、逢えない哀しみや淋しさなどを表現している。
 事実、歌詞はそうであり、聴く人も唄う人も、哀しみや淋しさを演歌歌手と共有したことだろう。
 しかし、藤圭子が唄うこの歌は違った。
 人々はその特徴をよく「怨」の文字で説明したが、私にはピンとこなかった。
 理由は明白である。
 藤圭子は、「怨」を表現するにしてはあまりにも堂々としていた。
 心中にある最大のものが「怨」だったとは思えない。
 あったのは、居直りに違いない。
 
 藤圭子が生前、そのことを言ったかどうかは知らない。
 しかし、約40年前からしばらく、私が藤圭子と居直りを共有しつつ生きてきたのは、私にとっての真実である。
 特にどの歌に救われたという実感はないが、たまにラジオから流れたり、酒場で耳にしたりした歌は、いつしか私の居直りを強化してくれたという実感がある。
 出家した私からもう、居直りは去った。
 藤圭子の歌を唄うこともない。
 藤圭子も、いつまで居直りの歌を唄っていたのか、詳しいことは知らない。

 訃報は、私には〈かつての同士〉の死として、もたらされた。
 心から冥福を祈りたい。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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